Updated every Monday, 更新日:8月28日
ジャーナリスト 西森マリー先生
人気海外ドラマ『ザ・ホワイトハウス』を題材に、アメリカ在住ジャーナリスト、西森マリーさんが英語の台詞とその背景をわかりやすく解説。アメリカの社会背景・文化を知れば英語の台詞もなっとく、楽しみながらアメリカの「今」を学ぼう!
ネイティブ感覚で観る『ザ・ホワイトハウス』 45
|
遺産相続税撤廃とアメリカン・ドリーム
Estate Tax Repeal & American Dream
From Season 3 episode 4, "On The Day Before" |
| |
|
|
 |
 |
 |
今週は、共和党が多数党である上下両院が通した遺産相続税撤廃法に対し、バートレット大統領が拒否権を発動するエピソードに関する話題をお届けしましょう。
ホワイトハウスのスタッフたちは、議会が拒否権を無効にするだけの票(議員数の3分の2)を集めたのではないかと心配する中、バートレット大統領は拒否権を発動します。
まず、拒否権発動に関する報道官C.J.の記者会見でのコメントを見てみましょう。
|
Good evening. About 15 minutes ago, the clerk of the House presented the executive clerk with HR10, a bill repealing the estate tax, which our opponents sometimes call the Death Tax, or the We're Coming to Get Your Children tax. We call it a tax on fewer than two percent of American estates valued at over a million dollars, the revenue from which helps fund frivolous Democratic spending programs, such as teaching people to read and curing disease. As promised, the President vetoed the bill, this was his first veto since taking the office 33 months ago.
こんばんは。およそ15分前に、下院事務官が行政事務官にHR10法案を提出しました。この法案は遺産相続税を廃止する法案で、共和党がよく『死税』とか『あんたらの子どもたちにかかる税金』と呼んでいるものです。私たちはこの税金を『アメリカ国民の2%未満の100万ドル以上の遺産を持つ人々にのみかかる税金で、識字率向上や病気を治すなどの民主党が推すつまらない政策の予算に充てられる収益』と呼んでいます。大統領は約束通りこの法案に対し拒否権を発動しました。33ヶ月前に大統領になって以来初の拒否権発動です。
|
この後、トビーは遺産相続税撤廃法案に賛成した(つまり大統領の拒否権無効化案に賛成票を投じようとしている)民主党の議員たちの説得工作にかかるのですが、逆に議員たちに「放牧料(放牧している動物に対してかけられる税金)引き上げの1年間凍結などの条件をホワイトハウスがのまなければ大統領を支持しない」と、最後通告を突きつけられてしまいます。
それを聞いたサムが、「彼ら(民主党の裏切り者議員たち)が要求しているのは共和党の一部の議員が望んでいることと同じなので、共和党議員たちにこれらの条件を提示して共和党議員たちと取引をしよう。成功すればこの遺産相続税撤廃法案拒否が党派を超えた支持を得ていると強調できる」と提案。
後半はサムとトビーが共和党議員ロイス氏に条件を提示して「これらの条件をのむ代わりに遺産相続税撤廃法案拒否に賛成して欲しい」と持ちかけるシーンを見てみましょう。
|
| Royce: |
And this is the exact same deal you were offering to Kimball? |
| Toby: |
Yes. |
| Royce: |
And he was ready to take it? |
| Toby: |
Yes. |
| Royce: |
I don't want it. |
| Toby: |
Congressman, you've been uneasy about the estate tax from the beginning. |
| Royce: |
That's right, I have. And yet, the White House did what it always does: it went to the extreme flank of its own party. Which meant more arm-wrestling, more dealmaking, God knows how many billions wasted in pork-barrel promises... |
| Sam: |
What are you saying? |
| Royce: |
That the moderates get shut out! Let me tell you something. The idea of repealing the estate tax makes me embarrassed to be a Republican. We used to be about the sensible center, about fiscal discipline. A tax break for billionaires? Of course this thing should be vetoed! It was a Republican named Oliver Wendell Holmes who said, "Taxes are the price we pay for a civilized society." |
| Toby: |
Are you saying... |
| Royce: |
