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ネイティブ感覚で観る『ザ・ホワイトハウス』


Updated every Monday, 更新日:6月4日

ジャーナリスト 西森マリー先生

西森先生
西森先生のプロフィール
人気海外ドラマ『ザ・ホワイトハウス』を題材に、アメリカ在住ジャーナリスト、西森マリーさんが英語の台詞とその背景をわかりやすく解説。アメリカの社会背景・文化を知れば英語の台詞もなっとく、楽しみながらアメリカの「今」を学ぼう!


ネイティブ感覚で観る『ザ・ホワイトハウス』 83
バートレット対ブッシュ〜連邦政府と地方自治体の関係〜
Bartlet v Bush
From Season 4 episode 5, "Game On"
 

4回にわたって、エピソード5のバックグランドの解説をお届けしています。


今週はブッシュ政権に代表される共和党の政策と、バートレット政権が象徴する民主党の政策の根本的な違いにスポットライトを当ててみましょう。

まず、ドラマ内で共和党の大統領候補であるフロリダ州知事リッチーのポリシーから。

Moderator: Perhaps the biggest philosophical difference between you and the President is over the role of the federal government itself and whether national problems really have national solutions. Can you explain your view?
Ritchie: Well, first, let me say good evening and thank you. It's a privilege to be here. My view of this is simple--we don't need a Federal Department of Education telling us our children have to learn Esperanto, they have to learn Eskimo poetry.
Reporter: Eskimo poetry?
C.J.: Shh!
Ritchie: Let the states decide. Let the communities decide on health care, on education, on lower taxes, not higher taxes. Now, he's going to throw a big word at you-- "unfunded mandate." He's gonna say "If Washington lets the states do it, it's an unfunded mandate." But what he doesn't like is the federal government losing power. But I call it the ingenuity of the American people.
司会者: あなたと大統領との哲学の最大の差異は、アメリカの問題を連邦レベルで解決するべきか、という連邦政府の役割に関するものです。知事の意見をお聞かせください。
リッチー: えぇ、まずみなさんに挨拶をさせていただき、お礼を申し上げたいです。このディベートに参加できて光栄です。私の意見はシンプルです―我々の子供たちは連邦政府の教育省からエスペラントを習えとかエスキモーの詩を学べ、と指示される筋合いはない、ということです。
リポーター: エスキモーの詩だって?
C.J.: シーッ!
リッチー: そういうことは州が決めるべきです。保健医療政策、教育政策、増税のない減税政策も州レベルで決めるべきです。彼(バートレット大統領)はunfunded mandate(財源援助のない執行命令)とかいう難しい一つの単語を口に出して、「ワシントン(連邦政府)がこういうことを州の自治に任せたら、財源援助のない執行命令になってしまう」などと言うでしょうが、彼は連邦政府が権力を失うことを嫌っているだけなのです。私はこういう政策をアメリカ人ならではの巧妙な策だと思っています。

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健康保険や教育政策などアメリカ人全員にとって重要な政策を完全に地方自治体に任せよう、というのが共和党の政策なんですよね。

民主党は、そういう重要なことは連邦政府が面倒を見るべきだと思っていて、万が一州に任せるとしても政府のガイドラインに従った政策を採るべき、という考え方をしています。

ですから、連邦政府が財政援助なしにガイドラインだけ押しつける(=unfunded mandate:財源援助なしの執行命令、口は出すけどカネは出さない)のはフェアーじゃない、とバートレット大統領は言うだろう、というわけなのです。

エスペラントやエスキモーの詩を否定しているのも、いかにも共和党!!!
共和党はアメリカは英語を話す人のみの国で、アメリカの子供たちはアメリカの歴史と聖書だけ学んでいればよい、という考えなので、外国語やエスキモーの詩なんて勉強するに値しない、ってことなんですよね。


リッチーのこのコメントに続く台詞を見てみましょう。

Moderator: President Bartlet, you have 60 seconds for a question and an answer.
President: Well, first of all, let's clear up a couple of things. "Unfunded mandate" is two words, not one "big word." There are times when we're fifty states and there are times when we're one country, and have national needs. And the way I know this is that Florida didn't fight Germany in World War II or establish civil rights.
President: You think states should do the governing wall-to-wall. That's a perfectly valid opinion. But your state of Florida got $12.6 billion in federal money last year-- from Nebraskans, and Virginians, and New Yorkers, and Alaskans, with their Eskimo poetry. 12.6 out of a state budget of $50 billion, and I'm supposed to be using this time for a question, so here it is: Can we have it back, please?
司会者: バートレット大統領、60秒以内で質問と答えをお願いします。
大統領: まず、いくつかハッキリさせておきたいことがあります。unfunded mandateは難しい一つの単語ではなく、2つの単語です。アメリカは50個の州であると同時に一つの国家なので、国家としてやらなければならないことがあるのです。第二次世界大戦でドイツに勝ったのはフロリダ州ではないし、公民権を確立したのもフロリダ州ではありません。
大統領: 州に包括的な自治権を与える、というのは立派なご意見ですが、あなたの州のフロリダは去年ネブラスカ州民、ヴァージニア州民、ニューヨーカー、そしてエスキモーの詩でおなじみのアラスカ州民などの税金でまかなわれている連邦政府の予算から126億ドル(約1.5兆円)の援助を受けています。500億ドル(約6兆円)の州予算のうち126億ドルは連邦政府からの援助金、ということです。60秒の間に質問もできる、ということなので質問させていただきましょう。この126億ドル、返していただけますか?

