Updated every Monday, 更新日:11月27日
ジャーナリスト 西森マリー先生
人気海外ドラマ『ザ・ホワイトハウス』を題材に、アメリカ在住ジャーナリスト、西森マリーさんが英語の台詞とその背景をわかりやすく解説。アメリカの社会背景・文化を知れば英語の台詞もなっとく、楽しみながらアメリカの「今」を学ぼう!
ネイティブ感覚で観る『ザ・ホワイトハウス』 58
誰が南部で勝てるのか?
Who Can Win The South?
From Season 3 episode 17, "Stirred"
今週は、州ごとに選挙人を選ぶ、という特殊なシステムをとっている大統領選ならではの、民主党の悩みに関する話題をお届けしましょう。
選挙人による間接選挙では、有権者の総得票数では勝っても、選挙人の数では負ける(* 作者注1) 、ということもあり得るので、両党とも早いうちからどの州をどういう方法で勝ち取るかカスタマイズされた戦術を展開していきます。
民主党は都心部では強いのですが、キリスト教原理主義者、銃規制反対派の多い南部や中西部では非常に弱い。
でも、南部で唯一民主党に勝算がある州があります。
それはフロリダ州。
フロリダには東海岸北部やシカゴなどの都会人が老後を過ごす場所として好まれているので、他の南部の州と比べると都会型の思考の人々が多いんですよね。
しかも、フロリダの選挙人(大統領選で代理選挙をする人)の数は2000年は25人、2004年は27人と、南部/中西部の州の中で2番目に多いので、民主党にとっては非常に大切な州なのです。
(南部、中西部で選挙人が一番多いのはテキサスで、2000年は32人、2004年は34人)
これをふまえて、ホワイトハウスのスタッフたちの会話を見てみましょう。
共和党の大統領候補リッチーがフロリダ州知事なので、フロリダで勝てる見込みはないため、バートレット再選のために雇われた専門家たちは南部で勝てる人材を副大統領に据えようと画策しています(現副大統領はテキサス出身ですが、最初の大統領選でテキサスでは共和党候補が勝っています)。
Toby:
The Northeast, the Pacific coast and the industrial Northwest.
Josh:
Yeah. If we don't have Florida and Texas it'd mean we'd have to sweep those three.
Josh:
Yeah.
Man 1:
And he thinks Hoynes hurts us there?
Josh:
He thinks someone else could help us more.
C.J.:
Did he say who?
Josh:
Yes.
C.J.:
Who?
Josh:
Fitzwallace. He said Fitzwallace, Toby. And you think about it...
Toby:
Yeah.
トビー:
北東部と太平洋に面した州と北西部の工業地帯。
ジョシュ:
フロリダとテキサスで勝てない場合は、この3つの地区の州全てで勝たなきゃならない。
ジョシュ:
そうだ。
男1:
この3つの地区でホインズ(現副大統領)は我々の足を引っ張ると彼(専門家ブルーノ)は思ってるんですか?
ジョシュ:
彼は、他の人材のほうが助けになると思ってる。
C.J.:
名前を挙げた?
ジョシュ:
うん。
C.J.:
誰?
ジョシュ:
フィッツウォレスだ。トビー、ブルーノはフィッツウォレスがいいと言ってた。考えてみよう…
トビー:
そうだね。
この後、スタッフたちは黒人の将軍であるフィッツウォレスに関して会話を続けます。
Man 2:
Decorated in Vietnam, defense hawk...
Man 1:
There'd be astronomical black turnout in Georgia, North Carolina, and Louisiana.
Man 2:
All of a sudden the South is on the table.
Toby:
Does anyone even know if he's a Democrat?
Josh:
He would be now.
Man 2:
Certainly no Republican would criticize him.
Josh:
These guys are right. Black turnout would explode, we'd realign the country.
C.J.:
That's assuming it stays a two-man race.
Josh:
Who's going to get into it this late?
Toby:
John Hoynes.
Josh:
Hoynes, as... an Independent?
男2:
ベトナム戦争で勲章をもらった国防面でのタカ派。
男1:
ジョージア、ノース・キャロライナ、ルイジアナで黒人の投票率が桁外れに伸びるだろうね。
男2:
いきなり南部でも勝算が見込めるようになる。
トビー:
彼が民主党かどうかさえ分かってないんだろう?
ジョシュ:
(以前は共和党だったとしても、既に大統領の資質を認めたので)もう民主党になってるさ。
男2:
共和党も彼のことは批判できないはず。
ジョシュ:/td>
彼らの言う通り。黒人の投票率が爆発的に増してアメリカ(のred statesとblue states の位置)を再編成できるだろう。
C.J.:
2党間の選挙だとした場合はね。
ジョシュ:
誰が今更(既にキャンペーンが始まった時点で)立候補すると言うんだ?
トビー:
ジョン・ホインズ。
ジョシュ:
ホインズ…無党派としてかぁ。
ジョシュはこの後も、
Wondering if Fitzwallace is a Democrat or a Republican.
