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ネイティブ感覚で観る『ザ・ホワイトハウス』


Updated every Monday, 更新日:8月27日

ジャーナリスト 西森マリー先生

西森先生
西森先生のプロフィール
人気海外ドラマ『ザ・ホワイトハウス』を題材に、アメリカ在住ジャーナリスト、西森マリーさんが英語の台詞とその背景をわかりやすく解説。アメリカの社会背景・文化を知れば英語の台詞もなっとく、楽しみながらアメリカの「今」を学ぼう!


ネイティブ感覚で観る『ザ・ホワイトハウス』 94
軍隊での不倫問題
Adultery in the Military 
From Season 4 episode 9, "Arctic Radar"
 
今週から3回にわたって9話に関して詳しく説明していきましょう。
まずは軍隊における不倫問題から。

報道官C.J.から海軍の女性パイロット、ヴィッキー・ヒルトン少佐が既婚の部下と不倫して憲兵に逮捕されたことを知らされた、大統領と首席補佐官レオの会話を見てみましょう。

President: I didn't think adultery was against the uniform code.
Leo: You're talking about Vickie Hilton?
President: Yeah. It's against military law?
Leo: No. They don't like fraternization, but her thing isn't the affair, it's failure to follow an order.
President: They told her to stop?
Leo: Yeah.
President: What can she get?
Leo: She could go to jail for two years.
President: For failure to follow an order?
Leo: Sure.
President: We should have that here.
大統領: 不倫が軍法違反だとは思わなかった。
レオ: ヴィッキー・ヒルトンのことですか?
大統領: そうだ。不倫は軍法違反なのか?
レオ: いいえ。交友が禁じられているだけですが、彼女が逮捕されのは浮気のせいではなく、命令に従わなかったからです。
大統領: 浮気をやめろと命令されたのか?
レオ: そうです。
大統領: 罰は?
レオ: 2年の懲役になるかもしれません。
大統領: 命令に従わなかったせいで?
レオ: はい。
大統領: ホワイトハウスにもそういう罰則をもうけるべきだな。

大統領の最後の一言はもちろんジョークですが、軍隊で交友関係を持つことが禁じられているのは本当です。

これは、軍隊の内部でのえこひいきや機密漏洩を防止するためなんですよね。


次に次席補佐官ジョシュと彼の恋人で女性運動家のエイミーの会話を見てみましょう。

Amy: It's about Vicky Hilton. And I'm here in no official capacity and I'm wielding nothing, but the League of Professional Women is going to represent her, and they've asked me if I could help get them time with the President.
Josh: There's no way the White House is going to get involved in it. It's a military thing.
Amy: Civilians run the military. Not only is it okay for you to get involved, you're supposed to. It's the law.
Josh: And the Commander-in-Chief chooses not to overrule his commanders.
Amy: He chooses to do that without hearing informed argument?
Josh: Yes, 'cause then when he says no, I got a problem with women.
Amy: Except that my friends and I can give you a problem with women right now.
Josh: What happened to "I came wielding nothing"?
Amy: I forgot that women just got him re-elected. Evidently, you did too.
エイミー: ヴィッキー・ヒルトンの件で話があるの。私は公式な立場でここに来たんじゃないから、別に影響力を行使しようとしてるわけじゃないんだけど、キャリア・ウーマンの団体が彼女の弁護をすることになって、大統領に会えるかどうか聞いて欲しいと頼まれたの。
ジョシュ: ホワイトハウスの介入の余地はないよ。軍隊のことだから。
エイミー: 軍隊に指示を与えるのは民間人よ。ホワイトハウスの介入は違法じゃないどころか、合法的なことだわ。
ジョシュ: 最高司令官である大統領は軍の司令官たちの決断に異議を唱えない道を選択してる、ってことだ。
エイミー: 正当な説明を聞かずにそんな選択をしちゃうわけ?
ジョシュ: そうだ。聞いた後に介入を拒否したら女性たちからの支持が下がるから。
エイミー: 私の仲間と私が今すぐにでも女性からの支持率を下げてあげられるわよ。
ジョシュ: 影響力は行使しない、って言わなかったっけ?
エイミー: 大統領を再選したのは女性票だってことを、私ったら忘れてたのよ。あなたも忘れてたでしょ。

女性からの支持率が高いお陰で再選されたんだから、女性パイロットを助けるべき、というエイミーに説得され、ジョシュは黒人で軍部のトップであるフィッツウォレス総合参謀本部議長に会い、大統領の介入なしに女性パイロットを救えないかどうか相談します。

Fitzwallace: These things are handled at the Commander's level in the Navy, and I wouldn't step in unless it's the President's pleasure to order me.
Josh: I understand. I guess also, the thing is she isn't just any pilot. She's like Jackie Robinson. She's busted a lot of barriers. She's the first woman at Miramar, first woman to fly the F-14 Tomcat, she teaches on an F-14. I guess at this point I don't have to give you her re'sume'.
Fitzwallace: No. But could you tell me more about Jackie Robinson and breaking barriers?
Josh: Just out of curiosity, if you could step in, would you save her?
Fitzwallace: No. I'd discharge her, dishonorably, and I'm sure that's what's going to happen.
Josh: I have to tell you it just doesn't seem right to me.
Fitzwallace: I know it doesn't.
フィッツウォレス: 海軍の司令官のレベルで決められることなので、大統領に命令されない限り私が口を出すことではありません。
ジョシュ: それは分かるんですが、彼女がただのパイロットではないことも事実ですよね。彼女はジャッキー・ロビンソンのような存在で、様々な壁を破ってる。ミラマー海軍航空基地の初の女性空軍兵、F-14トムキャットを操縦した初の女性パイロットで、F-14操縦の教官でもある。私から彼女の経歴を説明するまでもないはずです。
フィッツウォレス: 確かに。でも、ジャッキー・ロビンソンと壁に関する話をもっと聞かせてください。
ジョシュ: 参考までにお聞きしたいんですが、もし介入できたら彼女を救おうとなさいますか?
フィッツウォレス: いいえ。懲戒除隊処分にしますし、きっとそれが彼女に対する処分になるでしょう。
ジョシュ: それは正当な措置ではないと私には思えてなりません。
フィッツウォレス: そうでしょうな。

