Updated every Monday, 更新日:10月23日
ジャーナリスト 西森マリー先生
人気海外ドラマ『ザ・ホワイトハウス』を題材に、アメリカ在住ジャーナリスト、西森マリーさんが英語の台詞とその背景をわかりやすく解説。アメリカの社会背景・文化を知れば英語の台詞もなっとく、楽しみながらアメリカの「今」を学ぼう!
ネイティブ感覚で観る『ザ・ホワイトハウス』 53
ビエケス島での爆撃演習
Bombing Exercise on Vieques
From Season 3 episode 12, "The Two Bartlets"
今週は、プエルトリコのビエケス島での米海軍爆撃演習に関する話題をお届けしましょう。
まず、アメリカで2002年1月30日に放送されたこのエピソードを理解するための基礎知識を。
プエルトリコは、1493年にコロンブスによって『発見』され、16世紀にスペインの植民地になりましたが、1898年のアメリカ・スペイン戦争でアメリカが勝ち、プエルトリコはアメリカ領になりました。
その結果、プエルトリコ人は合衆国市民権を与えられ、下院議員を選出して連邦政府下院に送っているのですが、この議員は下院での投票権は与えられていません。
で、合衆国軍部が1940年代にビエケス島の6割を買い取り、爆撃演習場として使い、NATO 軍にも爆撃演習場として貸し出していました。
爆撃演習は危険だし、米軍所有地には劣化ウランをはじめとする様々な有害物資の含まれる兵器が貯蔵されていたため、住民からの苦情が絶えなかったのですが、アメリカ本土には彼らの声は届かずにいました。
でも、1999年に標的のそれた爆弾のせいで住民の一人が死亡したことをきっかけに、演習阻止運動が一気に勢いを得て、プエルトリコ出身の有名人、環境/人権保護派の著名人がこの運動に参加したことにより、アメリカのメディアで大きなニュースとして扱われるようになったのです。
環境保護、人権保護に力を入れているクリントン政権はビエケスでの演習を中止したかったのですが、軍部と軍需産業の後押しを受けた多数党である共和党からの圧力に勝てず、決定的な措置をとれずにいました。
2000年に軍需業界と太いパイプを持つブッシュ/チェイニーが政権を取った後は、この運動にさらに拍車がかかり、ヒラリー・クリントン上院議員やダライ・ラマ、マーティン・シーン(バートレット大統領!!)もこの運動に参加。
2001年4月26日にはプエルトリコ出身の有名人、マーク・アンソニー(ジェニファー・ロペスの夫)、リッキー・マーティン、ベニシオ・デル・トーロ(映画『トラフィック』で2001年度のアカデミー賞助演男優賞受賞)がニューヨーク・タイムス紙、ワシントン・ポスト紙に連名で、PRESIDENT BUSH WE ASK YOU TO STOP THE BOMBING OF VIEQUES NOW! 「ブッシュ大統領 ビエケス爆撃を直ちに止めてください!」という一面広告を掲載。
その数日後にはビエケス島の爆撃演習場に入り込んで人の盾となり演習を阻止していた人々が投獄され、その中に人権・環境保護の弁護士として名高いロバート・ケネディJrや人道主義の活動家でユニセフの親善大使としても知られている俳優のエドワード・ジェイムズ・オルモス(シーズン1の第9話と第15 話で人権派の最高裁判事候補を演じています)がいたことで、メディアでの注目度がさらに高まりました。
このバックグラウンドをふまえて首席補佐官レオと次席補佐官ジョシュの会話を見てみましょう。
Leo:
So some 40 protesters have planted themselves in a live target range.
Josh:
I don’t...I’m sorry. Why am I...? This is national security.
Leo:
One of the protesters, in fact, the leader, apparently, is a friend of yours.
Josh:
Billy
Leo:
Yeah.
Josh:
Arrest them. It’s what he’s waiting for you to do.
Leo:
This is a well-known actor. This well-loved young man in the Hispanic community. He’s with other well-loved men in the Hispanic community.
Josh:
Wait them out.
Leo:
They’ve got supplies, and we don’t have the time. He’s got a cell phone, and we’ve got the number.
Josh:
No.
Leo:
Yeah.
Josh:
Leo, if I wasn’t working here, I’d probably be with them down there.
Leo:
Yeah, but you’re working here.
レオ:
(ビエケス島で)40人ほどの抗議運動家たちが実弾演習場に居座ってる。
ジョシュ:
それが…失礼、なんで僕なんですか? 国家安全は僕の管轄じゃないですよ。
レオ:
抗議運動家たちの一人、というか、リーダーが君の友だちなんだよ。
ジョシュ:
ビリーですね。
レオ:
そうだ。
ジョシュ:
みんな逮捕すればいいでしょう。彼らはそれを望んでるんだから。
レオ:
彼は著名な俳優だ。ヒスパニックのコミュニティーで愛されているこの若者が、ヒスパニックのコミュニティーで愛されている有名人たちと一緒にいるんだぞ。
ジョシュ:
彼らが立ち去るまで待てばいいでしょう。
レオ:
彼らは食料などを備えているし、(戦艦は爆撃演習をしないと出航できないので)待ってる時間なんかない。彼は携帯電話を持っていて、我々は彼の電話番号を知ってる。
ジョシュ:
(彼に電話する役は)お断りします。
レオ:
引き受けろ。
ジョシュ:
レオ、僕はもしここで働いてなかったら、彼らと一緒にビエケス島で抗議運動をしていたでしょう。
レオ:
だろうね。でも、君はここで働いているんだ。
クリントン大統領の任期が切れたとたんに、ヒラリー・クリントン上院議員が待ってましたとばかりに爆撃演習阻止を声高に叫び始めた経緯を知っていると、ジョシュのジレンマをより深く同情することができますよね。
ジョシュはビリーに電話をかけるのですが、バッテリーが切れて電話が通じなくなってしまいます。
ビリーが充電して電話での会話が再開するまでの間、国防省の人間と思われる人物がジョシュに「もっと強い口調で説得して欲しい」と注文を出します。
彼にこう言われた後の二人のやりとりを見てみましょう。
Josh:
This isn’t a hostage situation. It’s a legitimate protest.
