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ネイティブ感覚で観る『ザ・ホワイトハウス』


Updated every Monday, 更新日:4月16日

ジャーナリスト 西森マリー先生

西森先生
西森先生のプロフィール
人気海外ドラマ『ザ・ホワイトハウス』を題材に、アメリカ在住ジャーナリスト、西森マリーさんが英語の台詞とその背景をわかりやすく解説。アメリカの社会背景・文化を知れば英語の台詞もなっとく、楽しみながらアメリカの「今」を学ぼう!


ネイティブ感覚で観る『ザ・ホワイトハウス』 76
教会と国家
Church and State
From Season 4 episode 3, "The Red Mass"
 

5回にわたって、エピソード3のバックグランドの解説をお届けしています。


今週は、政教分離に関する話題をお届けしましょう。
まず、大統領の私設秘書チャーリーと、彼が面倒を見ることになった黒人の青年アンソニーのやりとりを見てみましょう。

Anthony: What's Red Mass?
Charlie: I didn't hear you.
Anthony: I said what's Red Mass?
Charlie: The Supreme Court convenes on the first Monday in October. On the Sunday before the first Monday there's a mass held for the members of the Court that's attended by the cabinet, Congress and the President.
Anthony: What about church and state?
Charlie: I swear to God I can't hear you when you speak can you help me out?
Anthony: I said it's church and state.
Charlie: What about it?
Anthony: You're not suppose to do it.
Charlie: Who told you that?
Anthony: I'm talking about the law.
Charlie: What law?
Anthony: All right, you know, you like to slap me 'cause that's your power thing, so I'll sit here and not say nothing... The law-- sepaeration of church and state.
Charlie: Who told you that?
Anthony: You know exactly what I'm talking about. The government and the church are not suppose to do... they're not suppose to be the same thing.
Charlie: And you think there's a law?
Anthony: There is.
Charlie: What kind of law?
Anthony: What the hell.
Charlie: City, state, federal?
Anthony: I don't know about those things but I know there's a law.
Charlie: Prove it.
アンソニー: レッド・マス(赤ミサ)って何?
チャーリー: 聞こえないよ。
アンソニー: 赤ミサって何? って言ったんだよ。
チャーリー: 最高裁が10月の最初の月曜に審理を開く。で、その前の日の日曜に最高裁のメンバーたちのために閣僚、議員、大統領を招いたミサが行われるんだよ。
アンソニー: 教会と国家の関係は?
チャーリー: マジで君の声は小さすぎる。ちゃんと話してくれ。
アンソニー: 教会と国家って言ったんだよ。
チャーリー: それがどうしたんだ?
アンソニー: そんなことしちゃいけないはずだ。
チャーリー: 誰がそんなこと言ったんだ?
アンソニー: 法律があるだろう。
チャーリー: どんな?
アンソニー: もういいよ。俺をたたいて、権力があるってことを見せたいんだろう。俺はここに黙って座ってるよ……あの法律だよ……政教分離ってやつさ。
チャーリー: 誰に教わったんだ?
アンソニー: 俺が言いたいこと分かってるくせに。政府と教会はやっちゃいけないことが…政府と教会は一心同体じゃないってことだよ。
チャーリー: 法律がそう定めてるって思ってるのか?
アンソニー: そうだよ。
チャーリー: どんな法律だ?
アンソニー: 知るか。
チャーリー: 市の条令か、州法か、連邦の法律か?
アンソニー: そんなことは分からないけど、とにかく法律があるってことは知ってる。
チャーリー: 証明してみろ。

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アンソニーとチャーリーのこのやりとり、一見ただの無駄話みたいに見えますが、実は政教分離に関する合衆国憲法補正第一条が明快に解釈できないジレンマをうまく表しているんですよね。


前にも何度か取り上げていますが、the First Amendment(合衆国憲法補正第一条)をもう一度見てみましょう。

Congress shall make no law respecting an establishment of religion, or prohibiting the free exercise thereof; or abridging the freedom of speech, or of the press; or the right of the people peaceably to assemble, and to petition the government for a redress of grievances.
「合衆国議会は、国教樹立に関する法律、宗教の自由を抑圧する法律、言論・出版(報道)の自由を制限する法律、国民が平穏に集会を開く権利、及び苦痛からの救済を政府に請願する権利を制限する法律を作ってはならない」

freedom of religion「宗教の自由」、freedom of speech「言論の自由」、freedom of the press「出版(報道)の自由」、freedom of expression「表現の自由」、freedom of assembly「集会の自由」を保証する項目です。

