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ネイティブ感覚で観る『ザ・ホワイトハウス』


Updated every Monday, 更新日:7月30日

ジャーナリスト 西森マリー先生

西森先生
西森先生のプロフィール
人気海外ドラマ『ザ・ホワイトハウス』を題材に、アメリカ在住ジャーナリスト、西森マリーさんが英語の台詞とその背景をわかりやすく解説。アメリカの社会背景・文化を知れば英語の台詞もなっとく、楽しみながらアメリカの「今」を学ぼう!


ネイティブ感覚で観る『ザ・ホワイトハウス』 91
国立公園局問題
National Park Service Controversy 
From Season 4 episode 8, "Swiss Diplomacy"
 
今週から3回にわたって8話に関して詳しく説明していきましょう。
まず、今回は国立公園局に関する話題を。

最初に、広報部長トビーと首席補佐官レオのやりとりを見てみましょう。

トビーは落選した環境保護派のカレン・クロフト民主党議員に国立公園局(内務省の傘下にある局)の局長という地位を与えようとしているのですが、この役職は大統領の任意で指名できるものではなく上院の承認が必要なので、レオはカレンの指名は断念すべきだ、と言っています。

レオがカレンを敬遠する理由を見てみましょう。

Leo: She led the charge for a higher gas tax.
Toby: We asked her to do it.
Leo: I understand, but the U.S. Senate isn't going to, plus the minority leader is already pissed at us.
レオ: 彼女はガソリン料金引き上げ案を提唱したんだぞ。
トビー: 我々が依頼したからでしょう。
レオ: それは分かってるが、上院で通るはずがないし、院内総務が激怒してる。

二人の会話はさらに続きます。

Leo: What do you want me to do?
Toby: Start getting used to the fact that we won in a landslide. We can show some fight on this.
Leo: Ernest went down for the gun ban, Janice for taxes...
Toby: This is different. We asked her to introduce the bill.
Leo: And she knew that. It's called a trial balloon.
Toby: Yeah, but it's also called a recorded vote. She did that kind of thing for us. She was our gal on the back bench.
Leo: She did everything short of pouring lighter fluid on the Republican leadership. They're not going to confirm her. They're going to make us look bad doing it and we still got a half a new Cabinet to confirm.
レオ: どうしろと言うんだ?
トビー: 大統領選で圧勝した者らしい態度を取り始めてほしいんですよ。(指名承認の公聴会で)戦おうじゃありませんか。
レオ: アーネストは銃禁止を訴えて落選し、ジャニスは税金で落選した…
トビー: それとこれとは話が違います。あの法案(ガソリン代引き上げ法案)を彼女に提出させたのは我々なんですよ。
レオ: それは彼女も承知の上でのことだ。(議会がどう反応するか)探りを入れた、ということだよ。
トビー: ええ、でも(無記名投票ではないから)投票結果が記録に残っています。彼女はホワイトハウスのためにそういうこと(自分の政治のキャリアに不利になること)をしてくれたのです。我々は彼女を駒として使ったんですよ。
レオ: 彼女は共和党のリーダーたちにライターで火をつけたようなものなんだから彼らが彼女を承認するはずがないだろう。彼女を推した我々が共和党議員たちに叩かれるだけだ。それに内閣の役職の半分の指名を承認させなきゃならいんだから。

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この一連のやりとりから、ガソリン代をほんのちょっとでも引き上げようとしたり、銃規制を訴えたり、減税に反対するとあっという間に落選してしまう、というアメリカの政治の厳しい現状をかいま見ることができますよね。

特に税金に関しては、ブッシュ政権の減税がいくら富豪や大企業のみが得する政策であろうとも、「減税」という言葉を聞いただけで反射的に賛成票を投じてしまうアメリカ国民が圧倒的に多いので、金持ちや大企業へは課税して一般市民への減税のみを推し進めたい民主党にとっては税金問題は悩みの種なのです。


最後に、トビーがカレンに残念な知らせを告げたあと、逆にカレンに励まされてしまうシーンを見てみましょう。
Karen: I've made a lot of enemies on the Hill. You don't owe me.
Toby: We asked you to fight a losing... Yes, we owe you.
Karen: This is... when the President calls a play...
Toby: I called the play. I called it.
Karen: Raising the gas tax...
Toby: It was a loser and I pushed to have you introduce it anyway.
Karen: That doesn't make any difference.
Toby: Well, look, let's just...
Karen: I came out for a gas tax 'cause someone from Michigan had to. Gas prices are too low. It's why the air is polluted. It's why no one wants alternative fuels.
カレン: 私は議会でたくさん敵を作ってしまったけど、あなたのせいではないですよ。
トビー: 我々が君を勝算のない戦いに挑ませたんだから、我々のせいだよ。
カレン: これは…大統領がプレーの指示を出したら…
トビー: 指示を出したのは僕だ。僕がやったことだ。
カレン: ガソリン代引き上げは…
トビー: 勝算がないと分かっていながら、あの法案を君に提出させたのは僕だ。
カレン: 誰のアイディアかは関係ないですよ。
トビー: ま、とにかく…
カレン: ガソリン代引き上げ法案を私が出したのはミシガン州の議員の誰かがやらなきゃならないことだったからです。ガソリン代は安すぎますよ。それが大気汚染の原因です。そのせいで誰も代替燃料を欲しがらないんですよ。

