留学


Studying Music in London
音楽大好き 充実のロンドン留学

UK Report
from Tomoko Mase in London

2001年3月まで掲載していたダイアリスト長谷川さんの友人であるタミーこと間瀬さんの、パワフルかつ洞察深いダイアリー。現在、音楽プロデューサーを目指してロンドン・カレッジ オブ プリンティングに留学中。


ソールスベリーを往く(後編) 〜大聖堂の小さな街〜


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大聖堂外壁の彫刻。当時最高の技術と芸術が注ぎ込まれている

ストーンヘンジ行きを断念し、ひとりソールスベリーを旅することになった私(詳しくは前編を参照)は、まず、高い塔が印象的な Salisbury Cathedral(ソールスベリー大聖堂)に向かった。

この大聖堂は、1220年から1258年にかけて建立された“イングランド初期ゴシック様式”の建物で、ロンドンの有名な Westminster Abbey(ウェストミンスター寺院)同様、上から眺めると十字架の形をしている。13世紀半ばに回廊、チャプターハウス(会議場)が増築され、さらに14世紀にはいって、聖堂が誇る高塔、尖塔が加えられた。これにより、この尖塔の高さはイングランド最高の123メートルとなった。外壁にはさまざまな聖人たちの彫刻が施され、荘厳な中にも優美で洗練された趣がある。街並みを抜けて視界が開けた瞬間、威厳ある大聖堂がそびえ立つ様は、見るものを圧倒する。宗教心のない私ではあるが、ソールスベリー大聖堂が建立より750年間、人々の強い信仰を集めてきたシンボルというのには頷けた。

中に入ってまず目を引いたのが、中世の大時計。現在も動いている時計としては最古の1386年頃の製作。歯車が“ガタン、ガタン”と音を立てるので、秒を刻んでいるのはわかるのだが、どのようにして現在の時刻そのものを知るのかは、ちょっとわからなかった。素晴らしかったのは、トリニティー・チャペルのステンドグラス、ガブリエル・ロアー作「良心の囚人」(1980)。深いブルーを基調に入り込んだ図形が、抽象画のごとく宗教的・歴史的出来事を表す。外が曇天であったため、さらに青が深まり、人々の苦悩そして神の憐憫を強調するかのようであった。

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ソールスベリー大聖堂。イングランドでいちばん高い尖塔で有名

そして、チャプターハウス内の壁面彫刻。旧約聖書の創世記と出エジプト記からの場面 を描いており、アダムとイブ、ノアの箱船、バベルの塔などの物語が絵物語のように綴られている。ひとつひとつの描写 が素晴らしく、叙情的でもあり、ヨーロッパ屈指の例といえるだろう。さらに、ここにはマグナ・カルタ(大憲章)の現存する原本4冊の内の1冊が展示されている。

ソールスベリーの街の中心、マーケット・スクエアでは週末にマーケットが開かれる。新鮮な魚介類、野菜を並べるストール(屋台)から、電化製品、洋服、アクセサリーを売るストールまで、実にさまざまである。値段もロンドンのマーケットより、1割方安そうである。雨が降り始めていたが、観光客や郊外からの買い物客で賑わっていた。私もあちこち冷やかしながらそぞろ歩いていると、マーケット・スクエアに面 した建物、ギルドホールからファンファーレが聞こえてきた。どうやら、結婚式らしい。ウェディング姿の若い女性と、その父親らしき男性が腕を組んで入場するところであった。「おめでとう!」近くを通 りかかった女性からの祝福の言葉に、新婦の女性は振り向いて、幸せそうに微笑んだ。

3月末というのに、相変わらず寒い。それにおなかもすいてきた。久しぶりにパブでランチでも、と街の中心から少し離れた静かなパブに入った。ロンドンと違って、小さな田舎町ではアジア人女性がひとりでパブに来るのは珍しいのかもしれない。注文したフィッシュ・アンド・チップスを待つ間、飲んでいる客と視線が合うことが度々あった。そういえば、明らかに観光客とわかる外国人はともかく、アングロサクソン系以外の住民をほとんど見ない。コスモポリタンなロンドンでは、自分が外国人であるということを忘れがちであったが、ここに来て「そうか、ここでは私は外国人なんだ」と実感した。だからといって、決して居心地が悪いわけではなかった。ダーツに興じる中年夫婦や、ゲーム機に手持ちのコインをつぎ込む青年たちと同様、私も新聞を読みながら、ゆっくりと流れる週末の午後のひとときを楽しむ。

帰りの電車の窓から暮れゆくイギリスの田園風景を眺めていたら、いつの間にか眠ってしまったらしい。「ロンドン・ウォータールー、終点!」という放送で目が覚めた。いつもの喧噪と人混み。なんだか私だけの秘密の出来事を経験したみたいで、ちょっぴり幸せになった。

※ Salisbury・・・ロンドン・ウォータールー駅より国鉄利用で約1時間30分。運賃は片道23ポンド 。

●Language Box●
大聖堂:Cathedral
ゴシック様式の:Gothic
ウェストミンスター寺院:Westminster Abbey
彫刻:carving/sculpture
抽象画:abstract painting



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from Tomoko Mase
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ナマ情報に触れられると大好評のワールド・ダイアリー。読者の方の声を聞いて、より掘り下げた記事をお送りするため、みなさんからの感想を募集中です。「今回のダイアリーのこれがとっても面 白かった」とか「イギリスのこんなこと、知りたい」といった質問も含めて、どしどしお送り下さい。


編集 荻村


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