Updated every Monday, 更新日:3月26日
ジャーナリスト 西森マリー先生
人気海外ドラマ『ザ・ホワイトハウス』を題材に、アメリカ在住ジャーナリスト、西森マリーさんが英語の台詞とその背景をわかりやすく解説。アメリカの社会背景・文化を知れば英語の台詞もなっとく、楽しみながらアメリカの「今」を学ぼう!
ネイティブ感覚で観る『ザ・ホワイトハウス』 73
第三の候補の善し悪し
Pros and Cons of the Third Candidate
From Season 4 episode 3, "The Red Mass"
先週から5回にわたって、エピソード3のバックグランドの解説をお届けしています。
今週は、第三の候補者の善し悪しに関する話題をお届けしましょう。
まず、バートレット大統領を再選させるため、スタックハウス議員に立候補を辞退するようにと、民主党の要人たちが働きかけるシーンを見てみましょう。
Jackson:
I was very happy that you did not respond on needle exchange.
Stackhouse:
I haven't responded on needle exchange.
Jackson:
And I'm saying I'm happy about that.
Stackhouse:
No, I mean, it's not that I didn't-- It's that I haven't.
Weaver:
Are you going to?
Stackhouse:
I don't know.
Weaver:
Well, what's your thinking?
Susan:
Regarding what, Jason? This doesn't need to be tedious.
Weaver:
It was our understanding that the Senator was going to drop out and campaign for the President sometime before the first debate.
ジャクソン:
注射針交換の話題に反応しないでくれて本当に良かったと思ってるよ。
スタックハウス:
確かに注射針交換の話題に反応してはいない。
ジャクソン:
だから、それで良かった、と言ってるんだよ。
スタックハウス:
いや、反応しなかったんじゃなくて、まだ反応してないだけだ。
ウィーヴァー:
反応するつもりなのか?
スタックハウス:
分からない。
ウィーヴァー:
どうなんだね。
スーザン:
何に関して? ハッキリおっしゃったらいかが。
ウィーヴァー:
一回目のディベートの前に、(スタックハウス)上院議員が出馬を取りやめて大統領のためにキャンペーンをするものだと我々は思っていたんだよ。
大統領選のアクセサリーとして民主党に花を添える、という形での出馬ならスタックハウス民主党上院議員の立候補も許せる、と思っていた民主党の人々が、なかなか降板してくれないスタックハウス議員にいらだっている様子がよく分かりますよね。
民主党要人たちとスタックハウスの会話はさらに続きます。
White:
You didn't get into this to hurt the President, Howard.
Stackhouse:
I got in it to raise issues.
Weaver:
And I'm all for that.
Stackhouse:
As long as I don't in anyway speak.
ホワイト:
君は大統領を不利にするために出馬したわけじゃないだろう。
スタックハウス:
私が出馬したのは問題を提示するためだ。
ウィーヴァー:
その志には賛成だ。
スタックハウス:
私が何の発言もしない限り、ということだろう。
先週ご紹介した やりとりの中で、スタックハウス議員が、
If it was just me, nobody would be listening.
「(注射針交換の話題は)私が話してるだけじゃ誰も聞いてくれない」
と言っている通り、2大政党の有力候補者が話したがらない重要な課題に焦点を当てる、という意味では、第三の候補者の存在はとても有意義なものなんですよね。
民主党は中産階級/貧困層/弱者の味方、という党ではありますが、真の弱者である麻薬中毒者はどれほど尽くしてあげても投票してくれるような人々ではないので、麻薬中毒者のエイズ問題がいかに深刻で、彼らの救済がいかに人道的に必須の急務であろうとバートレット政権にとっては二の次の問題。
しかも、注射針交換のことに触れるとどっちに転んでもカトリックかリベラルを怒らせることになるのですから、この問題はバートレット政権は無視したいわけです。
でも、第三の候補ははなから当選するとは思っていないので、票を得られるかどうかという打算なしに純粋に国家にとって必要な課題を大統領選というスポットライトの当たる舞台で論じることができる、ということなんですよね。
次に、スタックハウスのスタッフとなったエイミーと次席補佐官ジョシュのやりとりを見てみましょう。
Josh:
I've always liked Stackhouse. I'd vote for him too but he's not on the ballot in Connecticut or 22 other states. Perhaps I should vote in New York or California where he's polling at four percent.
Amy:
Of likely voters.
Josh:
I'm sorry?
Amy:
Those polls sample likely voters.
Josh:
Yeah.
Amy:
When a third candidate get elected, it's going to be by unlikely voters.
Josh:
And why is that good? Why are we eager...Why are we encouraging a group of people who are so howl-at-the-moon, lazy-ass stupid that they can't bring themselves to raise their hands? Why is it important that they be brought into the process?
ジョシュ:
僕は前からスタックハウスが好きだった。彼に投票してもいいと思ってるほどだけど、コネチカットでも他の22の州でも彼の名前は投票用紙に載ってない。彼の支持率が4%のニューヨークかカリフォルニアで僕も彼に投票すべきかもね。
エイミー:
投票に行くであろう人々の間での数字に過ぎないわ。
ジョシュ:
えっ?
エイミー:
その支持率は投票に行くであろう人々の間での支持率だ、と言ったの。
ジョシュ:
うん。
エイミー:
ふだんは投票に行かない人たちが選挙に参加して初めて第三の候補者が当選できるのよ。
ジョシュ:
それがどうしていいことなんだ? なんで僕たちは躍起になって…僕たちはなぜ、極端にリベラルな連中や、普段は投票所に脚を運ばない怠惰なアホどもに働きかけなきゃならないんだ? そんな連中を選挙に動員することがどうして重要なんだ?
