海外で暮らす


Ireland Diary
アイルランド・ダイアリー

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Ireland Diary
from Kyoko Odamura

「一度しかない 人生、これでいいのか」と一念発起。今ではアイルランドで企業勤務とフリージャーナリストの2足のわらじを履き活躍中。


リトル・アラビア

ダブリンの中心から車で南に下る事15分、Clonskeaghという所にモスクがある。晴れた日には、モスク全体がパールイエローに輝きわたり、まるで昔、絵本で見たアラビアン・ナイトのようだ。
この一角は、リトル・アラビア。ベールを被った婦人や、たっぷりとした髯をたくわえた男性達がアラビア語を話しながら行き来している。

私はたまに、ふらりとこのモスクを訪れる。モスクの食料品店には珍しい物があるし、お米やスパイスが安く買えるからだ。そして何よりも嬉しいのは、ここの食堂の安さと美味しさである。
牛肉や羊肉を多種のスパイスでじっくり煮込んだカレーは、その極上の味に舌がとろけるようだ。カウンターの奥では、1メートル近くある鉄軸に巻かれ、肉汁を垂らしながらグルグル回っているカバブが、空腹をひとねじりするような匂いを出している。ガラスケースに目を移すと、アーモンドをハニーでからめたお菓子を始め、一風 変わった中東のデザートがどっさりある。
一言ケチをつけるとすれば、何の前触れも無く、『お祈りの為、15分間、閉店』という札が出され、私達は外に締め出された挙句、15分のはずのお祈りが、延々と続く事だろうか。そっと覗くと、男性たちはおしゃべりに熱中し、お祈りしている様子は全くないのだが。

モスクという性質上、ここを訪れる人々の殆どはイスラム教徒であるが、なかには私のような、食事や買い物目的の部外者も顔を見せる。お祈り中でなければ、礼拝堂の見物もできる。
一度、私も礼拝堂に入ったことがある。手を洗い、靴を脱いで、男女別々の入り口から中に入ると、きらきら輝く巨大なシャンデリアに灯がともされ、前の祭壇には、豪華な装丁のコーランが置いてあった。男性は一階、女性は二階で祈るそうだ。
この美しいモスクの建設資金は全て、サウジアラビアの富豪からの献金によるものである。
ダブリンではこの5年間の間に外国人が増え、イスラム教徒も多く見るようになった。一般的にアイルランド人は、外国人には好意的で、露骨な人種差別はしないものの、イスラム教徒に対しては、まだまだ壁が厚いようだ。モスクに行くと、まれに食事や買い物をしているアイルランド人を見かけることもあるが、彼らにとってイスラム教徒は、アジア人や黒人以上に“ガイジン”に映るらしい。

という訳で、これを書いているうちにモスク食堂のカレーが懐かしくなった私は、久しぶりにモスクまで車を飛ばしてみた。するとレストランの入り口に、大きな張り紙がしてある。
『レストラン改装の為、しばらく休業』
いつ営業再開するのかには触れていない。どうやらアラーの思し召し次第のようだ。
まあ、いいか。次に店の前を通るときには、美味しいカレーの香りが漂っていることを祈りつつ、店を後にした。

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Ireland Report
From Kyoko Odamura
織田村恭子
さんのプロフィール

経済学部卒。日本のソフトウェア会社でプログラマー、
営業企画として勤務。1991年からはダブリンの日系企業にて勤務。 同時にフリーランスのフォトジャーナリスとして日本の出版社やダブリンの英字新聞へ寄稿中。
 



 

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