Ireland Diary
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| ミステリアスな中華料理店 ハウスメートの美穂さんが、ある日、こう言った。「恭子さん、知ってます? 中国人の友人に聞いたのだけど、街中に破格値で、本格的な中華を食べさせてくれるところがあるんですよ」 私たちは二人とも、美味しいものが大好きだ。そこでお互いに予定のなかった日曜日の午後、さっそくそこに出かけてみることにした。 今やアイルランド人の人口の1%を占めると言われる中国人。彼らはこの国の生活の隅々にまで、インベーダーのように入り込んでいる。彼女の案内でそこに行ってみると、いつの間にできたのやら、ムーア通りにある古い建物の通路に、なんとも形容しがたいチャイニーズアーケードが出来上がっていた。 通路を挟んで左側には海賊版CDレンタルの店、奥には洋品店、右側には100年以上前の中国にあったであろう薄暗く、煤けた感じの食堂が数軒、所狭しと並んでいる。メニューは全て中国語。英語は全く通じず、辺りにいるのは全て中国人である。私たちは漢字を通して、メニューの内容を探ろうとしたが、皆目見当がつかないので、結局、並べてある食べ物を直接、指差して注文するという原始的だが、確実な手段を取ることにした。 ラーメンと餃子やあんまん(と思われる)ものを、取り混ぜて六点ほど注文した。そして一瞬、ガラクタかに見えるカウンターに、腰をおろした。美穂さんがそっと耳打ちする。 「中国人の友人によれば、この店はダブリンで、最も母国の味に近い中国料理を出すそうですよ」 なるほど、楽しみだ。それから待つこと5分、短い叫び声が上がった。どうやら注文したものができたらしい。見ると、小ぶりの茶碗に餃子が山盛りになり、美味しそうな麺がスープの中に浸かっている。そろりそろりと食べ始めた私たちであったが、味はけっこういけた。少なくとも最初の15分は。 ところが空腹が少しおさまってくると、妙な感じが湧き上がったのである。いったいこの肉は何なのだろうか、という素朴な疑問である。気のせいかもしれないが、牛肉や豚肉とは何となく違うように思えて仕方がないのだ。もっと言えば、肉の味がこってり、ぎっとりしすぎていて、食べたあとこなれずに、胃にどっぷりとたまったままとでも言おうか。 ふと見ると美穂さんは、お椀に食べ物が残っているにも関わらず、既に箸を置いて、沈黙している。どうやら彼女も私と同じ疑問を抱いているようだった。もう一言付け加えると、破格値というのは確かに正しかった。多く注文したにも関わらず、料金が6ユーロ(1,000円足らず)だったのである。 食べ物を残したまま、その店を出たが、後で思った。中国では4つ足の動物は、椅子とテーブル以外、全て食卓に上ると言う。彼女の中国人の友人は、その味を知っていて、正直に、母国料理に近いと言ったのではないだろうか。そして、私たちが食べた肉は、日本人が普段、口にしない4つ足動物の肉だったのかもしれないと。 いずれにせよ、その夜、私たちは全く空腹を覚えなかった。そして何故か妙な夢を沢山見た。
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ハウスメートの美穂さんが、ある日、こう言った。
なるほど、楽しみだ。それから待つこと5分、短い叫び声が上がった。どうやら注文したものができたらしい。








