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ネイティブ感覚で観る『ザ・ホワイトハウス』

Updated every Monday, 更新日:8月21日

ジャーナリスト 西森マリー先生

西森先生
西森先生のプロフィール
人気海外ドラマ『ザ・ホワイトハウス』を題材に、アメリカ在住ジャーナリスト、西森マリーさんが英語の台詞とその背景をわかりやすく解説。アメリカの社会背景・文化を知れば英語の台詞もなっとく、楽しみながらアメリカの「今」を学ぼう!


ネイティブ感覚で観る『ザ・ホワイトハウス』 44
積極的攻撃は最大の防御
Aggressive Offense is the Best Defense
From Season3, episode3, "Ways and Means"
 
今週は、バートレット政権の弾劾裁判対策に関する話題をお届けしましょう。

まず、独立検査官から召喚状が届いた後、ホワイトハウスの弁護士オリヴァー・バビッシュと報道官C.J.、法律顧問室のスタッフであるエインズリーが話し合うシーンを見てみましょう

Oliver: A subpoena is just a legal agreement to produce certain testimony and documents.
C.J.: Yeah, but isn’t it like the way a mugger uses a gun to produce your wallet?
Oliver: You say we’ll cooperate fully. You say subpoenas don’t indicate otherwise. You say they’re a commonly used legal tool to define the scope of the inquiry!
C.J.: Oliver, political reporters don’t care about the scope of the inquiry; they hear ‘subpoenas’...
Oliver: Look...
C.J.: My trouble with your spin is that we’re not going to get anywhere putting on a calm face. We need to pick a fight!
Ainsley: Why?
C.J.: Because in politics, if you’re not on offense, you’re on defense.
Oliver: Your problem there is that Clem Rollins doesn’t foam at the mouth. He’s a good guy and he comes off as a good guy.
Ainsley: Plus he was appointed by your own Attorney General which is going to make it tough to fit him with a black hat.
C.J.: Let me think for just a second. What do Republicans say about him? Ainsley: Well, we don’t all hang out at a little club...
Ainsley: Well, we don’t all hang out at a little club...
C.J.: What do they say about him?
Ainsley: He’s well-respected, he’s deliberate, he takes his duty seriously, he wants to get the truth and he wants to avoid any appearance of impropriety or partisanship.
C.J.: Excuse me!
Oliver: Where are you going?
C.J.: We need a different enemy.
オリヴァー: 召喚状は、単に特定の証言と書類を提出するという法的手続きにすぎない。
C.J.: 強盗が財布を寄こせ、って言うときに使う銃のようなものだわ。
オリヴァー: 全面的に協力する、と言えばいいだけのこと。召喚状が届いたからと言って有罪だというわけじゃないと言えばいい。審問範囲を定義するための法的な道具だと説明すればいいんだ。
C.J.: 政治記者にとっては審問範囲なんてどうでもいいのよ。彼らは召喚状と聞いただけで…
オリヴァー: あのねぇ…
C.J.: 冷静に対処する、というあなたの対応手段ではうまく行かないわ。こっちからケンカを売らなきゃダメ!
エインズリー: どうして?
C.J.: 政治の世界では攻撃してないと守りに入ってると思われるからよ。
オリヴァー: 独立検査官のクレム・ロリンズは激怒して口角泡を飛ばすタイプの人間じゃないから、ケンカ相手としては不適だ。実際に善良な人間で、見るからに善良な人間っていう男だから。
エインズリー: それに彼はバートレット政権の司法長官に任命された人物だから邪悪な敵の役を演じさせるのは難しいわ。
C.J.: ちょっと考えさせて。共和党は彼のことなんて言ってる?
エインズリー: 共和党員はみんなクラブに集っているわけじゃないから…
C.J.: 共和党員たちは何て言ってるの?
エインズリー: 彼は尊敬されていて、慎重で、職務をシリアスに遂行し、不適当な行為や党派心のない調査で真実を探ろうとしてる、と言ってるわよ。
C.J.: 失礼。
オリヴァー: どこ行くの?
C.J.: 別の敵を探しに行くの。

この後C.J.は首席補佐官レオのところに行きます。
C.J.とレオの会話を見てみましょう。

C.J.: Leo, we need to be investigated by someone who wants to kill us just to watch us die. We need someone perceived by the American people to be irresponsible, untrustworthy, partisan, ambitious and thirsty for the limelight. Am I crazy or is this not a job for the U.S. House of Representatives?
Leo: Well, they’ll get around to it sooner or later.
C.J.: So let’s make it sooner. Let’s make it now. Rollins is driving them crazy he's moving too slow, he won’t talk to the press, they’re ready to jump ... I swear to god, Leo, I think we can move the show!
C.J.: レオ、私たちの死ぬ様子を見たい、というだけの理由で私たちを殺したい連中から取り調べを受けなきゃダメなんですよ。アメリカ国民から無責任で信頼できず、党派心むき出しで野望に満ちて必死に脚光を浴びたがってると思われる敵が必要です。正気じゃないと思われるかもしれませんが、これって下院の仕事じゃないでしょうか?
レオ: 遅かれ早かれそういうことになるだろう。
C.J.: 早めにそういうことにさせましょうよ。今すぐに。ロリンズの動きはあまりに慎重で遅いからみんな気が変になってます。メディアに何も話さないから記者たちもイラついてますが…レオ、私はマジで思うんですけど、私たちの手でもっと早く仕切れますよ!

