海外で暮らす


Ireland Diary
アイルランド・ダイアリー

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Ireland Diary
from Kyoko Odamura

「一度しかない 人生、これでいいのか」と一念発起。今ではアイルランドで企業勤務とフリージャーナリストの2足のわらじを履き活躍中。

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私の好きな男

くわえタバコのロバート・ギャバ土曜日の朝、久しぶりにテンプルバーに出かけた。ここにはフォト・ギャラリーがあり、多種多様なカメラマンの作品を展示している。またこのギャラリーはプロやアマチュアカメラマンに出会える場所でもある。

人生、何がきっかけで方向が変わるかわからない。私の場合、写真を始めたきっかけは、随分昔に、何気なく開いた写真集にあった一枚の写真だった。

写真家の名前はロバート・キャパ。その写真は"倒れ行く兵士"というようなタイトルだったと思う。そして、それは、キャパが撮影した数多くの戦争写真の中で、その内容から賛否両論にまみれた話題写真の一枚だった。その写真を見た途端、インパクトの強さに鳥肌がたったのを覚えている。その瞬間、"私も写真を始めよう"と心の中で叫んでいた。

ハンガリー系ユダヤ人でブダペストに生まれたキャパは、苦労しながらも写真で名声を打ち立てていった。若い頃から女たらしだったが、プロポーズまでして断られた恋人、同じ写真家のゲルダの死が、彼の人生観を根底から変えたようだ。加えて報道写真家として自分自身、死と隣り合わせに生きる中、この瞬間を最大限に生きるという人生哲学の実践者になっていった。プレイボーイ、ギャンブラー、ヘビー・ドリンカー、そして明日の命の保証がない有名だが一文無し写真家、これらがキャパのある一面だった。

そんなキャパだが、戦争写真ばかり取っていたわけでもない。町の素顔やや人々のユニークさを引き出すテクニックも一流であった。ちなみに彼が撮影した、昔のブダペストの写真は、今のダブリンを連想させる。

カメラを構えるロバート・ギャバ ダブリンは"黒い水たまり"という意味である。古い町だからか白黒写真がよく似合う町だ。馬車時代の石畳も残っているし、中世の壁がそのまま使われている教会もある。

ダブリンは人工的な華やかさのない街だ。中心街は歩いて簡単に回れる。だが、よく目を開いてみれば、ここには驚くような魅力が、あちこちに隠されているのである。まるで宝捜しのように。

時間があると私は写真を撮りに出かける。そしてその時は常に、キャパの様々な写真が頭の中を去来する。キャパが仕事地のベトナムで、地雷の為に命を落として半世紀近くがたつ。もしキャパがダブリンを訪れていたら、きっと気に入ったのではないだろうか。

そんな事を考えながら、"キャパ"に会えるかもとほのかな期待を抱いて、来週もフォトギャラリーをのぞいてみようと思っている。

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From Kyoko Odamura
織田村恭子
さんのプロフィール

経済学部卒。日本のソフトウェア会社でプログラマー、
営業企画として勤務。1991年からはダブリンの日系企業にて勤務。 同時にフリーランスのフォトジャーナリスとして日本の出版社やダブリンの英字新聞へ寄稿中。

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