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ネイティブ感覚で観る『ザ・ホワイトハウス』


Updated every Monday, 更新日:10月2日

ジャーナリスト 西森マリー先生

西森先生
西森先生のプロフィール
人気海外ドラマ『ザ・ホワイトハウス』を題材に、アメリカ在住ジャーナリスト、西森マリーさんが英語の台詞とその背景をわかりやすく解説。アメリカの社会背景・文化を知れば英語の台詞もなっとく、楽しみながらアメリカの「今」を学ぼう!


ネイティブ感覚で観る『ザ・ホワイトハウス』 50
教会への放火と人種差別〜公民権運動の指導者は、なぜ教会から生まれたのか〜
Church Arson and Racism
From Season 3 episode 9, "Bartlet for America"
 
今週は、アメリカ南部で未だに続いている、黒人の教会への放火に関する話題をお届けしましょう。

まず、大統領とテネシー州知事のやりとりから。
17ヶ月の間に南部で34の教会が炎上し、クリスマスの季節に入ってからもテネシーで既に7つの教会が火事に遭ったのに、それが放火だったという確たる証拠がないために、テネシー州知事は州兵の動員を拒んでいます。

President: Well, the phone calls have been coming all morning, Governor. You should know that Algiss Skyler called.
Governor: Skyler wants you to call up the Guard?
President: Skyler wants to know why the hell you haven't.
Gov.: Because local law enforcement is doing plenty.
President: Was Eisenhower wrong in '57? Kennedy in '61?
Gov.: This is a different situation.
President: We don't know what the situation is, do we, Josh?
大統領: 朝の間ひっきりなしに電話がかかってきてね。(黒人指導者の)アルギス・スカイラーからも電話が来た。
州知事: 州兵を派遣しろ、という催促の電話ですか?
大統領: 君がなぜまだ州兵を派遣してないのか理由を知りたがってる。
州知事: 州の警察がしっかり捜査しているからですよ。
大統領: アイゼンハウアーは57年、ケネディは61年に過ちを犯したと言いたいのかね?
州知事: それとは状況が違います。
大統領: どんな状況だか把握していないのが現状じゃないのか?

このエピソードが放送されたのは2001年12月12日。南部での黒人教会焼き討ち激増が問題になってからちょうど1年経った時期でした。

1996年から2000年にかけて、1,000軒もの教会が焼き討ちに遭い、そのほとんどが南部の黒人が多い地域でのことだったので、クリントン政権は National Church Arson Task Force(連邦教会放火対策特捜班)を設立しました。

こうした現状を随時反映しているからこそ『ザ・ホワイトハウス』はアメリカのテレビ史上最高の政治ドラマと言われていたんですよね。


大統領の最後の一言も、アメリカの公民権運動の歴史の中でマイルストーン(画期的な出来事)となっている史実がもとになっています。

アイゼンハウアー大統領は、57年に黒人生徒の入学を拒むアーカンソーのハイスクールに州兵を派遣し、黒人生徒をエスコートさせました。

また、ケネディ大統領は、61年にジョージア大学が黒人の入学を拒否して黒人学生を停学処分にしたとき、連邦判事を通じて再入学させました。(ケネディ大統領は63年にはアラバマの大学に州兵を派遣して黒人学生をエスコートさせていて、この映像は『フォレスト・ガンプ』にも出てきます)。

どちらも州知事は州の自治権を主張したのですが、公民権拡張のために大統領が州知事の権限を上回る大統領命令を出した前例、というわけです。

二人の会話はさらに続きます。

President: Edward, so far the churches have been empty. There have been no fatalities. But tomorrow night's Christmas Eve. They're going to be packed. So why shouldn't I send troops in?
Gov.: Because, due respect, Mr. President but you do it without my consent and it's a clear violation of State's rights and you would have said the same thing when you were the Governor of New Hampshire.
President: This doesn't happen in New Hampshire.
Gov.: You got a pretty big black population in New Hampshire, do you?
大統領: エドワード(知事の名前)、今までのところは火事になった教会には人がいなかったから、死者は出ていないが、明日はクリスマス・イブだから、満員になるだろう。だから、私は州兵を派遣すべきじゃないかな?
州知事: お言葉ですが、大統領、私の承認なしにそんなことをしたら、それは州の自治権の侵害ですよ。あなたも州知事だったんだからお分かりのはずだ。
大統領: ニュー・ハンプシャーではこんなことは起こらんよ。
州知事: ニュー・ハンプシャーには黒人が多いでしょうからな。

大統領が知事をしていたニュー・ハンプシャー州の人口は、95%以上が白人で、黒人はわずか0.7%だということを知っていると、州知事の最後の皮肉に思わず苦笑いしてしまいますよね。

州兵を派遣する権限は大統領と州知事の両方が持っています。


次に、黒人指導者スカイラー氏の一言を見てみましょう。
連邦政府の管轄にある事件や災害が起きた場合ではない限り、大統領が州兵を派遣するのはおかしい、という意見の州知事に対して、スカイラー氏はこう言っています。

Of course there's a legal basis. Religious freedom is a civil right. The Civil Rights Act of 1964 raises these threats to a federal level.
「もちろん(州兵を大統領が派遣するための)法的な根拠がありますとも。宗教の自由は公民権ですよ。1964年に制定された公民権法が宗教の自由を脅かす犯罪を連邦レベルの犯罪に格上げしています」