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レオの了解を得たC.J.は、この後ホワイトハウスや民主党とロリンズが非常に親しい仲にあることを必要以上に強調。その結果、共和党が多数党の議会が「ロリンズはホワイトハウスの手下」と判断し、独自の調査を始めることになるのです。


このエピソード(2001年10月24日放送)は、クリントン大統領の弾劾スキャンダル(1998年〜1999年)で共和党が選んだケネス・スター独立検査官と共和党要人が、その卑劣な手段や偽善的な行為のおかげでアメリカ人の多くから「無責任で党派心むき出し」と思われ、その結果、弾劾裁判の信憑性と権威が失われた史実が元ネタになっています。

ケネス・スター氏は、検察側の意図に沿う証言をしてくれない人物に対して、税務署の調査を強行、親類縁者には職場にFBIのエージェントを派遣、盗聴などのスパイ行為断行、投獄など、ありとあらゆるゲシュタポ並みの卑劣で非民主的な強硬手段を使って脅したことで、一時はヒットラーよりも嫌われていました。

また、クリントン氏の浮気を「神の教えに逆らう非道徳的な重罪」、「政治家にあるまじき非倫理的な犯罪」、「共和党は家族、夫婦の絆を厳守する!」と激しい口調で糾弾していた共和党議員たちは、自らの浮気や非行がバレたとたんに貝のように口をつぐんでしまい、彼らを熱烈に支持していた保守派の人々/ 原理主義キリスト教徒が面子を失うハメになりました。


偽善がバレた共和党議員を何人かご紹介しておきましょう。 まず、1998年まで共和党下院議長だったニュート・ギングリッチ氏は、1980年に最初の奥さんが癌の治療を受けている最中に離婚届けをたたきつけ、 1981年に別の女と結婚(1999年には2番目の妻と離婚し、それまで5年間に渡って共和党下院の秘書と浮気をしていたことがバレています)。

1998年にギングリッチの後釜として共和党下院議長になったボブ・リヴィングストン氏は、複数の女と浮気をしていて隠し子もいることが発覚。

These indiscretions were not with employees on my staff, and I have never been asked to testify under oath about them.
「不謹慎な行動ではありますが、相手は部下やスタッフではないし、浮気に関して偽証をしたことはありません」

と言い訳したものの、示しがつかずに議長を辞退。

弾劾裁判の当時、下院司法委員会の議長として倫理を力説していたヘンリー・ハイド共和党議員は、40代のときに3人の子持ちの既婚女性シェリー・スノーグラスと6年に渡って浮気をしていたことが発覚。

ハイド氏はこれをyouthful indiscretion「若気の至り」と一笑に付しましたが、シェリーが子供をほったらかしてハイド氏とよく一晩中ナイトクラブで遊んでいたことや、シェリーの元夫のHere is this hypocrite who broke up my family.「私の家庭を崩壊させた偽善者」という言葉が報道されたことで、共和党の女性からもひんしゅくを買いました。

クリントン大統領の辞任を要求していたヘレン・チェノウェス共和党下院議員は、既婚男性との浮気がばれたときに、「議員になる前のことだし、当時の私は未婚だった」と言い訳し、主婦層から反感を買いました。

「浮気は神の道に背く」と言っていたダン・バートン共和党下院議員は、隠し子がいることが暴露されたときに「養育費を払っているから問題ない」と言って、アメリカ中の奥様たちを敵に回しました。

おまけに、「神の意志に逆らう犯罪」と叫んでいた右派キリスト教の戦士ボブ・バー共和党会員議員が奥さんに中絶をさせていたことも発覚し、倫理を説教する共和党議員の偽善に保守派の人々までもが嫌気がさしてしまったのです。

で、弾劾裁判の支持率が低下したため、議員もこの世論の動きを反映せざるを得なくなって弾劾裁判で有罪を求める票が激減した、ということなんですよね。

ですから、C.J.の「国民から嫌われる敵を作ることによって、自分たちの支持率を相対的に上げる」という戦略は成功実証済みのもの、というわけなんですよね。

来週は遺産税に関する話題をお届けしますので、お楽しみに!


関連サイト
ケネス・スター氏に「クリントン大統領を有罪にするために嘘をつけ」と卑劣な手段で脅された女性の証言
http://www.juliehiattsteele.com/

ケネス・スター氏に、クリントン夫妻を有罪にするために偽証するよう要求され、それを断ったために投獄された女性が書いた本
http://search.barnesandnoble.com/

浮気がバレた共和党議員に関するタイム誌の記事
http://www.time.com/


ボキャブラリー
subpoena:召喚状
Republicans:共和党
deliberate:よく考えた、慎重な
impropriety:不適当な
partisanship:党派心
sooner or later:遅かれ早かれ
indiscretion:軽率な、不謹慎な行為
hypocrite:偽善者




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