ミシガン州は今でも自動車産業の本拠地というイメージが強いので、「ミシガン州の議員こそがガソリン代引き上げを訴えなければならない」というカレンの台詞には真の環境保護派の信念を感じますよね。

実は、このエピソードはブッシュ政権が環境保護庁長官と内務省長官に、環境保護より企業の利潤追求を優先させる人物を据えたことを皮肉ったものなのです。

第一次ブッシュ政権の環境保護庁長官クリスティ・ホイットマンは「地球温暖化の科学的根拠はない」と主張し続け、石油/電力/自動車の利権を守った人で、米国同時多発テロ9/11の直後にグラウンド・ゼロでの大気汚染はないと明言し、後に作業員たちが大気汚染のために様々な病気になったことが発覚したときに、「NYのビジネスを早く元に戻すためには、アメリカ市民の健康よりも経済を優先した」と非難を浴びました。

そして、環境保護庁長官を辞めた後は、石油会社やヒ素による地質汚染で訴えられている会社などのロビイスト*脚注1)として大もうけしています。

一方、内務省長官のゲイル・ノートンは、ブッシュ氏からお声がかかるまでは鉛汚染で悪名高い鉛入りペンキの会社ナショナル・レッド・カンパニーのロビイストだった人物。

内務省長官になってからは、内務省の管轄下にある国立公園や自然保護区での石油/天然ガス掘削、樹齢何百年という樹木伐採を推奨し、識者のみならず一般市民からも「キツネに鶏小屋の番をさせるようなもの」と激しい非難を浴びていました。

特にアラスカ野生保護区での石油掘削、国立公園でのスノーモービル解禁、絶滅種のリスト削減(絶滅種の動植物が存在すると土地の開発や掘削がやりにくいから)、国立公園/自然保護区の一部の私有化、天地創造説の押し売り(国立公園の売店で「グランド・キャニオンはキリスト教の神が創造した」と説く本を販売)はアメリカのみならず世界中の良識人たちをあきれかえらせました。


ちなみに、ノートン、およびブッシュ政権のこうした自然破壊の一部は、環境保護派が訴訟を起こしてなんとか食い止めてきたのですが、2007年6月25 日、ブッシュ政権下で極右化した最高裁が絶滅種保護よりも開発業者の権利を優先する判決を出したので、最高裁判事の顔ぶれが変わるまではアメリカの環境破壊に歯止めをかけることはできそうもないのです!(子ブッシュが任命したアリト判事とロバーツ判事、親ブッシュが任命したトーマス判事、レーガンが任命したスカリア判事とケネディ判事は皆環境保護よりも企業の利潤追求を重んじている人々です)

つい最近行われた「ライブ・アース」のコンサートではゴア前副大統領がロック・スターのように観衆から大声援を受けていましたが、一般市民の間でいくら環境保護に対する関心が高まっても、最高裁とホワイトハウスが環境破壊を推し進めているうちはアメリカは環境保護後進国であり続けることは目に見えていますよね。

2008年の大統領選でバートレット大統領のような人物が大統領になることを祈るばかりです!


脚注
*1.ロビイスト(lobbyist
圧力団体や企業の代理人として、政党や議員や官僚に働きかけ、その団体に有利な政治的な決定を行わせようとする人のこと。日本ではなじみがうすいが、アメリカでは政治を動かす大きな勢力になっている。


過去のコラム
原理主義キリスト教徒が科学を否定する根拠について知りたい人は
「原理主義キリスト教1〜天地創造説」

ブッシュ政権の「減税」の打ち出し方について知りたい人は
「真のディベートv セールス・トーク」

大統領の最高裁判事の指名について知りたい人は
「最も重要な大統領の仕事」


関連リンク
ブッシュ政権の国立公園管理のずさんさを報告しているサイト
http://www.npca.org/


ボキャブラリー
senate:上院
minority leader:院内総務
cabinet:内閣
alternative fuels:代替燃料



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字幕:日本語・英語・日本語吹替え用字幕
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