Ireland Diary
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| ハウスシェア物語
ダブリンの物価は非常に高いため、私はアイルランド人一人、日本人一人と計三人 で、ハウスシェアをしている。多くの人が驚くが、この顔ぶれは3年間変わっていない。適度に我が儘をし、適度に気を遣いながら、女三人の共同生活は、かなりうまく行っているのである。ある事を除いては、、、、、。 アイルランド人のメアリーは大のテレビ好き。二週間に一度、田舎に帰省する以外の 週末は、どうかすれば一日中、カウチポテトになっている。さらに言えば、週末のみならず平日も、職場から帰ったとたん、テレビに直行するので、帰宅時間がメアリーより遅い日本人二人には、チャンネル権奪回のチャンスはまずない。あきらめてふっ と溜め息をつく私たちの事をメアリーは、“日本人って、テレビが嫌いなのだわ”と 結論づけているのを私は知っている。 ところで、ドラキュラのモデルは、アイルランド人だった”というジョークがあ る。これはジョークと言うよりも真実に近い。確かに一般的なアイルランド人は、夜に強く朝に弱い。週末、夜ふかしをし、起きてくるのは午後だ。おまけに明るさより 暗さを好むので、家の電気も間接照明を多く使い、家全体が暗いのである。部屋に入 ると、電気の代わりに、たくさんの蝋燭が揺らめいていたりするものだから、ロマン チックを通り越して、魔女集会に一歩踏み込んだような気分になる事もある。 ともかく、ダブリン生まれのアイルランド人であった作者のブラム・ストーカーは、アイルランド人のこんなライフスタイルから、ドラキュラのヒントを得たという。そ して我が家のメアリーも例外ではないのだ。部屋が明るいと頭痛する、と以前、我が 家で使用していた100Wの電球が40Wに付け替えられて久しい。日本人の黒目には暗 すぎると抵抗を試みたが、無駄に終わってしまった。おかげで家の居間は、中世の城 のように薄暗い。 以前は、家に帰り着き、窓の外から真っ暗な居間が見えると、“メアリーはまだ帰宅していない。今夜はテレビが見られる!”と喜びながら居間のドアを開けたもの だった。しかし、そこで目に入るのは、暗闇に光るテレビ画面の前で、カウチポテトになり、ワインなんぞを飲んでいるメアリーだった事が何度もあり、最近は悟りの境 地に入りつつある。 匿名で寄附をしたり、風邪をひけば気遣ってくれる心優しいメアリーだが、 ある朝、居間のドアを開けたらカウチで、文字どおりポテトかドラキュラになっているかもしれない。
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