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ネイティブ感覚で観る『ザ・ホワイトハウス』


Updated every Monday, 更新日:4月23日

ジャーナリスト 西森マリー先生

西森先生
西森先生のプロフィール
人気海外ドラマ『ザ・ホワイトハウス』を題材に、アメリカ在住ジャーナリスト、西森マリーさんが英語の台詞とその背景をわかりやすく解説。アメリカの社会背景・文化を知れば英語の台詞もなっとく、楽しみながらアメリカの「今」を学ぼう!


ネイティブ感覚で観る『ザ・ホワイトハウス』 77
オハイオ:最も重要な激戦州
Ohio: The Most Important Swing State
From Season 4 episode 4, "Debate Camp"
 
今週から3回に渡って第4話に関して詳しく説明していきましょう。
今回はオハイオ州について。

まず、ホワイトハウスのスタッフの会話を見てみましょう。 アメリカの地図を前に、それぞれの州をblue(民主党に投票する州)、red(共和党に投票する州)に分けて投票結果の予測をしているシーンです。

Josh: When do you suppose Georgia got so far out of reach? Was it 'cause we... burned it down?
Sam: I was going to say.
Joey: Okay, let's start. I'm taking Ohio out of the red and putting it back in play.
ジョシュ: いったいいつからジョージアは手の届かないところへ行ってしまったんだろう? 僕たちが……焼き払ったからかなぁ。
サム: 今、そう言おうと思ってたところ。
ジョーイ: さぁ、始めましょう。赤(共和党に投票する州)に入れてたオハイオを、まだ戦える州というカテゴリーに戻しましょう。

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ジョージアは、1976年の大統領選ではジョージア出身のジミー・カーター氏が共和党候補に大差をつけて勝っていて、1980年に共和党のレーガンが大差で大統領に選ばれたときもジョージアではカーターに投票しています。

でも、1984年(レーガン)、1988年(親ブッシュ)は共和党がジョージアでも圧勝し、1992年にはクリントン(民主党)が僅差で勝ったものの1996年には共和党候補だったボブ・ドール、2000年にはブッシュが僅差で勝っていて、2004年もブッシュがケリーに5%の差で勝っています。

だから、ジョシュは「ジョージアはいったいいつから民主党にとって手の届かない州になってしまったんだろう?」と問いかけているんですよね。

で、その問いに自分で答えて「僕たち(北東部のリベラルな人間)がジョージアを焼き払ったからかなぁ?」と言ってるんですけど、これは南北戦争の時に北軍がアトランタを焼き払ったことを引き合いに出してちょっとジョークっぽい答えを出してる、ということなんです(北軍は、南軍の武器や装備を壊滅させ、さらに南部の人々に心理的なダメージを与え戦う意欲を消失させるためにアトランタを焼き払った、と言われています。アトランタが焼けるシーンは人種差別を美化した作風で知られるマーガレット・ミッチェル原作の映画『風と共に去りぬ』にも出てきますよね)。

でも、サムも「僕もそう言おうと思ってた」ということなので、実はジョークっぽい答えなんかじゃなくて、ジョージアが共和党を支持する原因はやっぱりred statesblue states赤い州と青い州)の格差は南北戦争にまでさかのぼる、ということなんですよ。

実際、2000年のred statesblue statesの境界線は南北戦争前のslave states(奴隷制度採用州)とfree states(奴隷制度廃止州)の境界線とほぼ同じなので、red statesのメンタリティはslave statesのメンタリティに近いモノがある、ということなのです。


次に、オハイオ州の重要性に関して以前にお話ししたことをふまえて、以下のやりとりを見てみましょう。

Joey: There's no new money to spend on this. We're going to have to move it...
Toby: I'm going to stop you there. Joey, I-I can't go to him with it.
Joey: Let me go to him with it. Let Bruno.
C.J.: No, I'm with Toby. I don't think you understand how the President feels about his home state. He's a New Hampshire Bartlet. It's been home for centuries.
C.J.: He's a Democrat elected to the statehouse with close to 60% and the fact that the state's in play is a real embarrassment for him. He doesn't want to campaign there because that's embarrassing too, but we really can't...
Joey: C.J., I'm trying to tell you it's not in play anymore.
Josh: Joey, no kidding-- if you asked the President which he'd rather win, New Hampshire or the election, he'd have to think before he answered.
ジョーイ: (オハイオでの選挙キャンペーンに)使える予算はもうないから、既存の予算を移さなくちゃならない…(ニュー・ハンプシャー用の予算を移そうとする)
トビー: ちょっと待った。ジョーイ、大統領にそんなことはとても言えない。
ジョーイ: 私が話すわ。ブルーノに話してもらってもいいし。
C.J.: いいえ、私もトビーに賛成よ。大統領が自分の出身州にどれほどの思い入れがあるかあなたは分かってないんじゃないかしら。大統領はニュー・ハンプシャーのバートレットなのよ。先祖代々ずっとニュー・ハンプシャーに住んでるんだから。
C.J.: 彼は民主党でありながら60%近い得票率で(ニューハンプシャー選出の)下院議員に選ばれた人物なんだから。出身州が激戦州だというだけでも彼にとっては恥ずべきことなのよ。地元でキャンペーンをするのも彼には恥ずかしいことだからやりたくないわけだけど、だからといってニュー・ハンプシャー用の予算を移すなんて…
ジョーイ: C.J.、ニュー・ハンプシャーはもう激戦州じゃない(共和党の支配下に落ちた)のよ。
ジョシュ: ジョーイ、マジで言わせてもらうけど、大統領にニュー・ハンプシャーと大統領選とどっちで勝ちたいか、って聞いたら、大統領は答えに躊躇するほど(ニュー・ハンプシャーへの思い入れが強いん)だ。

