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ネイティブ感覚で観る『ザ・ホワイトハウス』


Updated every Monday, 更新日:1月29日

ジャーナリスト 西森マリー先生

西森先生
西森先生のプロフィール
人気海外ドラマ『ザ・ホワイトハウス』を題材に、アメリカ在住ジャーナリスト、西森マリーさんが英語の台詞とその背景をわかりやすく解説。アメリカの社会背景・文化を知れば英語の台詞もなっとく、楽しみながらアメリカの「今」を学ぼう!


ネイティブ感覚で観る『ザ・ホワイトハウス』 64
正しいことを行う勇気
Courage To Do The Right Thing
From Season 1 episode 3, "A Proportional Response"
 

数回にわたって、これまでお話できていなかったシーズン1の1話〜5話をお届けしています。



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第3話では、PR的に都合のいいことや感情的にスッキリすることと、正しいこととの違いが劇的に描写されています。

まず、ルインスキー・スキャンダルの余韻が残っていた1999年10月6日に放送されたこのエピソードから報道官C.J.と次席補佐官ジョシュのやりとりを見てみましょう。

広報部次長サムがコール・ガールと寝たことを知ったC.J.がジョシュに怒りをぶちまけるシーンです。

C.J.: Do you have any idea how serious this is?
Josh: See, the thing is, I really don’t think it is that serious.
C.J.: Really?
Josh: A couple of things for you to bear in mind: First of all, he didn’t know that she was a call girl when he slept with her. He did not pay her money. He didn’t participate in, have knowledge of; or witness anything illegal. Or for that matter, unethical, immoral or suspect.
C.J.: Okay. A couple of things for you to bear in mind: none of that matters on Hard Copy!
C.J.: これがどれほどシリアスな問題だか分かってるの?
ジョシュ: あのさ、実を言うと、僕はそれほどシリアスじゃないと思うんだ。
C.J.: マジ?
ジョシュ: 忘れてほしくないことがいくつかある。まず、サムは彼女と寝た時点では彼女がコール・ガールだとは知らなかった。彼は彼女にカネをはらってはいないし、違法な行為、それどころか非倫理的、非道徳的、あるいはいかがわしい行為にすら荷担してもいなければ、認知も目撃もしていない。
C.J.: あら、そう。あなたこそ忘れないでちょうだい。そんなことはハード・コピーでは全く無視される、ってことをね。

ハード・コピーは1989年から1999年まで放送されていたスキャンダル専門の情報番組で、事実を無視したセンセーショナルな話題作りで有名でした。


次に、「仕事とプライベートは無関係だし、僕と会ったことで彼女はコール・ガールをやめて将来もっと偉大な人物になるかもしれない」と主張するサムとC.J.のやりとりを見てみましょう。

C.J.: I don’t care what it is, I care what it looks like.
Sam: And I care what it is! And I think it’s high time we all spend a little less time looking good, and a little more time...
C.J.: ...a little more time being good?
C.J.: 事実がどうかなんて私にはどうでもいいの。どう見えるかが問題なのよ。
サム: 僕にとって重要なのは事実だ。そろそろ体裁を保つことに時間を割くより…
C.J.: 善行を施すことに割く時間を増やす時期じゃないか、って言いたいわけ?

学費を稼ぐためにコール・ガールをしている女性を一個の人間として認め、対等につき合う、というのが理想主義的なサムの主張。この考え方を曲げようとしないサムのことを、結局はC.J.もかばうことになり、バートレット政権のスタッフが正しいことをする勇気を持ち合わせていることが明らかになります。

このエピソードの放送日は1999年10月6日。ちょうどアメリカ中がモニカ・ルインスキー・スキャンダルに翻弄されて、共和党員たちが自分の不倫を棚に上げてクリントン大統領を執拗に攻撃し、クリントン政権が社会保障制度や保険制度の改革、貧民救済などの本当の問題に取り組めなくなってしまった時期でした。

ですから、このエピソードには、「メディアも政権も政治家のプライベートを暴くより政治手腕や政策に重点を置くべき」というメッセージが込められていたんですよね。


次は、次席補佐官ジョシュが大統領のパーソナル・アシスタントとして雇いたいチャーリーに関して首席補佐官レオと話をするシーンを見てみましょう。

Josh: I really like him Leo. I want to hire him.
Leo: What’s the problem?
Josh: He’s black.
Leo: So’s the Attorney General and Chairman of the Joint Chiefs?
Josh: They don’t hold the door open for the President.
Leo: What are you worried...?
Josh: I’m not wild about the visual. A young black man holding his overnight bag?
Leo: Josh, I hold the door open for the President, it’s an honor. This is serious business. This isn’t casting. We get the guy for the job and we take it from there.
ジョシュ: 彼のこと僕はすごく気に入ったんで、雇いたいんだけど。
レオ: 何か問題でも?
ジョシュ: 黒人なんだ。
レオ: 司法長官も総合参謀本部議長も黒人だ。
ジョシュ: 彼らは大統領のためにドアを開けたりしないだろう。
レオ: 何を心配してるんだね?
ジョシュ: 絵的にまずいんじゃないかと思って。若い黒人男性が大統領(白人のご主人様)の旅行鞄を持つ、って、どうかなぁ。
レオ: 私も大統領のためにドアを開けるぞ。名誉なことだ。これはシリアスなことで、キャスティングじゃない。まず、その人物を雇って、後のことはそれからだ。

