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ネイティブ感覚で観る『ザ・ホワイトハウス』


Updated every Monday, 更新日:6月18日

ジャーナリスト 西森マリー先生

西森先生
西森先生のプロフィール
人気海外ドラマ『ザ・ホワイトハウス』を題材に、アメリカ在住ジャーナリスト、西森マリーさんが英語の台詞とその背景をわかりやすく解説。アメリカの社会背景・文化を知れば英語の台詞もなっとく、楽しみながらアメリカの「今」を学ぼう!


ネイティブ感覚で観る『ザ・ホワイトハウス』 85
選挙当日〜民主党支持者は早めに投票する?〜
Election Day
From Season 4 episode 6, "Election Night"
 

3回にわたって、エピソード6のバックグランドの解説をお届けしています。


今週は第6話から選挙当日の動きに関する話題をお届けしましょう。まず、カリフォルニア州第47区の選挙を仕切っているウィル・ベイリーと広報部次長サムのやりとりから。

ウィルのボランティア団体が行っているexit poll(出口調査)で、選挙キャンペーン中に亡くなった*脚注1)民主党候補者ホートン・ワイルドが勝っていることを告げたウィルとサムの会話です。

Sam: Okay, can I give you a nickels worth of free advice?
Will: Yeah.
Sam: It's not advice so much as I'm saying this: Democrats vote early, okay? And diehards vote early.
Will: Okay, you want me to call in every couple of hours?
Sam: Every hour.
Will: Okay.
サム: 分かった。一つ無料のアドバイスをしてあげよう。
ウィル: どうぞ。
サム: アドバイスというより僕から一言なんだけど、民主党支持者は早く投票所に行くんだよ。それと頑固な連中も早めに投票する。
ウィル: OK。数時間ごとに電話で報告しましょうか?
サム: 1時間ごとに報告してくれ。
ウィル: 分かりました。

電話を切った後のサムとホワイトハウスのスタッフとのやりとりも笑えます。

Sam: Bonnie, Democrats vote early, right?
Bonnie: Yeah.
Sam: Ginger, Democrats and diehards vote early, right?
Ginger: Yeah.
Sam: Okay.
サム: ボニー、民主党支持者は早めに投票するよね?
ボニー: ええ。
サム: ジンジャー、民主党支持者と頑固な連中は早めに投票するよね?
ジンジャー: ええ。
サム: そうだよね。
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サムは自分が言った一言に自信がなくて、他のスタッフからの同意を求めてるんですけど、「Democrats vote early.(民主党支持者は早めに投票する)」というのは一昔前によく言われていたことです。

1950年代は、民主党支持者の多くが労働者階級の人々(自動車工場に勤める人など)で、彼らは工場に出勤する前に投票所に行ったんですよね。

方や、共和党支持者の多くはホワイトカラーで、銀行やオフィスが閉まった後に投票所に向かいました。

でも、今は両党の支持者が多様化したので、どちらの党の支持者が早く投票所に向かうか一概には断定できません。


アナリストによっては、「民主党支持者には女性が多いので、早く投票する人が多い」と言っている人もいますが、民主党支持者の女性の多くが仕事を持っている(仕事が終わった後に投票することが多い)のに対し、共和党支持者の女性の多くは専業主婦なので午前中や昼間に投票所に行けるので、この分析にも大した根拠はないですよね。

diehards(頑固な人、固い信念を持ってる人=自分の支持党に確固たる信念を持っている人)は早く投票する、というのはいくつかの調査で裏付けがとれていますが、彼らは選挙の当日に投票所へ向かうよりは、不在投票で選挙日のずっと前に投票することが多いので、出口調査には影響を与えないから、サムの一言には裏付けがないんですよね。


diehardsが不在投票で選挙の数週間前に投票する傾向が強い理由は、彼らはたとえどんなことがあろうと自分が支持する政党の候補者に投票すると固く決心しているから。

普通の有権者は、選挙の当日まで候補者の言動、政治の動向を見守って、いろいろ情報を仕入れてから誰に投票するか決めることが多いので、選挙日の直前にそれまで投票するつもりだった候補者のスキャンダルが暴露されたりすると、選挙に行くのをやめたりするわけです。

でも、diehardsは、たとえ支持している候補者のとんでもないスキャンダルが発覚しようがその人に投票する決意を翻したりしないので、不在者投票で早めに投票を済ませてしまうわけです。


ちなみに、2000年のフロリダでの大惨事の後、電子投票機が改ざんされやすいことを暴露したニュースが大々的に報道され、共和党の工作員が黒人の有権者を威嚇して投票所から追い払ったことなどが明るみになったため、どの党の支持者の間でも不在者投票をする人の率が激増しています。