共和党が何がなんでも州の自治権を主張するなら、連邦政府からの援助金なしでやっていけ、というバートレット大統領の反論、お見事ですよね!


次に、2人のこのやりとりを見てみましょう。

Ritchie: And the partisan bickering. Now, I want people to work together in this great country. And that's what I did in Florida -- I brought people together -- and that's what I'll do as your President. End the logjam, end the gridlock, and bring Republicans together with Democrats, 'cause Americans are tired of partisan politics.
Moderator: Mr. President?
President: Actually, what you've done in Florida is bring the right together with the far right. And I don't think Americans are tired of partisan politics; I think they're tired of hearing career politicians diss partisan politics to get a gig.
President: I've tried it before, they ain't buying it. That's okay, though. That's okay, though, 'cause partisan politics is good. Partisan politics is what the founders had in mind. It guarantees that the minority opinion is heard, and as a lifelong possessor of minority opinions, I appreciate it.
President: But if you're troubled by it, Governor, you should know, in this campaign, you've used the word "liberal" seventy-four times in one day. It was yesterday.
リッチー: 党派間の言い争いはやめて、この偉大な国のためにみんな協力してほしい、それが私の望むところで、フロリダではそれを実現しました。私はフロリダ州民をひとつにまとめたのです。大統領になったら国を一つにまとめるつもりです。(両党のいがみ合いによる国会の)行き詰まりや議論の立ち往生に終止符を打ち、共和党と民主党をまとめあげます。アメリカ国民は二党が言い争いばかりしている政治にうんざりしていますから。
司会者: 大統領のご意見はいかがですか?
大統領: あなたがフロリダで達成したのは、極右と右翼をまとめた、ということですよね。アメリカ国民が二党が論争する政治にうんざりしているとは私は思いません。アメリカ国民がウンザリしているのは、政治家が二党が論争し合う政治を小馬鹿にしてスポットライトを浴びていることでしょう。
大統領: 私も以前にそういう手を使ったことがありますが、いい手ではありませんよね。でも、それはそれでいいでしょう。なぜなら違う党が論争し合う政治は悪くないからです。複数の党が論争し合う政治こそがアメリカ建国の父たちが目指したものだからです。それは少数派の意見を尊重してくれるものなので、今までも、そしてこれからもずっと少数派の意見を持っている私にとってはありがたい仕組みです。
大統領: でも、知事殿、あなたが二党がいがみ合う政治がお嫌いだと言うのでしたら、この選挙キャンペーンであなたはなぜ「リベラル」という言葉をたった一日の間に74回もお使いになったのですか? それは昨日の勘定ですけど。

バートレット大統領の最後の一言は、リッチーが「二党が論争ばかりしている政治は嫌い」と言っておきながら、自分ではリベラル(民主党)への嫌悪感を煽る演説ばかりしていることを皮肉った小気味よい台詞ですよね。


大統領の最初の一言は、2000年の大統領選で当時テキサス州知事だったブッシュ氏が「私は党派を超えてテキサスをまとめた」と豪語していたことを皮肉ったもの。

テキサス州でブッシュ氏がまとめたのは、極右の共和党員と右派の共和党員で、少数派の民主党員は完璧に無視され続けていました。

ちなみに、テキサス州の最高裁は見事に全員極右と右派の判事ばかり(つまり、大企業を優遇する共和党よりの判事)なので、大企業を相手取った訴訟では企業側が勝つ確率が圧倒的に多いことで知られています。

アメリカでは、よく「All politics is local.(全ての政治は地方レベルで決まる)」と言われています。

国家全体の利益よりも自分の選挙区の有権者の利益を優先する、という意味です。

ブッシュ氏が支持基盤である原理主義者の利益を優先していることは今まで何度も書きましたが、共和党の政治家の多くがまさに「All politics is local.」を地で行っていて国家の利益よりも支持基盤(原理主義者、右派白人、大企業、富豪)の利益をあからさまに優先しているんですよね。

それに対し、少数派の権利を守りながら国家全体の利益を追求したい、というのが民主党のバートレット政権の方針。

今回のディベートで、二党の方針の差異が具体的によく分かりましたよね。

分かりやすい台詞で政治を説明してくれる『ザ・ホワイトハウス』を見ていると、今のアメリカの政治、そして来年の大統領選をより深く知ることができるでしょう!


関連コラム
ブッシュ政権の支持基盤、原理主義者について詳しく知りたい人は
「原理主義キリスト教徒」


ボキャブラリー
federal government:連邦政府
mandate:委任、命令
wall-to-wall:包括的な
logjam:行き詰まり
gridlock:立ち往生
partisan politics:派閥中心の政治



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字幕:日本語・英語・日本語吹替え用字幕
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