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第一線で活躍中の翻訳者にインタビュー |
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翻訳者 森口理恵さん
Translator: Rie Moriguchi
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「出産の2日前まで仕事をしていて、産後も1週間もすると机に向かっていました。元々 子どもができてからも働くつもりでいましたし、翻訳の仕事を選んだときも、『出産 しても家でできる』という気持ちがありました」
フリーランスの翻訳者であり、医薬翻訳についての本を著したり翻訳学校で教えたりと、多彩な活動を展開している森口理恵さん。家庭では、中学生の子どもを持つ一児の母でもある。翻訳者として独立するまでの道のりや、育児と仕事の両立のさせ方などについてうかがった。 |
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| Q. |
翻訳の仕事はどのように始めたのですか? |
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| A. |
薬科大学を出て、香料を作る会社の研究室に勤めていたのですが、非常に強い原液が体調に合わず、3年ほどで転職を考えるようになりました。医薬の知識を生かした仕事を探していたところ、雑誌などで「医薬翻訳」という仕事があることを知ったんです。大学では英語で論文を読んでいたりしたので、「私にもできるのではないか」と感じました。
電話帳で医薬翻訳の翻訳会社を見つけて問い合わせをしたところ、「ぜひ来てほしい。人員補充の準備ができたら連絡する」と言われ、ひとまず医薬関係のデータ検索をする会社で働いて、機会を待っていたんです。半年ほどして連絡があり、その翻訳会社に社内翻訳者として勤務するようになりました。
英語で論文を読んでいたと言っても、翻訳の経験があったわけではなかったので、最初は上司にすごく直されました。例えば受動態の英文をそのまま受動態で訳すと、「それでは日本語になっていない」と言われたりしたものです。そういった経験を重ねているうちに、次第に直しが少なくなり、やがて一人で訳文を仕上げられるようになりました。
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| Q. |
医薬翻訳とは、どういう仕事なのですか? |
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| A. |
最も多いのは、製薬会社からの仕事です。例えば、日本で薬を発売するには厚生労働省に申請しないといけないのですが、外資系の製薬会社は、元の資料を日本語に直して提出しなければなりません。発売後も副作用の症例などを報告する必要があるので、海外から来た報告書を和訳します。逆に、日本の製薬会社が海外で薬を発売するために書類の英訳を必要とすることもあります
医療器具の会社の仕事では、パンフレットや説明書の翻訳を行います。また、研究者たちが書いている医学論文を翻訳することもあります。いずれにしても、非常に専門性の高い仕事ですから、大学で医学や薬学などの生物系の勉強をした人か、それに関連した仕事に就いて専門的な勉強をしたことのある人でなければ、書いてあることの意味を真に理解するのは難しいと思います。ただ、文系出身の人でも、自分に理解できる範囲で仕事をすることは可能です。特に、理系では英語が苦手な人が多いので、医薬についてきちんと勉強する努力をすれば、文系の人にも大いにチャンスはありますね。
医薬の翻訳は元々できる人が少なく、その中で優秀な人は本当に限られているので、この分野で認められれば、ひっきりなしに仕事が来ます。翻訳料も、ほかの分野に比べて高いと言えるかもしれません。
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| Q. |
どのようにフリーランスになったのですか? |
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| A. |
まず、結婚して妊娠したのを機に、会社の仕事を家でやるようになったんです。実は、出産の2日前まで仕事をしていて、産後も1週間もすると机に向かっていました。元々子どもができてからも働くつもりでいましたし、翻訳の仕事を選んだときも、「出産しても家でできる」という気持ちがありました。
出産後は退社してフリーになり、自分で一から仕事を探しました。フリーの翻訳者はたいてい翻訳会社から仕事を受けるのですが、医薬翻訳を扱っている翻訳会社を1件1件あいさつして回りました。同時に社団法人日本翻訳連盟に加入して、「JTF〈ほんやく検定〉」(*)を受けました。これは翻訳能力を測るためのテストで、その結果を書くことが、売り込みにも役立ちました。こういった努力のおかげか、幸いにして、独立して間もなく継続して仕事がくるようになったんです。
製薬会社など依頼主のことは「クライアント」と言いますが、私は人の紹介でクライアントとの直接取引もするようになり、今では他の翻訳者の仕事をまとめたり、納品前に英文チェックに出したりといった、エージェント的な役割を果たすこともあります。
(*JTF〈ほんやく検定〉:社団法人日本翻訳連盟が実施。「基礎レベル」「実用レベル」があり、「実用レベル」では特定の分野の実力を測ることができる。)
