Ireland Diary
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友人物語 ある土曜日の午後、インド人の知り合いから電話がかかってきた。日曜の夜、家でディナーパーティをするので、ぜひいらっしゃいという。半年以上、会っていなかった知り合いは、普段より声がはずんでいた。「お誘いありがとう、ところで何か良いニュースはないの」 私はそう聞いてみた。実を言うと、私は彼についてのある噂を耳にしていたのである。 すると彼は、ごほんと咳払いをした後、待っていましたとばかりにこう答えた。 「うん、実はね、ついに年貢を納める事にしたのさ」 ほう、やはり噂は本当だったか。聞けば相手は、半年前にインターネットで知り 合った、インド人女性だと言う。これも噂通りだ。ダブリンは狭い。恐い話だが、どこかで、誰かが、何かを知っている。 翌日、 パーティの席で、インドの伝統的な服を着た彼は、いつも以上に饒舌だった。 「知り合って半年だけど、最高に気が合ってね。彼女は今、新生活に向けて、自分の母親から家庭料理の特訓を受けている最中だよ。インターネットはすばらしい。恋愛の形は変わったんだよ」 その話に、皆ふんふんとうなずいた。その一方で、インド人、イタリア人、アイルランド人、日本人と色とりどりそろった我々、招待客たちは皆、内心驚いているのがわ かる。 が、何と言っても、めでたい話である。イスラム教徒である彼は、お酒をたしなまないため、お酒抜きのパーティはちょっと寂しい気もしたが、ホストの意向は尊重しなければならない。いずれにせよ、テーブルに並んだカレー料理は、極上の味を引き出していた。私たちはそのごちそうを、ミネラルウォーターやコーラなどのソフトドリンクと一緒に堪能する間、話は様々な方向に盛り上がっていった。 満腹したところで部屋を見回すと、眼に入ったのが大きなフォトフレームに入った写真だ。どうやらこれが未来の花嫁に違いない。よく見れば、同じ写真が部屋のあちこちに飾ってある。 写真の中では、伝統的なインドの民族衣装を着た中年の女性がうつむきかげんに微笑んでおり、全体が光のカーテンをかけたように、うっすらとぼかしてあった。エキゾチックに見えるこの技法が、インドでは好まれているのだろう。 インド人の知り合いは、ダブリンでTVプロデユーサーをしている。海外生活も25年以上の彼は、一見遊び人風に見え、女性の知り合いも多そうだ。それを考えると、プレイボーイ風の彼が、インターネットで結婚相手を探したのは、やはり不思議な感じがした。 しかし、かつて彼がこう言っていた事がある。 「我々、イスラム教徒はコーランに忠実だ。もしコーランに1本足で歩け、と書いてあったら躊躇なく、そうするよ」 彼は敬謙なイスラム教徒であるため、ひょっとしたら最終的に心を開けるのは、同じ文化背景や宗教観を持つインド人女性だと結論を下したのかもしれな。あるいは年齢的な意味から、楽しみを優先させる人生に区切りをつけて、これからは落ち着いた生活に入ろうと考えたのかもしれない、などと考えを巡らせているうちに、 招待客の誰かがワイン持参で現われた。そして、それをきっかけに私たちは飲み物をアルコールに切り替えたのである。 ポンっとワインがあけられると、少し和らいだ雰囲気が生まれ、人々の間にリラックスした空気が流れ始めた。やはりパーティにはちょっぴりでもお酒があったほうがいいかなと思った。
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ある土曜日の午後、インド人の知り合いから電話がかかってきた。日曜の夜、家でディナーパーティをするので、ぜひいらっしゃいという。半年以上、会っていなかった知り合いは、普段より声がはずんでいた。








