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ネイティブ感覚で観る『ザ・ホワイトハウス』


Updated every Monday, 更新日:4月30日

ジャーナリスト 西森マリー先生

西森先生
西森先生のプロフィール
人気海外ドラマ『ザ・ホワイトハウス』を題材に、アメリカ在住ジャーナリスト、西森マリーさんが英語の台詞とその背景をわかりやすく解説。アメリカの社会背景・文化を知れば英語の台詞もなっとく、楽しみながらアメリカの「今」を学ぼう!


ネイティブ感覚で観る『ザ・ホワイトハウス』 78
家族の価値
Family Values
From Season 4 episode 4, "Debate Camp"
 

3回にわたって、エピソード4のバックグランドの解説をお届けしています。


今週は、家族の価値に関する話題をお届けしましょう。
まず、バートレット大統領がディベートの練習をしているシーンを見てみましょう。

Larry(as a moderator): President Bartlet, the next questions to you. Governor Ritchie contends there's a crisis in the American family that parents aren't spending enough time with their kids.
Josh: We're trying this again. Sorry.
Larry: Yeah. And that your solution is essentially to have government raise children.
President: Well, that's an extraordinary and unsurprisingly dumb interpretation of what it is my administration's trying to accomplish. It's hard enough to raise kids today with help from family leave, subsidized daycare, preschool-- we need more of it, not less.
Sam(as Ritchie): The government can't raise kids, Mr. President-- parents have to.
President: I have three grown daughters, Governor. You really want to tell me how I should raise my family? You're really comfortable with that?
Josh: There it is.
President: You want to tell other American fathers and mothers what they're doing wrong?
Sam: Sir, I did not say...
President: I didn't think you did. So, why don't we stick to what government can do-- which is collect money and distribute it-- and stop wasting time by sentimentalizing family.
Larry: That's... not good, sir.
Sam: We just lost the vote of every stay-at-home mom and their husbands who are henpecked.
ラリー(司会者役): バートレット大統領、次の質問は大統領に対してです。リッチー知事は、アメリカの家族は危機に陥っていて親が子供と一緒に過ごす時間が足りない、と主張しています。
ジョシュ: またその話題か。ごめん。
ラリー: ええ。で、あなたの解決法は原則的に政府が子供の面倒を見る、ということですよね。
大統領: 我が政権が達成しようとしていることをそう言い表すとは、あまりにひどく、そしていかにもありがちな愚かな解釈法ですな。家族休暇制度、助成金を支給された保育園や幼稚園の助けがあっても子供を育てることが難しい今日この頃、政府の援助は減らすどころか、もっと必要です。
サム(リッチー役): 政府には子供は育てられませんよ、大統領。子育ては親の仕事です。
大統領: 知事、私には娘が三人います。あなたは私に家族の育て方を指示したいんですか? 違和感なくそんなことを指示できるんですか?
ジョシュ: ほら来た。
大統領: アメリカの他の父母に子育ての仕方が間違ってると言いたのかね?
サム: 私はそんなことは…
大統領: 言いたくないだろうね。だったら政府に何ができるか、という話題にしぼろうじゃないか。政府は資金を集め、分配する、という話題にしぼって、家族を感傷的に語って時間を無駄にするのはやめよう。
ラリー: そういう言い方は、まずいですよ。
サム: 今の一言で専業主婦と、そういう妻の尻に敷かれてる夫の票を一気に失いましたよ。

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政府からの援助金を市民に与え、働く女性を保護する法案を作りたい民主党と、女性は母として家に留まり子供と夫の面倒を見ることのみが真の家族の価値を守る方法だ、と考える共和党の戦いです。

リッチー(共和党)の理論「政府には子供は育てられない」というのは、「政府が保育園や幼稚園に援助金を出して保育園/幼稚園の先生が子供を育てる、ということは、つまり専業主婦/専業母が子供を育てないということであり、それは家族の価値を軽んじることだ」という意味なんですよね。


共和党が推す「家族の価値観」を最もよく表しているのは、アメリカン・ファミリー・アソシエーションという団体とフォーカス・オン・ザ・ファミリーという組織です。

前者は、27州で200のラジオ局を所有し、「伝統的な家族の価値」を説く番組を放送しています。

後者は230万人の読者を誇る雑誌(10種類の月刊誌)を出版する他、164カ国で2億2,000万人のリスナーに向けたラジオ番組を放送し、「伝統的な家族の価値」を布教しています。

