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ネイティブ感覚で観る『ザ・ホワイトハウス』


Updated every Monday, 更新日:7月2日

ジャーナリスト 西森マリー先生

西森先生
西森先生のプロフィール
人気海外ドラマ『ザ・ホワイトハウス』を題材に、アメリカ在住ジャーナリスト、西森マリーさんが英語の台詞とその背景をわかりやすく解説。アメリカの社会背景・文化を知れば英語の台詞もなっとく、楽しみながらアメリカの「今」を学ぼう!


ネイティブ感覚で観る『ザ・ホワイトハウス』 87
深紅の州(共和党が圧倒的に強い州)
Crimson States
From Season 4 episode 7, "Process Stories"
 
今週から4回にわたってシーズン4の7話を詳しく説明していきましょう。

一回目は、「crimson states:深紅の州(red statesよりもさらに赤い、という意味です)」と呼ばれている共和党が圧倒的に強い州に関する話題を。

まず、共和党候補に大差をつけて再選されたバートレット大統領とファースト・レディー、アビーの会話を見てみましょう。

President: I don't want to intimidate you, but it turns out I'm the first Democrat in twenty years to make a clean sweep of the Plains states and I'm not just talking about Iowa and Nebraska.
Abbey: Are you trying to turn me on now?
President: Yeah.
Abbey: All right.
President: I won the Dakotas. The Badlands. The Black Hills. But let's go down, way down, to the Deep South and the humid bayou of Louisiana and its nine electoral votes. What manner of man it must take to win the state, which, by the way, is the only one operating under the Napoleonic Code of France and I still don't know what that's all about, but back to me...
Abbey: Hon, is this like nerd hot talk?
大統領: 君を威圧したいわけじゃないが、僕は民主党で20年ぶりに平原地帯全てで勝利を収めたんだぞ。しかもアイオワとネブラスカだけじゃない。
アビー: 私を誘惑してるの?
大統領: そうだ。
アビー: いいわね。
大統領: 南北ダコタでも勝ったんだぞ。バッドランズ、ブラック・ヒルズで勝ったんだ。もっと南へ下ってみよう。ディープ・サウス(超保守的な南部)ルイジアナの湿地帯でも9人の選挙人の票を獲得した。このような州で勝つためにはどんな資質が必要だと思うかね? ちなみに、ルイジアナは(アメリカの中で)唯一フランスのナポレオン法典を採用している州だ。どんな法典なのか僕は未だに知らんが、とにかく僕は…
アビー: あなた、オタクの自慢話?

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深紅の州で勝った喜びを隠しきれない大統領が延々と自慢話をしている、というこのシーン、ほほえましいですよね。

the Plains(平原)とは、基本的にはモンタナ州、ノース・ダコタ州、サウス・ダコタ州、ネブラスカ州、ワイオミング州、カンザス州、コロラド州、オクラホマ州、テキサス州、ニュー・メキシコ州の10州のことですが、アイオワ州とミズーリ州も含まれることがあり、the Great Plains(大平原)とも呼ばれています。

the Badlandsは南北ダコタ州の雨や風による新緑風化が激しい粘土質の地方の総称です。

the Black Hillsはサウス・ダコタ州からワイオミング州にかけて連なっている山脈のこと。

the Deep Southは、ここでは共和党が圧倒的に強く最も人種差別の激しい南部の州の代名詞として使われています。

the Deep Southにどの州が含まれるか、という定義は人によって異なりますが、アラバマ州、ミシシッピー州、ルイジアナ州、アーカンソー州はアメリカ人の誰もがthe Deep Southと認める州です(ジョージア州、南北カロライナ州、フロリダ州もthe Deep Southに入れる人もいます)。

ルイジアナは元々はフランス領だったので、ルイジアナ州の法律はナポレオン法典の影響を強く受けています。


アメリカのthe Plainsとthe Deep Southでは、現実の世界でも本当に共和党が強いんですよね。

バートレット大統領の話に出てくる州の1960年(JFKが勝った年)以降の大統領選(計12回)の結果を見てみましょう。

まず、ニュー・メキシコは60年(ケネディ)、64年(ケネディの跡を継いだリンドン・ジョンソン)に民主党が勝った後は6回続けて共和党が勝っていますが、ヒスパニックの人口が増えるにつれ民主党派の人々の数も増え、92年/96年(クリントン)と2000年(ゴア)も民主党が勝利を収めています。

テキサスは、60年(JFK)、64年(テキサス出身のリンドン・ジョンソン)、68年(ジョンソンの副大統領だったハンフリー)、76年(カーター)の4回民主党が勝っていますが、その後はず〜っと共和党が勝っています。

モンタナで民主党が勝ったのはたった2回(64年のリンドン・ジョンソンと92年のクリントン)だけ。

ノース・ダコタとサウス・ダコタ、ネブラスカ、カンザス、ワイオミング、コロラド、オクラホマに至っては、民主党が勝ったのは64年のリンドン・ジョンソンのみ、というまさに深紅の州です。

ですから、the Plainsの全ての州で民主党が勝利を収める、というのは本当にものすご〜い偉業なのです!

