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ネイティブ感覚で観る『ザ・ホワイトハウス』


Updated every Monday, 更新日:2月12日

ジャーナリスト 西森マリー先生

西森先生
西森先生のプロフィール
人気海外ドラマ『ザ・ホワイトハウス』を題材に、アメリカ在住ジャーナリスト、西森マリーさんが英語の台詞とその背景をわかりやすく解説。アメリカの社会背景・文化を知れば英語の台詞もなっとく、楽しみながらアメリカの「今」を学ぼう!


ネイティブ感覚で観る『ザ・ホワイトハウス』 67
冷戦後の脅威
Post-Cold War Threats
From Season 1 episode 5, "The Crackpots and These Women"
 

数回にわたって、これまでお話できていなかったシーズン1の1話〜5話をお届けしています。



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今週はソ連崩壊後の脅威に関する話題をお届けしましょう。
まず、首席補佐官レオが次席補佐官ジョシュをNSC(National Security Council:国家安全保障会議)のレイシーに会わせるシーンから。

レイシーがジョシュにカードを手渡した後のやりとりを見てみましょう。


Josh: What’s the card do?
Lacey: Tells you where to go in the event of a nuclear attack.
Josh: You’re kidding me.
Lacey: Obviously, we want to get everyone up on Air Force One or into one of the underground command centers as quickly as possible.
ジョシュ: 何のためのカードですか?
レイシー: 核攻撃の際にどこへ行くかの指示が書いてあります。
ジョシュ: ご冗談を。
レイシー: みなさんのことをエアー・フォース・ワンか地下司令室にできる限り早く避難させたいですから。

この後、ジョシュは自分のスタッフや広報部次長サム、広報部長トビー、報道官C.J.がカードをもらっていないことを知り大きなショックを受けます。


次に、アヴェ・マリアを聴きながら物思いにふけっているジョシュとC.J.の会話を見てみましょう。

Josh: C.J., an N.S.C. staffer gave me a card with instructions on it for what I’m supposed to do in the event of a nuclear attack. They want me up in the plane or down in a bunker. They don’t want you... or Sam, or Toby, for that matter. I didn’t want to be friends with you and have you not know...
C.J.: Josh, have you been upset about this?
Josh: Yes.
C.J.: You’re very sweet sometimes. You really are.
Josh: C.J...
C.J.: Of course, they don’t want me, Josh. I’m a press secretary. I don’t think they’re gonna be issuing a whole lot of releases. Sam and Toby are communications and my guess is that speech writing won’t be a priority either.
ジョシュ: C.J.、NSCのスタッフが核攻撃の際にどうすべきかの指示を書いたカードを僕にくれたんだ。彼らは、僕は大統領専用機かシェルターにいるべきだと思ってる。サムやトビーはいらない、と思ってるわけだ。このことを君に知らせないままで、君と友達でいることはできないと思って…
C.J.: それで動揺してるの?
ジョシュ: うん。
C.J.: あなたって、時々すごく優しいのね。本当に。
ジョシュ: C.J…
C.J.: 私が必要なわけないでしょう、ジョシュ。私は報道官よ。(核攻撃の際には)報道発表なんかそんなにあるわけないじゃない。サムとトビーは広報で、スピーチを書く仕事も(核攻撃の際に)プライオリティになるとは思えないわよね。