で、国教樹立に関する法律を作ってはいけない、という部分をほとんどの人は「政教分離を意味する」と解釈しているわけなんですけど、全く別の解釈をしている人もいるんですよねぇ。

そもそもアメリカに最初に移民したイギリス人の多くは、英国国教会による迫害を逃れて宗教の自由を求めて新大陸に渡ったわけですよね。

で、移民の多くはプロテスタントでしたが、カトリックもいたし、プロテスタントの中にもいろいろ宗派があったので、それぞれの宗派のキリスト教徒たちが別の宗派がアメリカの国教になることを恐れていたのです。

だから、アメリカという国を自分が所属している宗派のキリスト教を自由に信仰できる国にしたいと思い、その結果としてアメリカに自分たちの宗派とは違う宗派の国教を作ることを禁じる補正条項を合衆国憲法に付け加えた、ということなんですよ。

つまり、アメリカはそもそもいろんな宗派のキリスト教徒がぞれぞれの宗派のキリスト教を自由に信仰したくて作った国なので、アメリカ建国の大前提としてそもそもキリスト教があったのだから、基本的には合衆国はキリスト教の国である、とも言えるわけなのです。

実際、アメリカ人の中には補正第一条は政教分離を意味しない、と考えている人も少なくないし、共和党の議員の多くはアメリカはキリスト教の国であると断言しています。


こうした現状をふまえて、後半は大統領とチャーリーのやりとりを見てみましょう。

Charlie: You mind if I ask you something about Red Mass I'm curious about?
President: And so how isn't it a Constitutional issue? It is, but sometimes you say, "Big deal."
President: It was the intention not to have a national religion, not to have anyone's religious views imposed on anyone else, and not to have the government encourage a national display of piety as a substitute for real action. But sometimes you say "Big deal." I'll be in the office a minute.
Charlie: Thank you.
チャーリー: 赤ミサに関してちょっとお聞きしたいことがあるのですが。
大統領: どうして違憲じゃないのか、ということだろう? 赤ミサは憲法が絡む問題となる行為だが、(違憲と思われる行動に関して)我々は時として「大騒ぎするほどのことじゃない」と言うわけさ。
大統領: (補正第一条は)国教を設立してはいけない、いかなる人も自分の宗教的意見を他の人に押しつけてはいけない、政府が信仰の象徴としての信心深い行為を奨励してはいけない、という意図だが、「大騒ぎするほどのことじゃない」と言ってすますときもあるんだよ。じゃ執務室で。
チャーリー: ありがとうございます。

バートレット大統領に代表される民主党の人々は補正第一条が政教分離を唱えていると解釈しているわけですが、この大統領の答えからも分かるとおり、政教分離派でさえもどこまでハッキリ分離するかに関してはかなり曖昧であることが分かりますよね。

アメリカの建国の父たちはみな、宗派は違ってもキリスト教徒だったし、今までのところ歴代大統領も全員キリスト教徒。

米国議会図書館には十戒の石版を持ったモーゼの像が設置されているし、最高裁の建物にも十戒を持ったモーゼの姿が刻まれているし、ドル紙幣にはIN GOD WE TRUST(我らは神を信じる)と印刷されているので、やっぱりアメリカはキリスト教という礎の上に建国された、としか思えませんよね(Godは無冠詞で、Gが大文字の時は新旧約聖書の神、という意味です)。

ですから、政教分離に関する補正第一条の解釈は、アメリカの総人口でキリスト教徒が占める割合が50%を割るまではもめ続けることでしょう。


関連リンク
アメリカ政府の建物に飾られているキリスト教関連の像やレリーフを集めた右派(アメリカはキリスト教国だと主張する人々)のサイト
http://www.freerepublic.com/


関連コラム
アメリカの政教分離についてもっと知りたい人は「キリスト教の神の国:アメリカ」


ボキャブラリー
mass:ミサ
supreme court:最高裁判所
cabinet:閣僚
separation of church and state:政教分離



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