留学


Studying Music in London
音楽大好き 充実のロンドン留学

UK Report
from Tomoko Mase in London

2001年3月まで掲載していたダイアリスト長谷川さんの友人であるタミーこと間瀬さんの、パワフルかつ洞察深いダイアリー。現在、音楽プロデューサーを目指してロンドン・カレッジ オブ プリンティングに留学中。


がんばれ、ジャガイモ君! 緊張のカレッジ初登校


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サウンド・ラボのクラスメートたち。舌だしているのが Lee、 眼鏡かけているのが Conor

ロンドン・カレッジ オブ プリンティング登校初日。
私のコースは先週
お話しした通 り、「Certificate in Sound Design and Music Technology」。これは、アートとしてのサウンドや映像、そして、メディアに対応する音楽・サウンドを、デジタル機器により創造することを目的としたコース。

教室のドアを開くと、全身に緊張が走った。クラスメート全員がネイティブのイギリス人。ヨーロッパからの留学生らしき姿すら見あたらない。とりあえず「Hello.」と挨拶して、近くの席に着く。イギリス人同士であっても、やはりはじめは緊張するものなのか、私たちは段ボール箱に詰め込まれたジャガイモみたいに、もそもそと沈黙を保っていた。

多国籍生徒がひしめく語学学校経験しかなかった私にとって、多少は想像していたにしろ、外国人が私ひとりという状況には正直、戸惑った。教授の言ったことを聞き逃すまい、と気を張ってはいるのだが、クラスメートたちのディスカッションが右から左から、矢のように飛び交い始めると、すうっと気が遠のいていく感じがした。そして、毎週月曜終日のレクチャーが終わると、どっと疲れてベッドに倒れ込んでしまう。

ある日、一緒にランチをとっていた Ruth が「私にだって難しい内容なのに、理解できているのはすごいわね。」と言った。レコーディングソフトCubase(注1)は日本にいたときから使っていたし、バンドでレコーディングしたこともあるから、録音機材についてちょっとした知識はある。授業でわからないことがあるだろうと思って、レコーディングの本も英文で読んでおいた。だから、教授の説明がすべて理解できなくても、キーになる言葉さえ拾えれば、大体どんなことをやっているのかは想像できた。「そっか、イギリス人でも全部を全部、理解してるわけじゃないんだ」と思ったら、少し気が楽になった。

昨年ヘイワード・ギャラリーで開催された“Sonic Boom”(注2)というサウンドアート・エキジビションのキューレーター、David Toop が先日、講師として招かれた。David 自身もアーティストであり、彼のアートワークを順々に聞いていく、という内容であったのだが、コーヒーブレイクのとき、カフェに集まった生徒たち曰く、
「あのエキジビションは最悪だった」
「David のレクチャーは全然、魅力的じゃない」。
さらに、いちばん前の席に座っていた Conor が、視聴の間中、居眠りをしてガクン、ガクン、とイスからずり落ちそうになっているのを見て、後ろにいた Emma と Gill、私の3人は笑いをこらえるのに必死であった。講師だって、完璧ではないのだ!

矢継ぎ早に課題が課せられるようになってきた、ここ数週間。クラスメートたちも、お互いの課題の仕上がり具合が気になってきたようである。顔を見合わせるたびに「もう、終わった?」があいさつ代わり。2つの課題を既に終わらせた私は、サウンド・ラボでサンプリング(注3)にとりかかっていた。後ろにいた Lee が「お、タミーはもうサンプリングやってるよ!」と驚く。隣でシーケンス(注4)に悪戦苦闘していた Lan も「君はテクノロジーを使いこなしてるみたいだねえ」と感心している。そうこうするうち彼らは
「タミー、DATテープのフォーマットはどうやるのか知ってる?」
「タミー、カセットにこの音を落としたいんだけど」
などと聞いてくるようになった。・・・もう、ジャガイモは黙ってなんかいられない!

「その音、すっごいcoolだね! どうやってレコーディングしたの?」
Higher National Diploma コースの1年生らしき男の子が、ソウル・ファンクみたいな音を出していたので聞いてみる。
「ドラムパターンはMIDIで組んでさあ。昨日、ヴォーカルを取りにクラブに行ったんだけど、ノイズがひどくてだめだった」
そんなラボでの会話が楽しい。面倒見のよい technician の Ciaran も
「日本語の数の数え方って、イチ・ニ・サン・シ・ロク・キュ・・・?」
と気さくに話しかけてくる。唯一の問題は、彼が一向に私の名前を正確に覚えてくれないこと。再三「T・O・M・O・K・O、です」と訂正しているにもかかわらず、掲示板の張り紙は相変わらず“Tomuku Mase”になっている。


・(注1)Cubase:音楽やサウンドをコンピュータ上で構築するためのソフトウェア(sequence soft)。
・(注2)Sonic Boom:昨年4月〜6月に開催されたエキジビション。“サウンド・アート”をテーマにした初の大きな展覧会ということで評判になった。日本人アーティストの Mariko Mori、Ryoji Ikeda も作品を出展。
・(注3)サンプリング(sampling):CDやレコードなど、既に録音されたものから一部を抜粋し、新しい作品に取り入れる技法。
・(注4)シーケンス(sequencing):コンピュータ上で音楽やサウンドを構築すること。デジタル・ミュージックの制作方法として最も一般 的。



●Language Box●
緊張:crunch/intension
多国籍の:transnational/multinational
居眠り:drowse/snooze
悪戦苦闘する:fight desperately/struggle hard
矢継ぎ早に:in quick succession


image UK Report
from Tomoko Mase in London
間瀬知子 
元・某有名ダンス系レコード会社の営業ウーマン兼シンガー。現在は、London College of Printing で Sound and Music Technology のコーススタートに備えて準備中。将来の夢は「コムロになる」。音の世界で活躍することを目指す27歳独身。

編集 萩村


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