「フィッツウォレスは民主党かなぁ、それとも共和党だろうか」
と言っていますが、フィッツウォレスのモデルになっているのは当時のブッシュ政権の国務長官だったコリン・パウエル氏です。
パウエル氏はベトナム戦争で戦ったこともある軍人で、レーガン政権では国家安全保障担当補佐官、親ブッシュ政権では統合参謀本部長となり湾岸戦争の指揮をとりました。
アメリカでは現役の軍人は党派を明らかにしないことが多いのですが、軍人は共和党、というステレオタイプがあるんですよね。
でも、パウエル氏は黒人なので(黒人は圧倒的に民主党が多い)、1993年に退役した直後は「民主党の政治家になって、議員に立候補するかもしれない」と噂されていました。
結局パウエル氏は共和党派であることが判明し、極右政策を推進する子ブッシュ政権の国務長官になりましたが、その後もしばらくの間は民主党、及び黒人からも比較的高い支持を受けていたのです(2003年のイラク侵略戦争以降、民主党/黒人からの支持率は急落しましたが、このエピソードが放送されたのは 2002年4月3日なので、まだ人気があった時期です)。
南部の州、というのは、ふつうバージニア、ノース・カロライナ、サウス・カロライナ、ジョージア、フロリダ、ケンタッキー、テネシー、アラバマ、ミシシッピー、アーカンソー、ルイジアナのことで、この中で特に黒人が多いのはルイジアナ(州人口の32.9%)、ミシシッピー(36.7%)、アラバマ(26.3%)、ジョージア(29.4%)、ノース・カロライナ(22.2%)、サウス・カロライナ(30%)です。
でも、ジョージア、ノース・カロライナ、ルイジアナのみが話題になっているのは、これらの州が他の南部の州と比べると民主党派が比較的多いからなんですよね。
男2の「Certainly 〜him. 」という一言は、軍人を副大統領候補に据えれば共和党が「民主党は国防面で弱い」というステレオタイプを悪用して文句を言うこともできない、ということです。
現副大統領のホインズ氏が無党派として出馬する恐れがある、というのは、2000年の大統領選で無党派として立候補したラルフ・ネイダー氏がゴア氏の票を食ってしまったことを皮肉ったものです。
スタッフたちの会話の続きを見てみましょう。
Man 2:
No one knew if Eisenhower was a Democrat or a Republican before he ran.
Man 1:
Grant only voted once in his life, and it was for the other guys.
C.J.:
Grant works as an example in almost any situation. That's Grant's legacy.
Toby:
Plus he won the Civil War.
男2:
アイゼンハウワーが民主党か共和党かは、彼が大統領に立候補するまで誰も知らなかった。
男1:
グラントは一度しか投票したことがなくて、しかも(自分が支持する政党とは)敵対する政党に投票した。
C.J.:
グラントはどんな状況でもいい例になるのよね。それがグラントの遺産だわね。
トビー:
それに彼は南北戦争で勝った。
アイゼンハウワーは第二次世界大戦中に活躍した軍人で、その後共和党の政治家となり1956年から1961年まで大統領を務めました。
男1のコメントは、過去の投票経歴からでは民主党か共和党かは分からない、という意味です。
グラントとは南北戦争中にリンカーン大統領に大抜擢されて活躍した軍人ユリシーズ・グラントのことで、彼はその後共和党の政治家に転身し、1869年から1877年まで大統領を務めました。
南部を征服した将軍として名高いので、南部で勝ちたいバートレット政権のスタッフたちが求めている人材の象徴、というわけなのです。
グラントは、包括的な戦術を使った最初の将軍で、初めて国立公園を制定した人物でもあり、また大統領の座を退いた後に破産し、その後書いたメモワールがマーク・トウェインの口添えのおかげで爆発的なセールスになった、など、おもしろい逸話をたくさん持っている人物です。
だから報道官C.J. が「グラントはどんな状況でもいい例として使える」と言ってるんですよね。
この後、C.J. はグラントに関してこう言っています。
They went to Lincoln. They said, "Grant's a drunk". He said, "Send all my generals a case of whatever he's drinking".
「彼ら(リンカーン政権の人々)がリンカーンのところに行って、『グラントは酔っぱらいだ』と言ったら、リンカーンはこう言ったのよね。『彼が飲んでる酒を他の将軍たち全員に送れ』」(* 作者注2)
つまり、グラントと同じお酒を飲めば、他の将軍たちもグラントみたいに勇ましく闘えるだろう、ということです。
酒飲みが豪快で男らしいと思われていた昔のアメリカと、酒飲み=アル中=精神的弱さの象徴、と見なされる今のアメリカの違いを物語る印象深い台詞ですよね。
『ザ・ホワイトハウス』の台詞って、一見ストーリーの本筋とは関係ない無駄話のように見えるものにも深い意味が込められているので、どの台詞も聞き逃せませんよね!
来週は言論の自由に関する話題をお届けします。お楽しみに!
作者注1:
2000年の大統領選では、総得票数ではゴア氏が約55万票の差をつけて勝ったものの、ブッシュ氏の弟が州知事をつとめるフロリダ州の票がフェアとは思えない手続きの結果ブッシュ氏に流れたため、州ごとの選挙人の数ではブッシュ氏が勝ちました(その後、様々な機関が行った調査により、フロリダ州で問題になった地区の票を全て数え直していたらゴア氏が勝っていたことが分かりましたが、後の祭りでした)。
作者注2:
実際にリンカーンが言った一言
Find out what whiskey he drinks and send all of my generals a case, if it will get the same results.
「(グラントと同じ酒を飲めば)グラントと同じ結果が出せるのであれば、彼(グラント)がどんなウィスキーを飲んでいるのかつきとめて、我が軍の将軍たち全員に同じ酒を一箱送ろうじゃないか」
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