ジョシュとエイミーの会話はさらに続きます。
Josh:
He's taking the President's votes. It's as simple... He is taking the President's votes.
Amy:
Listen, I'm not indifferent to the situation, but that right there, that's the crazy part of your argument.
Josh:
Why?
Amy:
Those polls sample likely voters.
Josh:
Yeah.
Amy:
They're not his votes.
ジョシュ:
彼(スタックハウス)は大統領の票を奪ってる。ハッキリ言えるだろう…彼は大統領の票を奪ってるんだよ。
エイミー:
私もこういう境遇に陥ったことがあるけど、今の一言は全然論理にかなってないわよ。
ジョシュ:
なぜ?
エイミー:
それ(スタックハウスが獲得するであろう票)は大統領の票じゃないもの。
2000年の大統領選でラルフ・ネイダー(緑の党所属)に投票した人々には、それまでも選挙に行っていた、という人々と、それまでの選挙には行ったことがなかったけど、ネイダーのファンだから今回の選挙には行くことにした、という人々がいたんですよね。
後者はネイダーが立候補しなかったらそれまで通り選挙は無視していた人々です。
一方、前者の多くは「ゴアは民主党とはいえ中道派でリベラル度が足りないので、ネイダーが立候補しなかったら今度の選挙には行かない」と言っていて、「ネイダーがいなかったらゴアに入れた」と言った人はごくわずかだったので、ネイダーがゴアの票を奪った、とは断言できません。
とはいえ、僅差でブッシュが勝った州ではそのごくわずかな票が勝敗の決め手となったのですから、第三の候補者の存在はバカにできないんですよね。
このエピソードが放送されたのは2002年10月9日。
2002年の春から夏にかけてネイダーに投票した人々がブッシュ政権に辟易としてこぞって「私はバカだった」と非を認め、ネイダーのおかげで初めて選挙に参加した若者たちが「打倒ブッシュ!」というゴールのもとに初めて政治に目覚めた時期だったことを思うと、ジョシュとエイミーのこのやりとりをさらに深く味わうことができますよね。
最後にエイミーがバートレット大統領に投票する決意を明らかにするシーンを見てみましょう。
Amy:
I told him I thought he'd been an extraordinary public
servant--thoughtful and energetic and compassionate and courageous, and I told him I'd be voting for the President.
Josh:
Why?
Amy:
First of all, I'm crazy about the President, Josh. I've been crazy about him for longer than you've known who he was. And I'll keep poking him with a stick. That's how I show my love. But... as a women's issue, it's a no-brainer. The next Justice can overturn Roe and... you don't screw around with that.
エイミー:
彼(スタックハウス)にこう言ったの。あなたはエネルギーがあって同情心豊かで勇気のあるすばらしい公務員だと思いますけど、私は大統領に投票します、ってね。
ジョシュ:
どうして?
エイミー:
第一に、私は大統領の大ファンなのよ。あなたが大統領がどんな人かを知るようになるずっと前から、私は彼が大好きだったわ。だから彼に文句を言い続けてるわけ。それが私の愛の示し方なの。でも…女性の権利に関することでは考えるまでもないわよね。次の最高裁判事は中絶を非合法化するかもしれないんだから…そんなリスクを冒すわけにはいかないわ。
共和党のリッチー候補が大統領になり彼の任期中にサンドラ・デイ・オコナー最高裁判事(保守派だけど中絶には賛成)が引退したら、リッチーは中絶反対の最高裁判事を任命して、中絶が非合法化されるから、そんなリスクをおかしてまで第三の候補に投票するわけにはいかない(勝つ可能性の高いバートレット大統領を支持する)、ということなんですよね。
2000年、そしてこのエピソードが放送された2002年10月9日の段階の最高裁の構成は、極右判事3人、保守派1人、保守派だけどリベラルに傾くこともある判事3人、リベラル2人、という構成で、中絶権に関しては賛成5人、反対4人、という状態でした。
でもブッシュ氏は、2005年にロバーツ判事、2006年にアリト判事という極右の判事を最高裁判事に任命し、今の最高裁は極右の判事が4人、保守派が1人、保守系だけど場合によってはリベラルに傾くこともある判事が2人、リベラルな判事が2人、という構成です。
そもそもブッシュ氏の支持基盤である原理主義者たちの一番の目的は「中絶を非合法化してくれる大統領(中絶を禁じる最高裁判事を任命してくれる大統領、という意味)を当選させよう!」ということだったんですよね。ですから、ブッシュ氏がロバーツ判事、アリト判事を任命したときは、原理主義者たちは各地で大規模な祈りの集会を開き、議会が承認するように、と神に祈っていました。
2人とも明らかに中絶反対という意見を持っている人々なので、仮に今の時点で中絶問題を最高裁が扱ったら中絶反対5票、賛成4票で中絶が非合法化されることはほぼ確実です。
にも関わらずブッシュ政権がこの問題を最高裁に送りつけていないのはなぜか。
それは共和党にとって中絶問題は選挙の時に原理主義者たちを確実に投票所へと動員するための最高のエサだからなんですよね。
来週はディベートのあり方に関する話題をお送りします。お楽しみに!
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ボキャブラリー
needle :注射針
senator :上院議員
ballot :票、投票用紙
poll :票
voter :投票者、有権者
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字幕:日本語・英語・日本語吹替え用字幕
音声: 英語・日本語
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