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ネイティブ感覚で観る『ザ・ホワイトハウス』


Updated every Monday, 更新日:2月5日

ジャーナリスト 西森マリー先生

西森先生
西森先生のプロフィール
人気海外ドラマ『ザ・ホワイトハウス』を題材に、アメリカ在住ジャーナリスト、西森マリーさんが英語の台詞とその背景をわかりやすく解説。アメリカの社会背景・文化を知れば英語の台詞もなっとく、楽しみながらアメリカの「今」を学ぼう!


ネイティブ感覚で観る『ザ・ホワイトハウス』 66
銃規制:舞台裏での取引
Gun Control: Behind-Closed-Doors Deal Making
From Season 1 episode 4, "Five Votes Down"
 

数回にわたって、これまでお話できていなかったシーズン1の1話〜5話をお届けしています。



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今週は銃規制法案を通すための、舞台裏での取引に関する話題をお届けしましょう。

バートレット政権にとって銃規制は一番のプライオリティです。
でも、民主党議員はもちろん、巨額の予算を誇るアメリカ最大級の圧力団体、全米ライフル協会(NRA: National Rifle Association)のバックアップを受けている共和党(上下両院で多数党)の一部の議員からも賛成票が得られないと法案が通らないという状況でした。そのため、包括な銃規制法案は出せず、分解すると金属探知器にひっかからない銃や攻撃用ライフルの一部のみの所持を禁じる折衷的な法案を提案し、やっとのことで可決に必要な票を獲得しました。

ところが、採決の日の寸前に民主党議員6人が反対派に寝返ったことを発見し、彼らの説得工作を強いられることになりました。

首席補佐官レオが、

There’s two things in the world you never want to let people see how you make ‘em: laws and sausages.
「この世の中には作る過程を絶対人に見せたくないものが二つある。法律とソーセージだ」

と言っていますが、これはアメリカでよく言われることなんですよね。


まず、広報部次長サムに「何か見返りをあげないと反対派の民主党議員の意見を変えられない」と言われた次席補佐官ジョシュの一言を見てみましょう。

L.B.J. never would’ve taken this kind of crap from Democrats in Congress. He’d have said, “You’re voting my way, in exchange for which, it is possible that I might remember your name.”
「リンドン・ジョンソンは(自分の党である)民主党の議員になど絶対に振り回されたりしなかったはずだ。彼ならこう言っただろう。『私の言うとおりにしろ。その見返りは、私が君の名前を覚えてやるかもしれない、ということだ』」

リンドン・ジョンソンは、ケネディ大統領の副大統領で、大統領が暗殺された後に大統領になったテキサス出身者。強力なリーダーシップで公民権法や福祉制度などを徹底させたことで知られています。

この後ジョシュは、ハンターの人口が多いウィスコンシン州のキャッツェンモイヤー下院議員に高圧的な態度で臨みます。

Katzenmoyer: You gotta understand the people in my district, Josh.
Josh: Your constituents like the Tech 9 and the Ruger Mini 14, do they? They go quail hunting with an Uzi?
Katzenmoyer: I won with fifty-two percent of the vote. From the moment I’m sworn in I need to raise ten thousand dollars a week just to run a reelection campaign.
Josh: And you’re not doing so well.
Katzenmoyer: Averaging sixty-five hundred. That’s money I can just squeak by with. The NRA makes me a target in the next election. I lose, plain and simple. Ask me two years from now. I’ll be there for you. Josh: Fifty-five thousand more people will be shot and killed with guns two years from now, but that’s very much beside the point.
Josh: Fifty-five thousand more people will be shot and killed with guns two years from now, but that’s very much beside the point.
キャッツェンモイヤー: 私の選挙区の住人のことを考えてほしいね。。
ジョシュ: あなたのところの選挙民は、テック9やルーガー・ミニ14が好きでウズィでウズラ狩りをしてるんですか?
キャッツェンモイヤー: 私は(投票された)票数の52%しか獲得できなかったんだぞ。議員になったその日から再選キャンペーンに備えて週に1万ドル(約122万円)資金を集めなきゃならないんだ。 ジョシュ:それもうまく行ってないんでしょ?
ジョシュ: それもうまく行ってないんでしょ?
キャッツェンモイヤー: 週平均6,500ドル(約79万円)しか集めてないから、やっと切り抜けられる、ということろだ。次の選挙では全米ライフル協会のターゲットにされてる。(この銃規制案に賛成したら)私は負ける、ということだ。2年後に同じ法案が出されたら、賛成票を投じるよ。
ジョシュ: その2年の間にあと5万5千人が(この銃規制が通らなかったために)死ぬことになるわけですが、そんなことはどうでもいい、ってことですね。

テック9とウズィはマシンガン、ルーガー・ミニ14は強力なライフルで、ごく普通のハンティングに使用されるような銃ではありません。

でも、全米ライフル協会は「民主党議員はすべての銃を違法にしようとしているので、民主党に投票するとハンティングができなくなる」という大嘘の選挙CMを大々的に流してハンターを洗脳することがお上手なんですよね。