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フィッツウォレスの最後の一言は、いくら正当じゃないと思えようが、軍のルールとはそういうものなのだ、という軍規を重んじる軍人らしい台詞ですよね。

ジャッキー・ロビンソンは、黒人で初めてメジャー・リーグ入りを果たした野球選手です。

ロビンソンの壁に関してもっと聞かせてほしい、というフィッツウォレスの皮肉も、黒人として人種の壁を破って総合参謀本部議長に出世した人物の口から出てくると、実に重みがありますよね。


次に、レオと大統領の私設秘書チャーリー(大統領の娘と以前つきあっていた)のやりとりをみてみましょう。

Leo: What do you think about Vickie Hilton?
Charlie: I don't think you can reasonably ask someone to control who they fall in love with.
レオ: ヴィッキー・ヒルトンの件、どう思う?
チャーリー: 誰と恋に落ちるかコントロールしろと命じるなんてばかげてると思いますね。

チャーリーの意見、ごもっとも、という感じですよね。

ファースト・レディーや娘たちからも介入をせがまれている大統領は、アイゼンハワーが浮気をしたときは誰からも文句が出なかった、とレオに告げ、なんとか介入の道を模索しています。

President: Do you really think that Vicky Hilton is unable to distinguish between this order and a combat order?
Leo: This was combat order. They're all combat orders! When you order a guy to go fight, the guy can't think it's 'cause you're sleeping with his wife.
大統領: ヴィッキー・ヒルトンがこの命令(浮気をやめろと言う命令)と戦闘命令の区別がつかなかったと、君は本気で思ってるのか?
レオ: この命令も戦闘命令だったんですよ。(軍部で上官が部下に与える)命令は全て戦闘命令です! 戦争に行けという命令を下された兵士が、「この命令は自分が上官の奥さんと寝てるからか?」と思ったら困るでしょうが。

レオのこの一言も、軍人として戦闘経験のある人間の台詞だからこそ重みがあるんですよね。

結局、バートレット大統領は、この問題は複数の観点から検討すべき、として、女性差別を訴える人々や入隊経験のない人々(バートレット大統領も入隊経験がありません)の意見も聞くことにします。


実は、このエピソードは、1997年5月に同僚の旦那さん(民間人)と不倫をして軍法会議にかけられることになった空軍の女性パイロット、ケリー・フリンが一躍メディアで注目を集めた事件が元になっています。

空軍学校を最優秀の成績で卒業した彼女は、B-52の初の女性パイロットとして空軍のリクルートCMでフィーチャーされていて、いわば空軍の顔のような存在でした。

しかも、ブロンドの美女だったので、メディアが連日連夜この不倫スキャンダルを報道していたんですよね。

で、軍隊内部での不倫は実はよくあることなのに、摘発されるのはランクの低い兵士や女性が圧倒的に多いため、公民権擁護団体や女性の権利を主張する団体が軍のダブル・スタンダード(対象によって違う基準を持つこと)を糾弾していました。

世論も、「不倫で軍法会議はひどすぎる」という意見が圧倒的に多かったんですけど、軍隊を経験したことのある人たちは「問題なのは不倫がどうのこうのではなく、不倫をやめろ、という命令に従わなかったこと」と言っていたので、バートレット大統領(入隊経験がない)とレオ(元軍人)の意見は、これを反映したものなんですよね。

結局、ケリー・フリンは軍法会議を避けるために辞職しましたが、このスキャンダルのお陰で不倫に対する軍の処分のダブル・スタンダードをメディアがおもしろがってとりあげるようになりました。

そのため、1997年6月には総合参謀本部会議長に昇進がほぼ決まっていたラルストン将軍の過去の不倫(1980年代、奥さんと別居中にCIA職員と浮気をしていた)が大きなニュースになってしまい、当時のコーエン国防長官などが将軍の後押しをしたものの、最終的には彼の昇進を見送らざるを得なくなってしまいました。

さらに、1998年にはやはり不倫で黒人のマキニー陸軍上級曹長が懲戒処分を受けて降格され、1999年にはヘイル陸軍少将が不倫の罰として2万2,000ドル(260万円)の罰金を命じられました。

で、おもしろいことに、右翼のコメンテイターの中には軍の上層部(つまりほとんどが共和党支持者白人男性)の不倫に対しては「仕事さえちゃんとしてれば不倫ぐらい許してあげてもいいのでは?」と歯切れの悪いことを言う人が多かったのに、ほぼ同時期(1998年1月)に発覚したルインスキー・スキャンダルに関しては同じコメンテイターたちが「倫理的に許せない重大事!」と、クリントン大統領を非難していたんですよねぇ。

こうした歴史的背景をふまえてこのエピソードを見てみると、バートレット大統領がアイゼンハワー(軍人から大統領になったタカ派共和党員)の不倫が非難されなかったことを引き合いに出した裏に、クリントン批判をした右派への皮肉が込められていることがよく分かりますね。


来週は、国連職員の違反駐車に関する話題をお届けします。お楽しみに!


ボキャブラリー
adultery:不倫
uniform code:軍法
jail:刑務所
wield:(権力を)行使する
civilian:民間人
Commander-in-Chief:最高司令官
overrule:却下する
discharge:除隊
combat:先頭の



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