Official:
One where...
Josh:
You’re free... excuse me, sir... you’re free to arrest them or shoot them, but we won’t because it’s bad politics. Let’s just remember what the thing is here.
Official:
This is not the time for people to be protesting.
Josh:
Puerto Rico lived under Spain for four centuries, under the U.S. for one. In 500 years, it hasn’t determined its own destiny for five minutes. They’re using depleted uranium shells--
Official:
A lecture about...
Josh:
--napalm, cluster bombs. Vieques has a cancer rate 25% higher than the rest of Puerto Rico. When is the time to be protesting? Tell me. I’ll tell them. They’ll do it.
ジョシュ:
これは人質解放の交渉じゃない。正当な抗議行動だ。
役人:
その行動には…
ジョシュ:
あなた方は、言わせてもらうが、彼らを逮捕するなり、撃つなり、好きにすればいいわけだが、我々にとって政治的に不利になるからそういうことはしない、ということだろう。何が本当の問題なのか忘れないでほしいね。
役人:
(爆撃演習が必要な期間なんだから)抗議などしてる場合じゃない。
ジョシュ:
プエルト・リコは4世紀もスペインの支配下にあり、1世紀アメリカの支配下で生きてるんだぞ。500年もの間、彼らは自分たちの運命を自分たちの意志で決定できたことは一度もないんだ。米軍は劣化ウラン砲弾を使っていて…
役人:
レクチャーは…
ジョシュ:
ナパーム爆弾や、クラスタ爆弾を使ってるんだぞ。ビエケス島民が癌になる率は他のプエルト・リコ人より25%も高い。いつなら抗議に適した時期と言えるんだ? 教えてくれよ。彼らに伝えるから。
ジョージア大学が行った調査では、TNT (爆薬の一つ:トリニトロトルエンの略称)が珊瑚礁を汚染し、死んだ珊瑚を食べた魚も汚染されている、と発表し、それを食べる人間にも被害が及んでいることを示唆していたのですが、海軍はこの調査を無視していました。
最後に、ビリーを説得した後のジョシュと広報部次長サムのやりとりを見てみましょう。
Josh:
We were able to make a deal with Billy. They’ll pull off the island right away. In exchange, we meet with a delegation, political affairs, Navy...
Sam:
It’s not gonna look like we caved?
Josh:
We’ll be slapped by the right, but they’re not gonna want to piss off the Latinos.
ジョシュ:
ビリーと手を打つことができた。すぐ島から撤退する代わりに、僕たちは彼らの代表者に会って、政治問題、海軍…
サム:
ホワイトハウスが彼らの圧力に屈したと思われない?
ジョシュ:
右翼からは叩かれるだろうけど、右翼もラテン系アメリカ人の票を失いたくないから大問題にはならないよ。
ジョシュの最後の一言は、実はとても重要なんですよね。
ブッシュ政権は2003年にビエケス島での爆撃演習を断念したんですけど、これは決して住民の安否や健康を気遣っての決定ではなく、単に「2004年の大統領選/上院・下院選に備えて共和党がヒスパニックの票を失いたくないから」というだけのことだった、というわけなのです。
2003年、ビエケス島から海軍が撤退したときはラテン系アメリカ人や人権・環境保護派の人々が大喜びしましたが、その後も米軍の施設はアメリカの連邦政府の管轄下にあり関係者以外は立ち入り禁止で、人が住んでいないから、という理由で汚染地域のクリーンナップ作業は全く進んでいない、というのが現状です。
ちなみに、マーティン・シーン氏はアメリカでは人権・環境保護の活動家として非常に有名で、原発反対デモでの座り込みなどで70回以上も逮捕されています。
米国同多発テロ9/11の直後は、クリントン前大統領と一緒に被害者のための寄付を募るテレビCMに出演するなど、シーン氏は本物の大統領にふさわしい貫禄と威厳、誠実さと影響力を持った人物なのです。
プライベートでも真の民主主義者だからこそ、彼が演じるバートレット大統領、そしてこの番組自体に信ぴょう性があるんですよね。
来週は、キリスト教の価値観の押し売りに関する話題をお届けします。お楽しみに!
関連サイト
ボキャブラリー
protester :抗議者、抗議団体
hostage :人質
legitimate :合法的な、正当な
delegation :代表者
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字幕:日本語・英語・日本語吹替え用字幕
音声: 英語・日本語
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