仮にニュー・ハンプシャーがまだ激戦州だったとしても、ニュー・ハンプシャーの選挙人の数は4で、オハイオは20なので、どっちに予算を投入すべきかは明らかなんですよね*脚注1)

でも、バートレット大統領は先祖代々ニュー・ハンプシャーの名士なので、どうしてもニュー・ハンプシャーは見捨てたくない、というわけなのです。

ニュー・ハンプシャーは歴史的に共和党が強い州で、上院議員も二人とも共和党なので、そういう州で6割近い得票率で民主党の下院議員になれた、というのも、バートレット大統領にとっては大きな誇り、ということなんですよね。

ちなみに、バートレット大統領が地元のニュー・ハンプシャーで勝てない、というプロットは、2000年の大統領選でゴア前副大統領が地元テネシーで負けたことをモチーフにしたものです。


次に、世論調査専門家ジョーイと広報部次長サムの会話を見てみましょう。

Joey: How can I get you onboard with me?
Sam: New Hampshire?
Joey: Yeah.
Sam: By coming out with me.
Joey: On what?
Sam: The President's got to spend a little more time in congressional districts we're not going to win.
Joey: Why would he spend any time in districts...?
Sam: To build Democratic momentum in the very places we traditionally tank. We're running comically weak candidates in these districts. The Tennessee 7th, Horton Wilde in Orange County; he's in the hospital with his fourth heart attack. Who the hell knows when he's going to resume a campaign schedule.
Joey: I can't make a pitch about putting resources in the right places and then advocate sending the President to districts where the last Democrat won by railing against Abraham Lincoln.
Sam: That's a reasonable point.
ジョーイ: どうしたら私の味方になってもらえる?
サム: ニュー・ハンプシャーの件?
ジョーイ: ええ。
サム: 僕に賛成してくれたら君の味方になってあげる。
ジョーイ: 何に関して?
サム: 勝算のない下院選挙区に大統領はもっと時間を割くべきだ、ってことで。
ジョーイ: どうしてそんな選挙区に大統領が時間を割かなきゃならないの?
サム: 僕たちがいつも大敗する地区で民主党に勢いをつけるためだよ。こういう地区で民主党は冗談としか思えないほど弱い候補を立ててる。テネシー7区やオレンジ・カウンティのホートン・ウィリー。ウィリーは4回目の心臓発作で入院中で、いったいいつ選挙キャンペーンを再開できるかも分からない状態なんだ。
ジョーイ: しかるべき場所に選挙資金をあてよう、という説得したいのに、それと同時に民主党が勝ったのはエイブラハム・リンカーンに反対したときが最後だった、という場所に大統領を派遣しよう、なんてことは言えないわ。
サム: 言えてるね。

ジョーイの最後の一言は、今の時点で共和党が圧倒的に強い南部で民主党が強かったのは、奴隷制度があった時代から南北戦争にかけてのみのこと(リンカーンは共和党でした)、という皮肉です。

民主党も共和党も相手の党が圧倒的に強い下院選挙区では対抗馬を立てないことがけっこうあり、2000年の選挙では63の選挙区が一党独裁という状態でした(共和党下院議員候補32名、民主党下院議員候補31名が対抗馬なしで立候補し、当選しました)。

で、この選挙では特にテネシーの2つの選挙区で民主党が対抗馬を擁立しなかったことがニュースになり、「テネシー出身のゴアが大統領に立候補しているというのに、地元の民主党が盛り上がっていない!」と批判されていたんですよね。

結局ゴア前副大統領は地元テネシーで負けてしまい、テネシーの右寄りの民主党員たちから「ゴアは、銃規制/中絶反対派が多い南部の民主党の人々にちゃんと語りかけなかった」と非難され、「Tennessee didn't leave Gore. Gore left Tennessee.(テネシーがゴアを見放したのではなく、ゴアがテネシーを見捨てたのだ)」と言われました。

こうした一連の史実をふまえて見ると、サムの言葉に「共和党の地盤でもあきらめずにもっとまともな候補者を立てて、地道にローカル・レベルから民主党の良さを有権者に知らせる運動をしていかなきゃ、特に南部では大統領選は勝てない」という含意を読み取れますよね。

ちなみに、テネシーもジョージアも現在の上院議員は二人とも共和党です。

番組(2002年10月16日放送)の最後のほうでバートレット大統領は、

we should talk about moving money to Ohio
「資金をオハイオに回す件について話そう」

と言ってくれるんですけど、2004年の大統領選でオハイオが第二のフロリダになったことを思うと*脚注2)、またまたアーロン・ソーキンの先見の明に感動せざるをえませんよね。


来週は、共和党的家族の価値に関する話題をお届けします。お楽しみに!


脚注
*1.選挙人
大統領選で代理選挙をする人のこと。選挙人の数は、各州の有権者数に応じて決められる。各州で勝った党の候補者が、その州のすべての選挙人の票を得ることができるため(メイン州とネブラスカ州を除く)、選挙人の総数が多い州に選挙資金を投じた方が効率がよいということになる。選挙人の仕組みについて詳しくはこちら

*2.フロリダでの大統領選
2000年の大統領選挙で、フロリダ州では、ブッシュ大統領の弟である州知事が黒人の投票権を不当手段で奪ったり、わかりにくい投票用紙のため、大規模な票の数え直しが行われた。2004年の選挙で、オハイオ州では、黒人が多い地区で、投票機の数が減らされたため投票できない人が続出した。オハイオ州の選挙について詳しくはこちら


ボキャブラリー
home state:地元の州
democrat:民主党員
statehouse:州議会議事堂
momentum:勢い



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