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ネイティブ感覚で観る『ザ・ホワイトハウス』


Updated every Monday, 更新日:6月25日

ジャーナリスト 西森マリー先生

西森先生
西森先生のプロフィール
人気海外ドラマ『ザ・ホワイトハウス』を題材に、アメリカ在住ジャーナリスト、西森マリーさんが英語の台詞とその背景をわかりやすく解説。アメリカの社会背景・文化を知れば英語の台詞もなっとく、楽しみながらアメリカの「今」を学ぼう!


ネイティブ感覚で観る『ザ・ホワイトハウス』 86
政界の女性たち
Women in Politics
From Season 4 episode 6, "Election Night"
 

3回にわたって、エピソード6のバックグランドの解説をお届けしています。


今週は、政界の女性たちに関する話題をお届けしましょう。
まず、報道官C.J.と広報部長トビーのやりとりから。

Toby: There's trouble?
C.J.: A little bit.
Toby: For the President?
C.J.: For you. Listen, I know better than to stick my face in your personal life except, you know, for sport...
Toby: What happened?
C.J.: Roll Call's got it from the Office of Congress's Attending Physician that Andy's pregnant.
Toby: When did they start doing more than flu vaccinations?
C.J.: They need updated medical records.
Toby: Roll Call doesn't need updated medical records though, do they?
C.J.: They're going to connect the dots. It's going to be bad for her and bad for you.
Toby: You mean bad for us.
C.J.: I can handle the "us." What's her plan?
Toby: I don't know.
C.J.: Toby...
Toby: I don't know. We haven't talked about it.
C.J.: She's got to be proactive.
Toby: Yeah.
C.J.: It would be nice if we could announce a wedding.
Toby: I'm working on that. Thanks.
C.J.: You'll talk to her, hmm?
Toby: Yeah.
C.J.: Thanks.
トビー: 何かまずいことでもあるのか?
C.J.: ちょっとね。
トビー: 大統領にとって?
C.J.: あなたにとってよ。あのねぇ、冗談でならともかく、本気であなたの私生活に口を出すほど私はバカじゃないけど…
トビー: どうしたっていうんだ?
C.J.: 下院の担当医からアンディ(トビーの元妻で現在は恋人、民主党議員)が妊娠してるって『ロール・コール(ワシントンの政治専門紙)』が聞きつけたのよ。
トビー: 下院の医者はいつからインフルエンザの予防接種以上のことをやり始めたんだ?
C.J.: 議員たちの医療記録を更新しなきゃならないでしょ。
トビー: ロール・コールにはそんな必要はないだろう?
C.J.: (あなたが父親だと)推測がつくわ。あなたにとってもアンディにとっても困ったことになるでしょう。
トビー: ホワイトハウスにとってマズイってことかい?
C.J.: それは私がなんとかできるけど、彼女のプランは?
トビー: 知らん。
C.J.: トビー…
トビー: 本当に知らないんだ。まだその件に関して話してないから。
C.J.: 彼女、先手を取らないとダメよ。
トビー: うん。
C.J.: 結婚式の案内が出せればいいんだけど。
トビー: 僕もそうできるようがんばってるんだよ。わざわざご意見ありがとう。
C.J.: 彼女と話してくれる?
トビー: うん。
C.J.: ありがとう。
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地球上最大の先進国、というイメージのアメリカって、実は超保守的な人が多くて、未だに「未婚の母」に対していいイメージを持っていない人が多いんですよねぇ。

とはいっても、南部や山岳部、中西部のred statesに集中していて、都会型の州ではそういう古い考え方の人はほとんどいませんが、民主党の女性議員が在任中に未婚の母になる、などということがあろうものなら、共和党議員たちが超保守的な支持基盤に媚びて点数をかせぐために一斉に未婚の母バッシングをすることが目に見えています。

だから、C.J.は結婚式ができたらいい、と促しているんですよね。
以前にも何度か書きましたが、ブッシュ氏の支持基盤である原理主義キリスト教徒たちや、共和党支持者が圧倒的に多い南部、中西部、山岳部の保守的な人たちはいまだに「女の仕事は家で子供を育て夫の面倒を見ること」と、大マジで信じています。

ですから、彼らにとっては「未婚の母」はアメリカ的な家族の価値を崩壊させる罪な存在、ということなので、未婚の母バッシングをする政治家は「アメリカ的な家族の価値を守ってくれる勇者」とみなされる、ということなのです。


ほんの半年前、ナンシー・ペローシ氏が女性として初めて下院院内総務になったことや、ヒラリー・クリントン氏が大統領に立候補していることで「アメリカでは政界でも女性が大活躍」というイメージがあるようですが、実際には政界で女性が活躍できるのは民主党だけのこと、という感じなんですよねぇ。