Don't target me for defeat. I'm vulnerable in my district. The DNC'll run a conservative Democrat. If he's elected, he won't even be photographed with the President, much less vote with him. Take a look around at all the Democrats running from you right now. Do you even know who your friends are anymore? |
|
| ロイス: |
これはキンボール(民主党の裏切り者議員)に提示したのと全く同じ条件なんですか? |
| トビー: |
そうです。 |
| ロイス: |
彼はこの条件をのむ寸前だったんですか? |
| トビー: |
はい。 |
| ロイス: |
私には無用ですね。 |
| トビー: |
議員、あなたは最初から遺産相続税の件に関して難色を示してたじゃないですか。 |
| ロイス: |
ええ。にも関わらずホワイトハウスはいつも通り民主党の急先鋒に助けを求めたおかげで、ごり押しや裏取引のせいで計り知れない額の無意味な政府助成金を約束するハメになったわけだ。 |
| サム: |
何を言いたいんですか? |
| ロイス: |
中道派が無視されてる、ってことを言いたいんですよ! 言わせてもらいますが、遺産相続税撤廃など、考えただけで共和党員でいることが恥ずかしくなりますよ。共和党はかつては秩序ある財政を説く分別ある中道派だった。それが億万長者のための税金廃止なんて! もちろんこんな法案には拒否権を発動すべきです!『税金は文明社会に生きる者が払うべき代償である』と言ったのは共和党のオリバー・ウェンデル・ホームズですからねぇ。 |
| トビー: |
つまりあなたは… |
| ロイス: |
(次の選挙で)私を落選させるために攻撃をしかけないでください。私は負けるかもしれないんですよ。民主党本部が保守派の候補を立てようとしています。彼は、当選しても大統領と並んで写真に収まろうともしないだろうし、大統領が推す法案に賛成票も投じないでしょう。大統領との距離を置こうとしている民主党議員たちをよく見てごらんなさいよ。あなた方はもう誰が敵で誰が味方かも分からない状態に陥ってる。 |
|
この後、トビーとサムはロイス氏の選挙区に勝てそうな民主党候補を立てないことを約束し、ロイス氏と彼の派閥に属する6人の議員の同意を得て、拒否権無効化を食い止めるのでした。
オリバー・ウェンデル・ホームズは、1902年にセオドア・ルーズベルト共和党大統領に任命されて30年間最高裁判事を務めた人物で、死後、遺言通り彼の所有地は全てアメリカ政府に寄贈されました。
ロイス氏の言葉は、2001年にブッシュ氏が大統領になって以来、共和党が極右化して保守化する民主党議員が急増した史実に基づく一言です。
で、遺産相続税撤廃法案に関する一連のやりとりは、ブッシュ政権が2001年6月に遺産相続税撤廃法案をごり押しして通してしまったことを皮肉ったものなんですよね。
『ザ・ホワイトハウス』の脚本家兼製作総指揮を務めるアーロン・ソーキン氏は、この後も度々ブッシュ政権の行動と全く逆の行動をバートレット政権に取らせて、この番組の中で民主主義のあるべき姿を示しています。
ちなみに、共和党は、estate tax「遺産相続税」をdeath taxと言い換えたことで、「死ねば誰にでもかかってくる税金」だとアメリカ国民が勘違いしたため、この法案の支持率が急増したんですけど、この言い換えを提案したのはフランク・ランツという世論操作の専門家です。
ランツ氏は世論調査を元に世論にウケる言葉を使って、共和党に都合の良いように世論を操作することを仕事にしている人物なのですが、彼が共和党員たちに配ったパンフレットにこう書かれています。
|
When you speak of American ownership, be sure to frame it with the lens of opportunity. Ownership is limited, but THE OPPORTUNITY OF OWNERSHIP is limitless and the very definition of the American Dream.
「アメリカ人の所有権に関して話すときは、(富を蓄積するための)機会に焦点を当てて話すように。所有権は限られた者しか得ることができないが、所有権を得るための機会は無限にあり、それこそがアメリカン・ドリームである、と定義せよ」
|
先週のエピソードで、トビーに「遺産相続税撤廃で恩恵を受けるのは(超大金持ちの)4万5千世帯のみ」と言われ、バートレット大統領がこう答えています。
|
It doesn't matter if most voters don't benefit. They all believe that someday they will. That's the problem with the American dream. It makes everyone concerned for the day they're gonna be rich.
「有権者が恩恵を受けるかどうかは問題じゃないんだよ。彼らはみんないつか自分も恩恵を受ける日が来ると信じている。それがアメリカン・ドリームの問題点だ。いつか自分が金持ちになったときのことを、誰もが心配してしまうのさ(共和党の遺産相続税撤廃案に賛成してしまう人が多いのだ)」
|
ランツ氏率いる共和党員の巧みな言葉につられて「誰もが金持ちになれる!」と思いこまされている庶民をいたわる大統領のこの一言は、まさに名言ですよね。
関連サイト
過去の記事
ボキャブラリー
estate tax:遺産税
repeal:(法律などの)撤回、廃止
frivolous:つまらない
veto:拒否権
congressman:下院議員
Republican:共和党員
billionaire:億万長者
|
|

ザ・ホワイトハウス ― サード・シーズン コレクターズ ボックス発売中!
価格:¥12,285(税込)
字幕:日本語・英語・日本語吹替え用字幕
音声: 英語・日本語
DVD発売元:ワーナー・ホーム・ビデオ
|
|
|
|