公民権法は、南部での黒人教会焼き討ちや、KKK*脚注1)による黒人へのリンチなどの横行を連邦レベルで取り締まるためにできた法律です。

そもそもKKKや白人優越主義者たちが黒人の教会をターゲットにするのは、黒人の教会が単に神を崇める場所というだけではなく、黒人のコミュニティーの中枢としてとても重要な組織だからなんですよね。

黒人の教会は、黒人が奴隷だった時代には彼らに生きる希望と明日への望みを与え、まさに黒人の人生の礎となっていました。

そして、近代に入り、黒人がリンチや差別と戦うようになってからは、黒人教会が公民権運動の中核となりました。

キング牧師やジェシー・ジャクソン牧師、ジョセフ・ロウリー牧師など、黒人の指導者に牧師さんが多いのは決して偶然ではないのです。

つまり、黒人教会は黒人の公民権の象徴なので、黒人教会を焼き討ちするということは、まさに黒人の公民権を侵害するhate crime(憎悪・敵意に起因する犯罪)なんですよね。

こうした社会背景を知っていると、スカイラー氏の言葉の重みが増しますよね。


さて、最後に、大統領が多発性硬化症(視力の低下、手足の麻痺等を引き起こす脳と脊髄の病気)であることを公開しなかったことに関する公聴会のワン・シーンをご紹介しておきましょう。

公聴会を濫用して大統領の側近である首席補佐官レオがアル中だったことを暴こうとする右派のギブソン共和党議員と、公聴会の主旨を貫こうとする中道派(穏健派)のクリフ共和党法律顧問との会話を見てみましょう。

Cliff: Just to embarrass the guy?
Gibson: Just?
Cliff: Leo McGarry's sobriety isn't the subject of these hearings. These hearings are to investigate if any rules - ethical or otherwise - were broken by Jed Bartlet while he was running for President.
Gibson: That's nice, but I live in the actual world where the object of these hearings is to win.
Cliff: No... it's not.
Gibson: It's the object of the Majority.
Cliff: Not while I'm the Majority Counsel, it's not. This is bush league. This is why good people hate us. This right here. This thing. This isn't what these hearings are about.
クリフ: 彼(レオ)に恥をかかせるだけが目的でそんなことをしたいのか?
ギブソン: 恥をかかせるのは大いにけっこうなことだろうが。
クリフ: レオ・マギャリーが禁酒していたかどうかはこの公聴会とは関係ない。この公聴会の目的は、ジェド・バートレットが大統領選キャンペーン中に倫理的、あるいは他の面でなんらかの規則を破ったかどうかを調べることだ。
ギブソン: 甘いな。実際の政界におけるこの公聴会の目的は勝つことだ。
クリフ: いや、違う。
ギブソン: それが共和党の目的だ。
クリフ: 僕が共和党法律顧問である限りそうはさせん。低俗だぞ。だから善良な市民が共和党のことを忌み嫌ってるんだよ。こういうことをするからだ。まさにこれが嫌われる理由だ。この公聴会の目的はそういうこと(バートレット政権の要人に恥をかかせる)じゃない」

これは、クリントン大統領がアーカンソー知事の時代に不動産で不正取引をしたかどうかを調べるはずだったケネス・スター独立検査官が、問題の一件では不正が見つからなかったために、モニカ・ルインスキーの会話を秘密裏に録音し、それを濫用してクリントン大統領を泥沼に引きずり込んだ史実に基づいた台詞です。

ケネス・スター氏がアメリカ国民から忌み嫌われたおかげで、その反動でクリントン氏の支持率が急増したので、復讐心や悪意に満ちた調査はしない、というクリフのスタンスは共和党を救う正しい選択と言えますよね。

来週は、イスラエルの領土に関する話題をお届けします。政治を語るには絶対欠かせない話題なので、是非お読みになってください!


脚注
*1.KKK(Ku Klux Klan
白人至上主義団体「クー・クラックス・クラン」。略称KKK。アメリカの人種差別を主張する悪名高き秘密団体。会員( Klansmenクランズマン)は、白い頭巾に白いマントの異様な衣装をまとう。「奴隷解放宣言」後の1866年、テネシー州プラスキーで結成された。南北戦争後の南部各州において,黒人解放政策に抗議し,白人の権利を主張した団体。(1867年には、ルイジアナで同主旨の団体the Knights of the White Cameliaも誕生している) 1869年に解散を命じられるも、1915年ジョージア州アトランタで復活。1920年代の最盛期には400万人以上の会員数に達した。1930年代の不況時には、殺人やリンチ事件が明るみに出たこともあり、会員数は数千に激減。
http://www.kkklan.com/


関連サイト
1990年から2000年の間に焼き討ちされた教会
http://gbgm-umc.org/

黒人教会の重要性に関する記事
http://academic.udayton.edu/

過去の記事



hate crimeについてもっと知りたい人は 「アメリカで蔓延するhate crime」

ケネス・スター氏のクリントン大統領に対する捜査について詳しく知りたい人は 「積極的攻撃は最大の防御」

ボキャブラリー
arson:放火
racism:人種差別
fatality:死亡者
sobriety:禁酒




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