両者が推奨している「伝統的な家族の価値」とは、
  • キリスト教の価値観に基づいた家族
  • 女性は家で夫と子供の世話をする
  • 家庭で中絶は罪だと教育する
  • 家庭で同性愛は神の敵だと教育する
  • 家庭で婚前交渉は罪だと教育する
  • 家庭で聖書のみが真の教科書だと教える(=学校での教育を否定しホーム・スクーリングを奨励)
というもの。

ホーム・スクーリングとは自宅で親が先生となって様々な教科を教える、というもので、2003年の調査によると110万人の子供たちがホーム・スクーリングを受けていて、そのほぼ半数が宗教的な理由(学校にキリスト教の祈りの時間がない、学校では天地創造説を教えず進化論や地球温暖化を教えていてけしからん)で、ホーム・スクーリングを選んだ、ということなんですよね。

で、アメリカにはホーム・スクーリングを受けた子供たちを受け入れる大学もたくさんあります。

最も有名なのは、パトリック・ヘンリー・カレッジ、リージェント大学(このコラムでも何度かご紹介したテレビ伝道師*脚注1)パット・ロバートソンが創設)、アヴェ・マリア法科大学(ドミノズ・ピザのオーナーで原理主義キリスト教徒のトム・モナハンが5,000万ドル(約60億円)を寄付して設立)。

パトリック・ヘンリー・カレッジとリージェント大学の学生は、在学中は共和党の政治家の事務所でインターンになれるし、卒業後もそのパイプを利用して共和党関連の様々な組織から引く手あまたで、中絶/同性愛の結婚の非合法化、アメリカ神国化のための論理武装を集中的に学んでいるアヴェ・マリア法科大学の卒業生は最高裁や連邦裁判所の右派の判事の事務所への就職が確約されています。

でも、ホーム・スクーリングの後に大学まで行く人は決して多くはないし、こうした大学では視野を広げる教育はいっさい行っていません。そのため、共和党の家族の価値観に従って育てられた子供たちは井の中の蛙状態で一生を終えることが多く、保守的な家庭の子供たちはさらに保守的になる、という悪循環が続くだけなんですよね。


後半は民主党の政策を代弁する、女性活動家エイミーの一言を見てみましょう。

I want women to have help from the government. I want women to earn what men earn. I want everyone to earn enough so that everyone can make the right choice for their family, and after that, it's none of your business who stays home and who goes to work. You don't know more about raising a family than I do.
私は政府に女性たちを援助してほしいし、女性が男性と同じ賃金をもらえるようになってほしいの。みんなが十分な給料をもらえて、それぞれの家族にふさわしい選択ができるようになってほしい。このゴールが達成できた後は、誰が家に留まり、誰が仕事に行くかは個人の自由。子育ては他人が口を出すことじゃないわよ。

アメリカにいると一部を聞いただけで全体像がつかめる台詞回しも、日本にいるとわかりにくいと思いますが、「政府が女性を援助する」、というのは働く女性のための産休/育児休暇/子供が病気になったときの有給休暇の義務づけ、男女同賃金化だけではなく、専業主婦のための扶養手当増加/扶養家族を保険に入れることの義務化、などの包括的な援助のことです。

everyone to earn enoughというのは、最低賃金を上げる/会社が保険を負担する制度を作る/中産階級以下対象の減税(教育費の税金控除も含む)などのこと。

どれも大企業優遇の共和党からは忌み嫌われている案ばかりですよね。

で、家族のあり方や子育てに関しては他人が口出しすべきじゃない、という思想には、「原理主義者たちがホーム・スクーリングをしたいなら、それはそれでいい」という寛容なアプローチも含まれています。

ですから、今回ご紹介した台詞は、民主党と共和党の「家族の価値観」の驚異的な差異を浮き彫りにしてるんですよね。


来週はキリスト教の祈りに関する話題をお送りします。お楽しみに!


脚注
*1.テレビ伝道師 (televangelists)
テレビを通してキリスト教の教えを伝導する人たちのこと。TV説教師 (TV preachers)とも呼ばれる。現在、アメリカで有名なのは、パット・ロバートソン氏、ジェリー・ファルウェル氏、フランク・グラハム氏の3人。パット・ロバートソン氏は、1960年にキリスト教専用のテレビ局CBN (Christian Broadcasting Network)を設立している。

・パット・ロバートソンHP
http://www.patrobertson.com/

・フランク・グラハムHP
http://www.billygraham.org/

・ジェリー・ファルウェルHP
http://www.falwell.com/


関連リンク
アメリカン・ファミリー・アソシエーション
http://www.afa.net/

フォーカス・オン・ザ・ファミリー
http://www.family.org/


ボキャブラリー
moderator:司会者、仲介者
governor:知事
sentimentalize:感傷にふける



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字幕:日本語・英語・日本語吹替え用字幕
音声: 英語・日本語
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