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ネイティブ感覚で観る『ザ・ホワイトハウス』

Updated every Monday, 更新日:7月31日

ジャーナリスト 西森マリー先生

西森先生
西森先生のプロフィール
人気海外ドラマ『ザ・ホワイトハウス』を題材に、アメリカ在住ジャーナリスト、西森マリーさんが英語の台詞とその背景をわかりやすく解説。アメリカの社会背景・文化を知れば英語の台詞もなっとく、楽しみながらアメリカの「今」を学ぼう!


ネイティブ感覚で観る『ザ・ホワイトハウス』 42
謝罪の効用〜一番言いにくい言葉〜
Apology Works  
From Season 3 episode 1, "Manchester:Part-1"
 
今週はバートレット大統領が再選出馬の意向を発表するスピーチに関する話題をお届けしましょう。

まず、首席補佐官レオと、再選キャンペーンのためにレオに招かれた選挙の専門家ブルーノのやりとりを見てみましょう。

Leo: Who told Doug to write a draft?
Bruno: This was... this was simply in order to...
Leo: Who told him?
Bruno: I told him to do it.
Leo: It's got an apology. Also, it stinks.
Bruno: Yeah. Okay, it lacks a certain, well, quality...
Leo: Yeah.
Bruno: But look, Doug isn't here to write poetry. The purpose of this draft is to demonstrate that an apology can work.
Leo: He's not going to apologize.
Bruno: Why not?
Leo: Because it's his official campaign announcement and not Oprah Winfrey.
Bruno: Doing Oprah wouldn't kill him.
レオ: 誰がダグ(ブルーノのアシスタント)にスピーチの草案を書けと言ったんだ?
ブルーノ: これは…この草案の目的は単に…
レオ: 彼に命じたのは誰だ?
ブルーノ: 私が命じました。
レオ: 謝罪が入ってる。それに、ひどい文章だ。
ブルーノ: ええ。確かにそれほど上質ではありませんが…
レオ: その通り。
ブルーノ: でも、ダグは詩を書くためにここに来たわけじゃない。この草案は、謝罪は効力があるということを示すためのものです。
レオ: 彼(大統領)は謝罪などせんよ。
ブルーノ: なぜ?
レオ: これは再選キャンペーン開始を告げるオフィシャルな報告であって、オプラ・ウィンフリーの番組じゃないからだよ。
ブルーノ: オプラの番組に出演するのも悪くないですよ。

かみ合わない二人の会話はさらにこう続きます。

Leo: In four weeks, he has made a full disclosure of his health. He's educated the public about MS, he's done this every day. He has done everything...
Bruno: Except apologize. In four weeks, he has saved Haiti for democracy, funded the Justice Department Tobacco lawsuit, watched the market rebound... he has done everything but apologize.
Leo: You think he apologizes and his numbers go up?
Bruno: I think you brought me in two weeks ago because they haven't yet.
Leo: They have.
Bruno: Two points in a month? If he runs for reelection 27 years from now, he's got a fighting chance.
レオ: (多発性硬化症を患っていると告白してから今までの)4週間で、大統領は健康状態に関することを全て明らかにし、多発性硬化症がどういう病気か毎日繰り返し国民に説明してきた。彼はあらゆることをしてき…
ブルーノ: 謝罪以外のあらゆることをね。この4週間で彼はハイチに民主主義を戻し、司法省のタバコ訴訟のための資金を与え、市場も回復した…彼はあらゆることをやってはいますが、謝罪はしてません。
レオ: 謝罪すれば支持率が上がると思うのかね?
ブルーノ: 2週間前に私を呼んだのは、支持率が上がってないからでしょう?
レオ: 上がったよ。
ブルーノ: 1ヶ月で2ポイントね。(上昇がこのペースなら)27年後に選挙があるのなら勝てるでしょうな。

以前にも書きましたが、弾劾裁判に関するエピソードは全てクリントン大統領に対する弾劾裁判が元ネタになっています。

で、レオとブルーノの会話は、クリントン大統領が弾劾裁判の最中に謝ったら支持率が上がったことが元になっています。

クリントン大統領は、最初はモニカ・ルインスキーとのセックスを否定していたのですが、リンダ・トリップという共和党の工作員がルインスキー嬢との会話を秘密裏に録音したことで、クリントン氏は偽証罪に問われるハメに陥ってしまいました。

そのため、クリントン大統領はまず1998年8月17日に大陪審で証言した後にテレビ演説でこう言いました。

Indeed, I did have a relationship with Miss Lewinsky that was not appropriate. In fact, it was wrong. It constituted a critical lapse in judgment and a personal failure on my part for which I am solely and completely responsible.
「実際は、私はモニカ・ルインスキーさんと適切ではない関係を持ってしまったのです。それは確かに間違ったことでした。私は誤った判断を下し、私的な過失を犯したのです。これは全て完全に私一人の責任です」