だから、ハンターの多い州の民主党議員は銃規制の話題にはふれたくないのです。

再選のことしか頭にないキャッツェンモイヤーに、ジョシュは「この法案に賛成しなかったら、次の選挙で、民主党内の予備選の段階でホワイトハウスが他の候補者を推す」と言い、ほとんど脅しのような手を使ってキャッツェンモイヤー議員を賛成派に改心させます。

この後、ジョシュは新米議員のウィックと会い、彼が反対に回った理由が「ホワイトハウスの注意を引きつけて、大統領と記念写真を撮りたかったから」であることを知り、大統領とチェスをしながら写真を撮らせてあげる、という交換条件でウィックの票も獲得します。

 
一方、レオは、「この銃規制案は甘すぎる」という黒人のリチャードソン議員を説得しようとしています。


Leo: We have to do this inch by inch. You know how this works.
Richardson: No, I know how you guys work.
Leo: That is out of line, Congressman. Guns are number one on my list of priorities and I’ve never moved the President off of that.
Richardson: Keeping the White House strong is number one on your list of priorities.
Leo: If the White House isn’t strong, it doesn’t really matter what number two on my list is. God, Mark. The bodies being wheeled into the emergency room are black. These guns aren’t going to Scottsdale, Mark, they’re going to Detroit, they’re going to Philadelphia.
レオ: 徐々にやるしかないんだ。法案の通し方は君も分かってるはずだろう。
リチャードソン: いや、知らんね。でも、あんたらのやり方は分かってる。
レオ: それは言い過ぎだ。銃規制は我々にとって一番のプライオリティで、私は大統領の注意をこの問題からそらさせようとしたことは一度もない。
リチャードソン: あんたの一番のプライオリティはホワイトハウスを弱体化させないことだろう。
レオ: ホワイトハウスが弱体化したらプライオリティなど関係なく我々は何もできなくなってしまう。(銃で撃たれて)救急病院に運ばれてくるのは黒人なんだぞ。(我々が規制しようとしている)銃はスコッツデールじゃなくてデトロイトやフィラデルフィアで売られるんだ。

デトロイトの黒人の比率は約82%、フィラデルフィアは43.2%で、スコッツデールはサンフランシスコ・ジャイアンツが春のトレーニングをする場所としても有名なアリゾナのリゾート地で白人の比率は92%、黒人の比率は1.3%です。

ですから、レオは、黒人であるリチャードソン議員に、「君は黒人として同胞を銃の被害から守る義務がある」と説得しているわけです。

でも、もっと厳しい銃規制を要求しているリチャードソンは妥協的な法案に賛成することこそが黒人に対する裏切り行為だと思っているため、意見を曲げません。

レオとリチャードソンの対立は、本当は包括的な銃規制をしたいのに、現実にはそれができないホワイトハウスのジレンマをうまく表現していますよね。


最後は、テキサス州出身の副大統領ホインズが、同郷の下院議員ティリングハウスを説得するシーンを見てみましょう。

法案に賛成しろ、というホインズに対し、ティリングハウスはこう言っています。


And as long as they’ve got a gun, I want my wife to have a gun, I want my daughter to have a gun, and damn it, I want one too.
「彼ら(悪者たち)が銃を持ってる限り、わしは妻にも娘にも銃を持ってもらいたいし、言っとくがわしだって銃を持ちたい」

結局ホインズは、自分が次期大統領になったら借りを返す、という条件で、ティリングハウスの賛同を得ることができますが、この台詞はテキサスなどの南部では民主党議員といえども銃規制に反対している、という事実と、反対する理由を端的に物語っている一言なんですよね。

何年か前、銃所持反対で有名なアメリカの女優/コメディアン、ロージー・オドネルのボディガードが銃を持っていたことが大きな話題になったんですけど、「悪者が銃を持っている限り、それに対抗するために自分も銃を持つしかない」というのは多くの人にとっての本音なのです。

ホワイトハウスのスタッフが飴とムチを使い分けたり、裏取引をしたりする、という法案成立の舞台裏は政治ドラマの醍醐味ですよね。

ちなみに、全米ライフル協会のお気に入りであるブッシュ政権は、銃規制とは全く逆の銃業界保護法(銃犯罪の被害者が銃製造会社や銃販売者を訴えることを禁じた法律)を通過させています。

バートレット政権とブッシュ政権って、あらゆる面で好対照ですよね!

来週は冷戦後の脅威に関する話題をお届けします。お楽しみに!


関連リンク
ロージー・オドネルのプロフィール(Yahoo!映画)


過去のコラム
銃規制についてもっと知りたい人は「アメリカの銃規制」


ボキャブラリー
gun control :銃規制
democrat :民主党員
congress :議会
district :選挙区、地区
constituent :有権者、選挙区民
quail :ウズラ
inch by inch :少しずつ



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字幕:日本語・英語・日本語吹替え用字幕
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