留学


社会人留学 ロンドンの第一歩
第八回:「ミラノ・サローネ」と己を知る旅

UK Report
from Naoko Hasegawa in London

編集者人生を一時棚に上げ、視野と経験を広げるために大学院留学を決行するも、予想外のハプニングに右往左往。

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さて、先週「たーいへん」と書いたわりには、実は余裕をかまして、ミラノに行ってしまった。そんなことしている場合じゃないのに、無理矢理チケットをとって行く決意をしたのは「ミラノ・サローネ」という、年に一度のヨーロッパ最大級の家具の展示会があったから。
「イタリアの家具」といえば、皆さんも「本場」という印象をお持ちのことと思うが、イタリアには、家具づくりを支える職人の存在、そして、才能のある建築家が家具デザインの分野で才能を発揮する(別 の言い方をすると、家具やプロダクトデザインの分野でしか才能を発揮できなかった)システムがあった。それ故に、戦後、多くの偉大なデザイナーが、素晴らしい仕事をミラノから発信し続けた。で、そういったデザイナーといっしょに成長してきた(もしくはもっと古い伝統を持つ)メーカーやショップもあり、その発表会の場が、この「ミラノ・サローネ」である。

実際の商取引のために世界中からやってくるバイヤーと出品業者を中心に、出品したデザイナー、プロトタイプを発表してメジャーデビュー(?)を目指す若手デザイナー、その動向をチェックしにくるベテランデザイナー、報道関係者、コピー商品のアイデアを盗みにくる小売店等々ごちゃまぜになって、ヨーロッパ中いや世界中から、噂によると、一週間の期間中、17万人の集客だとか。

ミラノにはあまりたくさんホテルがないので、この期間、ホテルはどこも満室だ。私に 行く決意ができたのも、ミラノ在住の若手日本人デザイナーのご厚意により、彼らの自宅に泊めて貰うことができたためだった。

「フィエラ」という幕張メッセを2倍くらいにしたような大きな会場に、3日かかっても見つくせない展示ブースが詰まっており、さらにミラノの市中あちらこちらのギャラリーやショップでも展示会が行われている。近年では面 白いデザイナーやショップのしかけは市中のギャラリーで起きていたりするので、私のような観光客は、地図を片手に、ミラノ市内の小道&大通 りを次々と抜けて、毎日「展示会場・大・ハシゴ」大会を繰り広げるのである。

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我がUKからのグループ「Mo-billy」はBuckinghamshire Chilterns Univ. Collegeの卒業生で結成。これは「Vac-Rack」と名付けられたマガジンラック。デザインはKarl Salter君 拡大(51K)

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ミラノ在住の日本人若手4人組によるグループ「nuga」の展示会。 拡大(18K)

実はこれまでデザイン誌に関わりながら、ミラノでじかに、このイベントを見たことがなかった。で、ミラノというところも含め、もっとゆっくり滞在したかったのだが、そういうわけで、3日丸々歩く日程をとるに留まったのだが、結果 として、「行って良かったわ」と心の底から思っている。

イタリアの歴史に詳しいわけじゃないのだが、「ロンドンとはまるで違うものの考え方でなりたっているのだな、この街は」というのが、よくわかった。もちろん、このイベントのことは、関係者やメディアを通 じて、毎年動向を聞いたりしていたのだが、「背景が違う」という非常に、ベーシックかつ重要な点は、そういう情報にのってこない。

それもそのハズ、「違う」と感じるポイントは、建物の高さと道路の幅のバランスだったり、リストランテのテーブルリネンの色だったり、高級なキッチンメーカーの展示会を見に来てるオジサンだとか、女の子の立ち居振る舞いとか、そういうとるに(もしくは書くに)足らない、視覚情報やおしゃべり(議論ともいう)の集積から形成されるからだ。歩きすぎでクタクタになって、始めてわかることって、ある。

抽象的だけれど、ミラノに行ってみて、少しロンドンというところが見えてきたような気がする。東京とロンドンってずいぶん違うところだと思ったけれど、ミラノとの違いに比べれば、似たようなところかも。すごい乱暴な言い方だけど……と、いうようなことを感じた3日間だった。

ミラノまではフライト時間1時間30分、5日前にインターネットで往復航空券をとって150ポンド(3万円弱)。今回の旅行で、私が「ヨーロッパの英語圏」を選択した理由をあらためて思い出した。雑誌やメディアで見た情報と、実際に見ることの質的・量 的な差を思い知らされた。お金はなくても、ヨーロッパにいる間に、自分の足で歩き、自分の目で見ながら、「己を知る」ってことをやろうと決意した旅かなぁ。めっちゃ主観的な日記ですいません。

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from Naoko Hasegawa in London
長谷川直子 
60's東京生まれ。デザイン誌の編集者として約9年の激務を経て、99年12月に本格的に渡英。現在London College of Printingで「Enterprise and Management for Creative Arts」(デザインマネージメント)MAコースを履修中。


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