This is serious business. This isn't casting.というのは、「政治の世界でのこういう仕事はシリアスなこと(serious business)で、芸能界のキャスティング(show business)とは違う」というニュアンスです。

黒人の鞄持ちを雇うと奴隷時代を連想させるのでは、と恐れるジョシュに、この後レオは、

And I’m fairly sure I’m right about this.
「これが正しい方策だと私はかなり自信がある」

とは言ったものの、やはりちょっと心配なんですよね。

そのため、黒人の総合参謀本部議長フィッツウォレスとシリアに対する報復(大統領の主治医が乗った軍用機が、シリア上空でテロに遭ったため)に関する話をした後、彼に意見を求めています。


Leo: The President’s personal aide, they’re looking at a kid. Do you have any problem with a young black man waiting on the President?
Fitzwallace: I’m an old black man and I wait on the President.
Leo: The kid’s gotta carry his bags...
Fitzwallace: You gonna pay him a decent wage?
Leo: Yeah.
Fitzwallace: You gonna treat him with respect in the workplace?
Leo: Yeah.
Fitzwallace: Then why the hell should I care?
Leo: That’s what I thought.
Fitzwallace: I’ve got some real honest to God battles to fight Leo. I don’t have time for the cosmetic ones.
レオ: 大統領の個人秘書として雇うとしてる青年がいるんだけど、若い黒人が大統領に仕えることに関して、君は抵抗があるかい?
フィッツウォレス: 僕は年取った黒人で、大統領に仕えているよ。
レオ: 彼は大統領のバッグを持たなくちゃならない。
フィッツウォレス: ちゃんとした給料を払うんだろう?
レオ: あぁ。
フィッツウォレス: 職場で彼に敬意を持って対応するんだろう?
レオ: そうだ。
フィッツウォレス: だったら僕には何も言うことはない。
レオ: だと思ったよ。
フィッツウォレス: レオ、僕は真に重要な戦争をしなきゃならないんだぞ。体裁をつくろうことなどに関わってるヒマなんかない。

フィッツウォレスの最後の一言が、事の核心や実務の内容よりも体裁に気をとられることの愚かしさを鋭く指摘していますよね。


最後に、大統領が、「ローマ帝国では、ローマ市民は帝国内をどこでも安全に旅することができた。ローマ市民を傷つけたらひどい報復を受けると誰もが知ってから」と言い、シリアに徹底的に報復したいという本心をレオにもらした後のレオの台詞を見てみましょう(最初のコラムでも一部をご紹介していますが、今回は全部ご紹介しましょう)。

レオは大統領を叱るようにこう言っています。


Oh, then you are just as stupid as these guys who think capital punishment is going to be a deterrent for drug kingpins. As if drug kingpins didn't live their day to day lives under the possibility of execution, and their executions are a lot less dainty than ours and tend to take place without the bother and expense of due process.
「あぁ、それじゃあなたは麻薬王たちを死刑にすることが抑止力になると思ってるバカと変わらない。麻薬王たちは死と隣り合わせの毎日を送っているんだから、死刑が抑止力になるはずがないでしょう。それに、麻薬組織の処刑は我々の死刑より卑劣で、法の手続きなんぞを経たものじゃないですからね。
So, my friend, if you want to start using American military strength as the arm of the Lord, you can do that. We're the only superpower left. You can conquer the world, like Charlemagne! But you better be prepared to kill everyone. And you better start with me, because I will raise up an army against you and I will beat you!
ですから、我が友よ、米軍の兵力を神の力として行使したいのなら、そうするがいい。(ソ連崩壊後)もうアメリカ以外に超大国は存在しなんだから。シャーラメーンさながらに世界を制覇すりゃいいでしょう! でも、皆殺しにする覚悟でいなきゃダメですよ。で、まず私を殺す覚悟でいてください。私は兵を挙げてあなたに戦いを挑み、あなたを打ち負かしてやりますから!」

シャーラメーンは、8世紀後期にキリスト教の名の下にヨーロッパの大半を制覇したフランク族の王で、一日でキリスト教改宗を拒否した4,500人のサクソン人の首をはねたことで知られています。

「軍事攻撃は抑止力にはならず、新たなる戦争を招くだけ」というレオの一言は、ブッシュ政権がキリスト教の名のもとに起こしたイラク侵略戦争が泥沼化している今聞くと、さらに感慨深いですよね。

来週は法案成立までの駆け引きに関する話題をお届けします。お楽しみに!


ボキャブラリー
proportional :比例の
witness :目撃する
unethical :非道徳的な
attorney general :司法長官
overnight bag :旅行かばん
aide :助手、側近、補佐官
decent :適正な、きちんとした
wage :給料
deterrent :抑止力
kingpin :中心人物
execution :死刑執行、処刑



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