それは今の議会の構成を見れば一目瞭然でしょう。上院(100人)には女性議員は16人しかいなくて、そのうちの11人は民主党議員です。

で、わずか5人の共和党上院議員の中でも、2人はメイン州選出の限りなく民主党のポリシーに近い中道派。

下院議員は440人の議員(そのうち5人はバージン諸島などのアメリカ領からの派遣メンバーで、投票権はありません)の中に女性は74人いますが、共和党議員はわずか21人しかいないんですよねぇ。

つまり、アメリカは民主党議員や民主党が強い地域(NY、カリフォルニア、ボストンなどの都会)だけを見ている限り、女性が政界を含むあらゆる分野で大活躍できる場所、というイメージを受けますが、人口の半数を占めるred statesでは未だに女性が蔑視されているので、アメリカの政界では女性が活躍している、と一口には言えないわけです。


おそらく今回のこのドラマで描かれているテーマは、2001年にマサチューセッツの州知事に昇格し、在任中に双子を生んだ共和党のジェーン・スウィフト氏がモデルになっていると思われます(選挙で選ばれた共和党の州知事がブッシュ政権のカナダ大使となってしまったため、いわば不戦勝で当時副知事だった彼女が知事に昇格したのです)。

スウィフト氏は州知事としての職権を濫用して、州知事のオフィスのスタッフに子守を押しつけたり、警察のヘリコプターを私用に使ったことを追求されたりしたときに「娘が病気だったから」と言い訳したことが、アメリカ全土で注目され、大きな問題になっていました。

で、おもしろかったのは、共和党員の彼女をもっとも熾烈にバッシングしたのは共和党の女性と極右の女性コメンテイターたちだったことなんですよね。

民主党議員やリベラルな人々は、共和党のスウィフトを非難することは避けて、アメリカの職場は妊娠している女性や子育て中の母親を受け入れる環境を作るべき、というポジティブなことを言っていました。

よく、女性の敵は女性、と言われますが、政界の女性に絞って言えば、女性の敵は保守的な女性、ということでしょうね。


次に、超音波検査を受けに産婦人科に行ったトビーとアンディのやりとりを見てみましょう。

Toby: Just out of curiosity, how long did you think this was going to be covert? These are twins, Andy. You think you're going to go on Meet the Press and Russert's not going to notice you're the size of a school? Why not just come out and say "I'm expecting twins. I couldn't be happier. The father's my ex-husband, Toby Ziegler, to whom I'll be remarried on a date to be decided upon. I'm thinking Christmas."
Andy: I'm not marrying you again.
Toby: Then say the first part at least.
Andy: I hadn't announced it because you don't in the first 12 weeks because... that's when most of the things go wrong.
トビー: 気になるんで聞かせてもらうけど、いったいいつまで隠していられると思ってたんだ? 双子なんだぞ。『ミート・ザ・プレス』(日曜朝の政治番組)に出演してもラサート(司会者)が君が肥大化してることに気づかないとでも思ってるのか? 自主的にこう報告したほうがいい。「双子を妊娠していて、とても幸せです。父親は元夫のトビー・ズィーグラーで、彼と再婚するつもりです。結婚の日はまだ決めていませんがクリスマスがいいと思っています」って。
アンディ: あなたと再婚するつもりはないわ。
トビー: じゃ、少なくとも最初の一言は発表しろよ。
アンディ: 今まで発表しなかったのは最初の12週間には妊娠を公表しないものだからよ…いろいろまずいこと(流産など)が起きる時期だから。

アンディの最後の一言は、政治評論家や政治記者は女性や母親の気持ち/心配などに全く気遣ってくれない、という政治の冷酷な現状を物語っていますよね。


ちなみに、アメリカでは政治家である女性だけではなく、政治家の妻もメディアの取材対象となることが多いんですよね。

たとえば、今だと、民主党の大統領候補ジョン・エドワーズ氏の奥さん、エリザベス・エドワーズが乳ガンが再発したことを発表したため、頻繁にメディアで取り上げられています。

奥さんの露出のおかげでエドワーズ氏の支持率がちょっと上がったとき、共和党のコメンテイターたちが「ガンで点数を稼いでる」と言ったのには、さすがに共和党支持者たちも政治の汚さにうんざりしていました。

エドワーズ陣営は、「第三者からリークされると、ガンの妻を看病せずに夫が遊説している、というネガティブな報道になるかもしれない」という懸念から、先手を取ってエリザベス自身が「私はガンと闘いながら大統領選で奮闘している夫を応援します」という内容の記者会見を行ったのですが、この一件からも政界の女性たちはうかうか病気にもなれない、という厳しい現状がよく分かりますでしょう。

トビーがダメージ・コントロールの鉄則として、

Get the information out early, get it out yourself, do it on your own terms.
情報をすばやく、自分自身で、自分の言葉/やり方で送り出す。

と言っていますが、エドワーズ陣営はこの鉄則に従った、ということですよね。


来週は7話をお届けします。お楽しみに!


ボキャブラリー
pregnant:妊娠している
proactive:先んじた
connect the dots:全容を明らかにする



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字幕:日本語・英語・日本語吹替え用字幕
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