ルイジアナで、民主党が勝ったのは1960年のケネディ、76年のカーター、92年、96年クリントンの4回ですが、JFKがカリスマ的な人気があったこと、カーターもクリントンもthe Deep South出身だったこと(カーターはジョージア州、クリントンはアーカンソー州)を思えば、東部のニュー・イングランド出身のバートレットがルイジアナで勝った、というのも、これまた奇跡的な偉業と言えますよね。


この後、首席補佐官レオもやはりルイジアナで勝ったことを自慢していますが、the Deep Southでたとえ1州だけでも東部出身の民主党候補が勝てたというのは本当に記念すべきことなのです。

っていうか、実際にはあり得ないこと、と言ったほうがいいでしょうね。

ですから、このエピソードは民主党派の人々のかなわぬ夢をドラマの中で実現してくれたもの、と言えるのです。

なにしろ、アラバマ州、アーカンソー州、ジョージア州、ルイジアナ州、ミシシッピー州は1968年の大統領選(共和党のニクソンが勝った年)で、アメリカン・インディペンデントという第三の党から立候補した人種差別主義者ジョージ・ウォレス候補に勝利をもたらしているくらいなのですから!

ジョージ・ウォレスは元アラバマ州知事で、1963年の州知事就任演説での『名言』、「Segregation today . . . segregation tomorrow . . . segregation forever!(今日も、明日も、永遠に人種差別を!)」をスローガンに1968年に大統領選に出馬し、アラバマではなんと65.86%、ミシシッピーでは63.46%の得票率で大勝しました。

the Deep Southの中でもアラバマとミシシッピーが特に人種差別が激しく超保守派の共和党員の総本山であることは以前にもお話しましたが、ウォレスの大勝ぶりもこの2州がいかに深紅であるかを裏付けていますよね。

ですから、いくらテレビ・ドラマの中のこととはいえ、アラバマとミシシッピーで民主党候補、しかも東部出身のインテリが売り、という候補が勝つなどということは全く信憑性がないので、バートレット大統領がthe Deep Southの州で勝利を収める、という設定だとアーカンソーかジョージアかルイジアナのどれかしかないわけです。

で、ルイジアナが選ばれた理由は、アーカンソーはクリントン、ジョージアはジミー・カーターのイメージが強すぎるからなんですよね。

でも、このエピソードが放送された2002年11月13日は、2002年の中間選挙の直後で、なんとルイジアナが大きな話題になっていたのです!

2001年、ブッシュ氏が大統領になった段階では、上院は共和党50人、民主党50人で、副大統領チェイニー氏がタイ・ブレイカーの1票を投じることで共和党が上院での多数党の地位を保っていました。

でも、2001年6月に共和党中道派で環境保護に力を入れていたジム・ジェフォーズ氏がブッシュ政権の環境破壊政策に反対し共和党を脱退して無党派になり、民主党のバックアップを受けたため、共和党49人、民主党50人、民主党支持者1人、という構成になり、民主党が多数党になることができたのです。

で、11月5日の中間選挙の結果、共和党がもりかえして51人になり、共和党が多数党になることが確定しましたが、ルイジアナで民主党の現職マリー・ランドリュー上院議員が再選されるかどうかがその日のうちには分からなかったのです。

ルイジアナ州選出の上院議員選挙の結果は、現職のマリー・ランドリュー民主党上院議員が57万3,347票を獲得して得票数では一位になりましたが、得票率は46%でした(2位は共和党の候補者スザンヌ・テレルで、得票数は33万9,506票)。

で、ルイジアナ州では得票数が一位でも得票率が50%以上ではない場合は、2位の候補者との間で決選投票が行われるんですよね。

そのため、このエピソードが放送されたときは、ランドリューとテレルの一騎打ちの選挙戦がアメリカ全土で話題になっていて、評論家たちが口々に「ここで民主党が勝てれば、『多数党の地位は失ったが、民主党はまだやって行ける!』という希望の光となるので、ランドリューの勝利には民主党にとって大きな象徴的意義がある」と言っていた時期だったんですよね。

ですから、『ザ・ホワイトハウス』のファンたち(9割が民主党派)は、このエピソードを見ながら、またまたアーロン・ソーキン率いる脚本家たちの先見の明が絶賛されていたのです。

ちなみに、12月7日に行われた決選投票の結果は、ランドリューが得票率52%で、テレルに4%の差で勝利を収め、落胆した民主党の人々に再びやる気を与えてくれました。


さて、来週は、亡くなった候補者の弔い合戦に関する話題をお届けします。お楽しみに!


過去のコラム
アラバマ州について詳しく知りたい人は
「アメリカ中央部の州の"お国柄"〜アラバマ州」

ミシシッピー州について詳しく知りたい人は
「アメリカ各州の'お国柄'〜ミシシッピー州」

その他のthe Deep Southの州について詳しく知りたい人は
「ルイジアナ州アーカンソー州」


ボキャブラリー
crimson:深紅色の
intimidate:〜を怖がらせる、威圧する
democrat:民主党員
Plain:平原
electoral vote:選挙人の票
Napoleonic Code:ナポレオン法典
nerd:オタク
segregation:人種差別



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