で、この演説の後も、世論がそれほどポジティブに反応してくれなかったので、9月11日にキリスト教の牧師やユダヤ教のラビなどを招いた集会でクリントン大統領はさらなる謝罪の言葉を述べました。


後半は、クリントン大統領の謝罪演説の一部をご紹介しましょう。

I agree with those who have said that in my first statement after I testified I was not contrite enough. I don't think there is a fancy way to say that I have sinned.
「(8月17日に大陪審で)証言した後の私の言葉は、後悔と謝罪の念が足りない、という意見がありましたが、確かにその通りです。罪を犯した、ということを上手に言い表せる言葉などないのです」
It is important to me that everybody who has been hurt know that the sorrow I feel is genuine: first and most important, my family; also my friends, my staff, my Cabinet, Monica Lewinsky and her family, and the American people. I have asked all for their forgiveness.
「(このスキャンダルのせいで)傷ついた人々全員に対して、私は心底から哀しみを感じている、ということを彼らに何としてでも分かっていただきたい。まず誰よりも私の家族、そして私の友達、スタッフ、閣僚、モニカ・ルインスキーと彼女の家族、そしてアメリカ国民のみなさん、私は彼ら全員に許しを請いました」

この後、クリントン大統領は「私は心底から悔い改めました」「今後は神の助力をいただいて、自分が理想としている人間になるように精進します」と述べ、さらに続けました。

A couple of days ago when I was in Florida a Jewish friend of mine gave me this liturgy book called “Gates of Repentance.” And there was this incredible passage from the Yom Kippur liturgy. I would like to read it to you:
「数日前、フロリダに行ったときにユダヤ人の友だちが私に、この『悔悛の門』という祈祷書を手渡してくれました。ヨーム・キプル(あがないの日)の祈りの中にすばらしい一節があったので、ここで読ませていただきます」
“Now is the time for turning. The leaves are beginning to turn from green to red to orange. The birds are beginning to turn and are heading once more toward the south. The animals are beginning to turn to storing their food for the winter. For leaves, birds and animals, turning comes instinctively.
「今は転換の時。木々の葉は緑から赤やオレンジ色に変わり、鳥たちは方向を変えて再び南へと向かい、動物たちは冬に備えて食べ物を蓄える。葉や鳥、動物には転換は本能的に訪れるが、人間にとっては方向転換は容易ではなく、強い意志がなければ方向転換はできない。
But for us, turning does not come so easily. It takes an act of will for us to make a turn. It means breaking old habits. It means admitting that we have been wrong, and this is never easy. It means losing face. It means starting all over again. And this is always painful. It means saying I am sorry. It means recognizing that we have the ability to change. These things are terribly hard to do. But unless we turn, we will be trapped forever in yesterday's ways.
方向転換とは、今までの癖をやめ、過ちを認めることであるので、簡単にできるものではないのだ。それは、面子を失い、一からやり直す、とういことであるから、必ず辛い思いをする。それは、すみませんでしたと謝り、自分を変える力があると認めることで、至難の業である。しかし方向転換をしない限り、我々はいつまでも昨日の生き方に捕らわれたままでいることになる。
Lord help us to turn, from callousness to sensitivity, from hostility to love, from pettiness to purpose, from envy to contentment, from carelessness to discipline, from fear to faith. Turn us around, O Lord, and bring us back toward you.”
主よ、我々が冷淡、軽率、不安から抜け出して感受性豊かで規律正しく信仰を持った人間になれるように、我々を助けてください。主よ、我々の生き方を変えてあなたのもとへと戻してください」

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手書きの文章をメガネをかけて読み上げる、という形で行われたこの謝罪演説で、ときどき涙をこらえ声を詰まらせていたクリントン大統領の姿に、アメリカ国民の多くが「罪を認めて謝ったのだから、もう彼を許してあげよう」と思い、支持率が上がったのです。

クリントン大統領が弾劾裁判で無罪になった要因の一つに、この心からの謝罪が効力を発揮した、という事実があることを知っていると、今回のエピソードの深みが増すでしょう?

ちなみに、オプラ・ウィンフリーは主婦向けの昼のトーク・ショーウの司会者で、アメリカで最も影響力のある女性と言われていて、大統領選の候補者や政治家もよくゲストとして登場します。

オプラの番組で『好感度が高い人』だという印象を与えられれば、主婦層の支持率が確実に上がるし、オプラ(黒人)は民主党寄りなので「オプラの番組に出演して謝る」というアイディアは実は非常に的を射ているのです。

エルトン・ジョンのヒット曲で「Sorry Seems To Be The Hardest WordSorryは一番言いにくい言葉のようだ)」という曲がありますが、政治家にとっても謝罪って本当に重要なんですよね。


関連サイト
オプラ・ウィンフリーの公式サイト
http://www2.oprah.com/


ボキャブラリー
stink:ひどい、お粗末だ
disclosure:公表、発表
lapse:過ち
testify:証言する
contrite:深く後悔している
sorrow:悲しみ、後悔
instinctively:本能的に
Lord:神




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