次に、選挙当日、午後1時半の次席補佐官ジョシュの一言を見てみましょう。

 BARTLET [D]: 597,343
 RITCHIE [R]: 551,794
 WILDE [D]: 16,916
 WEBB [R]: 16,864


というテロップの後に、ジョシュがこう言っています。

Nothing's happening right bow. By the end of the night, 100 million votes will be cast. Polls have been open in the East for six and a half hours. You know how many votes have been cast? One percent. Everybody votes after work. Not me, I vote first thing. The VNS exit polls are down in Michigan for a little while. And it's raining in Oregon. This is like the ionization blackout period.
この時点では何も起こらない。深夜になれば1億の票が投じられるけど。東海岸では投票所は6時間半前から開いてるけど、どれだけの票が投じられたかというと、まだ1%だ。みんな仕事の後に投票するからだよ。僕は違う。僕は朝一番に投票する。有権者ニュース・サービスがミシガンでちょっと前から出口調査をやってる。オレゴンは雨だ。今はイオン化停電期間みたいなもんだ。

イオン化停電期間とは、スペースシャトルやロケットが地球に戻るときに、大気圏のイオン気体のせいで地球との交信が妨げられる期間のこと。

ここでは「情報が入ってこない期間」という意味で使われています。メインランドだけでも4時間の時差があるアメリカでは、東海岸の午後1時半という時間は、投票所がオープンして6時間半も経っているにも関わらず、選挙の動向がつかめないので、ジョシュはイラついている、ということなんですよね。

で、オレゴンは雨だ、というのは、今の時点の得票数を見て「大統領が勝っている」と安心して「雨だから」と投票所に向かうことを止めてしまう民主党支持者が出ると困る、という意味です。


次に、ウィルが47区が所属する郡の司法担当者に、電話で質問をしているシーンを見てみましょう。

There are scattered power outages in the Casa Verde precinct in Santa Ana and the street lights are going on and off in the only legitimately Democratic precinct I've got, so if I lose by a hundred 'cause people couldn't cross the street, who in your office would I talk to about election tampering?
カサ・ヴェルデとサンタ・アナで時々停電が起きていて、絶対的に民主党が強い地区で信号がついたり消えたりしてるんですよ。民主党支持者が道路を横切れなかったせいで100票の差で私の候補者が負けた場合、選挙の不正干渉に関してあなたのオフィスの誰と話せばいいでしょうか?

このエピソードが放送されたのは2002年11月6日。2002年の中間選挙の次の日でした。

この時点では、ウィルのこの一言は単に「2000年のフロリダの大惨事の後は、選挙結果が僅差だった場合は、法廷で勝負を決めるのがアメリカの常識」ということを言っている台詞として受け止められていました。

でも、中間選挙の直後に、ニュー・ハンプシャーの上院選で共和党工作員がGOP Marketplaceというテレマーケティング専門会社を雇い、民主党の選挙事務所に何度も電話をかけては5秒で切る、ということを繰り返し、民主党のボランティアたちが「投票に行きましょう!」と有権者を促す電話をかけることを妨害した事実が発覚したんですよね。

そのため、この台詞はまたまたアーロン・ソーキン(『ザ・ホワイトハウス』の脚本家)にいかに先見の明があるかを証明する一言として民主党支持者から絶賛を受けたのです。

ちなみに、この上院選では共和党のジョン・スヌヌ候補が僅差で勝ちました。

で、その後、このスキャンダルはウォーターゲート(ニクソン共和党政権が民主党本部を盗聴した犯罪)にちなんでフォーンゲート(Phonegate)と呼ばれるようになりました。

後に選挙法違反で共和党工作員4人が有罪になり実刑判決を受けたんですけど、主犯格のジェイムズ・トービンは2006年に10ヶ月の実刑を受ける前まで、共和党からヒーロー扱いされ、2004年の大統領選ではブッシュ陣営のニュー・イングランド選挙本部長を務めていました。

で、ジョン・スヌヌ氏は親ブッシュが大統領だったときの首席補佐官の息子で、トービンが2002年の中間選挙キャンペーン中に再三再四ホワイトハウスに電話をしていたことが発覚したため、このフォーンゲートにはホワイトハウスも関わっていたのでは、という疑惑がいまだに払拭されていません。


来週は、女性政治家の妊娠に関する話題をお届けします。お楽しみに!


脚注
*1.カリフォルニア州で選挙キャンペーン中に立候補者が死亡した場合
カリフォルニア州の選挙法では、選挙日の68日前までに候補者が死んだ場合は別の候補者を立てることができるが、68日以内に候補者が死んだ場合は死んだ候補者の名前が投票用紙に残り、有権者は死者に投票することが許されている。

詳しく知りたい人は過去のコラム「立候補者が死んだ場合」


関連リンク
電話による妨害について
http://www.senatemajority.com/


関連コラム
2000年の大統領選挙で起きた黒人への不正妨害について詳しく知りたい人は
「アメリカ大統領選3〜投票者への脅し」


ボキャブラリー
election day:選挙日
exit poll:出口調査
democrat:民主党員
diehard:頑固な人、固い信念を持ってる人
blackout:停電
power outage:停電
tamper:不正な干渉をする



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