C.J.に事実を提示されて慰めてもらったものの、ジョシュの心は晴れず、ジョシュはアヴェ・マリアに聞き入り、C.J.に「この曲、知ってる?」と言います。

この質問に対するC.J.の答え、

I'm Catholic.
「私はカトリックよ」

は、日本人にはわかりにくいかもしれませんが、アヴェ・マリアとは聖母マリアの祈りのことで、カトリック教徒のみが捧げる祈りなので、「もちろん」という意味なのです。

二人の会話はさらに続きます。

C.J.: Josh, the cold war is over. There’s not gonna be a nuclear...
Josh: God, C.J. It’s not gonna be like that. It’s not gonna be the red phone and nuclear bombs.
C.J.: What’s it gonna be?
Josh: It’s gonna be this. It’s gonna be something like this. Smallpox has been gone for 50 years. No one has an acquired immunity. Flies through the air. You get it... you carry a ten foot cloud around with you. One in three people die.
Josh: If 100 people in New York City got it, you’d have to encircle them with 100 million vaccinated people to contain it. Do you know how many doses of smallpox vaccines exist in the country? Seven. If 100 people in New York City get it, there’s gonna be a global medical emergency that’s gonna make HIV look like cold and flu season. That’s how it’s gonna be, a little test tube with a-a rubber cap that’s deteriorating... A guy steps out of Times Square Station. Pshht... Smashes it on the sidewalk... There is a world war right there.
C.J.: We’ll make more vaccine.
Josh: You better hurry ‘cause I’m the only one with one of these cards.
C.J.: ジョシュ、冷戦は終わったんだからもう核攻撃なんて…
ジョシュ: 違うよ、C.J.、そうじゃないんだ。米ソ・ホットラインとか核爆弾の時代は終わったんだよ。
C.J.: じゃ、どんな脅威が訪れるというの?
ジョシュ: どんな脅威かって、こういう筋書きさ。天然痘は50年前に撲滅された。もう誰も獲得免疫を持ってない。空気伝染で感染したら… あっという間に周囲の人々を感染させてしまい、3人に一人が死ぬんだよ。ニューヨーク市で100人が感染したら、さらなる感染を防止するためには1億個のワクチンが必要だ。アメリカに天然痘のワクチンがいくつあるか知ってる? 7個だよ。
ジョシュ: ニューヨーク市で100人感染したら世界規模の医療危機が起きて、エイズが風邪やインフルエンザ程度のものに思えるだろう。これが今の脅威さ。劣化したゴムが蓋となってる試験管… タイムス・スクエアーの駅から男が降り立ち、試験管を歩道に落として割る… 世界大戦の始まりだ。
C.J.: もっとワクチンを作ればいいわ。
ジョシュ: 早く作らないと。このカードを持ってるのは僕だけなんだから。

天然痘の脅威を描いたこのエピソードが放送されたのは1999年10月20日。

ちょうど、イスラム教過激派のテロが話題になり始めた頃でした。

まず、1995年11月、サウジアラビアのリヤドで、米軍の管理下にあるサウジ国防軍の訓練所にトラック爆弾が突っ込み、アメリカ人5人とインド人2人が死亡。

1998年には、ケニアとタンザニアのアメリカ大使館が爆破され、二つともオサマ・ビン・ラディンの仕業、ということで、1998年11月にはオサマ・ビン・ラディンはFBIの指名手配リストに名を連ねることになりました。

で、このエピソードが放送されてから約1年後、2000年10月12日には米軍駆逐艦コールがイエメン沖で自爆テロの被害に遭っています。

そして、このさらに1年後には米国同時多発テロ9/11が起きて、2001年9月18日には炭疽菌の入った封筒が三大ネットワークの報道局や2人の民主党上院議員のもとへ送られ、5人が死亡し、アメリカ全土が細菌兵器の恐怖を肌で感じるようになりました。

2003年2月、当時の国務長官だったコリン・パウエル氏が国連で「イラクは細菌兵器を持っている」と力説し、イラク侵略戦争の必要性を訴えたことはまだ記憶に新しいところですが、この時コメディアンたちは「なぜブッシュ政権はイラクが細菌兵器を持ってると断言できるか知ってる? フセイン(イラク大統領)に細菌兵器を売りつけたのは、ブッシュのおやじとラムスフェルドだからだよ」

というジョークを連発していました(1985年から89年にかけて、レーガン/おやじブッシュ政権はイラクに細菌兵器を売っていました)。

このアメリカ近代史の流れの中で今回のエピソードを見直すと、またまたアーロン・ソーキンの予言的な脚本に感動せざるをえませんよね。

さて、来週からはシーズン4をお送りします。お楽しみに!


関連リンク
米政権が細菌兵器を売っていたことについての記事
http://www.gwu.edu/
http://www.truthout.org/
http://hnn.us/articles/


ボキャブラリー
cold war :冷戦
crackpot :狂気じみた
nuclear attack :核攻撃
press secretary :報道官
smallpox :天然痘
immunity :免疫
vaccinate :予防接種をする
vaccine :ワクチン
deteriorate :悪化する



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