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| Q. |
仕事で大変なのはどんなところですか? |
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| A. |
医薬の英語は、一見平易な語でも実は特殊な意味だったり、この分野独特の言い回しがあったりして、英和辞典や医学辞典を見ても意味がわからなかったりします。そういうときは、インターネットで該当する語を調べ、どういった場面でどのような使われ方をしているかということから、訳語を判断するんです。納期までの限られた時間の中でたくさんのことを調べなければならないので大変ですが、これを楽しみながらできるようでなければ、プロとしては務まらないかもしれません。
また、翻訳の原文はプロのライターが書いているものではないので、意味が伝わりにくいことがあります。文字通り訳しても意味が通らない場合、原文が伝えようとしている情報をくみ取ってわかりやすく翻訳するのですが、こういったやり方が喜ばれることもあれば、「文字通り訳していないから間違っている」と言われてしまうこともあり、難しいですね。
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| Q. |
家での仕事の仕方について教えてください。 |
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| A. |
会社ではタイムカードがありますが、個人だと自分で仕事時間を管理しなければなりません。時間を決めて仕事をするように気をつけてはいるのですが、夜になって急に「明日の朝までにお願いしたい」という仕事が入ってきたりして、なかなか思うようにはいきませんね。
娘はもう14歳になるので手はかかりませんが、保育園に預けて働いていたころは大変でした。育児と仕事を両立させるには、やはり夫の協力が欠かせません。風邪を引いて急に医者に連れて行かなければならなくなったとき、夫が連れて行ってくれたこともありました。娘のほうは、私がずっと家で働いているのを見てきましたから、「お母さんにはやらなければならない仕事があるんだ」ということがわかっているようです。最近は英語に興味が出てきたようですけれど、やはり英語だけではなく、プラスアルファの専門知識を身につけてほしいと思っています
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| Q. |
今後の目標について教えてください。 |
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| A. |
以前に翻訳学校の講師をしていたことがあり、今はDHCなどで、通信講座の指導を手がけています。翻訳雑誌に仕事探しの話を書いたのがきっかけで、『医薬の英語―業界用語の意味と使い方』という本を書いたこともあります。通信講座用の解説として毎月大量のコメントを書いているのですが、幸い受講生の方々に好評なようなので、いつかそれをまとめて本にできたらいいですね。 |
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森口理恵(もりぐち りえ)
1963年生まれ。京都薬科大学薬学部薬学科卒業。香料会社に勤務したのち、医薬系の翻訳会社の社内翻訳者に。フリーランスの在宅翻訳者として独立、さらに翻訳業務全般を行うR&Aメディカルを設立。DHC通信講座「英文ライティング日英メディカルコース」などのテキスト執筆。著書に『医薬の英語―業界用語の意味と使い方』(NOVA)。
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『医薬の英語―業界用語の意味と使い方』
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森口理恵 著(ノヴァ/1890円)
医薬翻訳を目指す人や、製薬業界への転職を考えている人、または医薬関連記事を英語で読みたい人のための本。「医薬業界で使われる基礎用語を示し、解説した本です。辞書にない表現を多く盛り込みました」と、森口さん。医薬の世界に関心があるけれど、専門書を見てもどうも理解できないという人向けの入門書でもある。
→『医薬の英語―業界用語の意味と使い方』を買う
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『ヒューマン・ボディー「からだと病気」詳細図鑑』
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小橋隆一郎 監訳、森口理恵 訳(主婦の友社/3570円)
細胞の構成単位から骨格に至る人体の構造をイラストで図解、体の仕組みや発病のメカニズムをわかりやすく説明している。医薬を学ぶ人のハンドブックになると同時に、人体の世界に興味のある人の読み物にもなる。
→『ヒューマン・ボディ―「からだと病気」詳細図鑑』を買う
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『症状別・病気別 これは効く!ビタミン・ミネラル事典―くすり以上に効果を発揮す
“ビタミン・ミネラル”のすべて』
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取材協力/社団法人日本翻訳連盟
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