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アメリカン・カルチャーを知る英語講座

Updated every Monday, 更新日:9月12日

ジャーナリスト 西森マリー先生

西森先生
西森先生のプロフィール
日本ではほとんど知られていないもう一つのアメリカから情報発信するジャーナリスト、西森マリーさん。背景を知れば、英語もなっとく。マリーさんから、もう一つのアメリカとアメリカ英語の背景を学ぼう!


アメリカン・カルチャーを知る英語講座 74

映画『紳士協定』でみる近代アメリカのユダヤ人差別3
Gentleman's Agreement Part 3
 

3週にわたって、映画『紳士協定』(原題:Gentleman's Agreement)を素材に、近代アメリカにおけるユダヤ人差別がどれほど陰湿なものだったかに関してご紹介しています。


今週は、『紳士協定』から、ユダヤ人差別の実態を伝えるリベラルな人間の台詞と差別される側の悲劇を伝える台詞をご紹介しましょう。

まず、奥さんと住む家を探している旧友のデイヴ(ユダヤ人)を助けたいフィルと、フィルのフィアンセ、キャシーの会話を見てみましょう。

キャシーはリベラルな思想を持つ上流階級の女性。コネチカットの裕福な白人のみが住んでいる街ダリアンに家を持っていますが、そこには住まずにNYのアパートに住んでいます。

フィルはキャシーがコネチカットの家をデイヴに貸すことを望んでるのですが、ユダヤ人差別に反対しているはずのキャシーはフィルに同意してくれません。

Kathy: It'd just be too uncomfortable for Dave kowing he'd moved into one of those neighborhoods. Darling, don't you see that? It's detestable, but that's the way it is. It's even worse in New Canaan. There, nobody can sell or rent to a Jew. And even in Darien, where Jane's and my house is there's sort of a gentleman's agreement when you buy...
Phil: Gentleman's? Kathy you can't. You're not gonna fight it, Kathy. You're just gonna give in, play along, let their idiotic rules stand? Kathy: I don't play along, but what can one person do?
Kathy: I don't play along, but what can one person do?
Phil: You can tell them to go jump in the lake. What can they do?
Kathy: Plenty. Ostracize him. Some of the markets not deliver food not even wait on him.
キャシー: あんなふうな地域(白人優越主義の地域)に引っ越したらデイヴはとても不愉快になるだけよ。あなた、わかるでしょう? ひどい話だけど、それが現実なのよ。ニュー・カナンは(ダリアンより)さらにひどくて、ユダヤ人にものを売ることも家を貸すことも禁じられているのよ。ジェーン(姉)と私の家があるダリアンでも家を買うときには紳士協定(暗黙の約束事)のようなものがあって…
フィル: 紳士? キャシー、まさか君まで。君は闘わないのか? 屈服して、同調して、彼らのばかげたルールに従うのか?
キャシー: 同調してはいないわ。でも一人の人間に何ができるというの?
フィル: ヤツらに湖に飛び込めと言ってやれ。ヤツらにこそ何ができるというんだ。
キャシー: いろんなことができるわよ。デイヴは村八分されることだってあり得るわ。彼に食べ物を届けない店や彼を無視するレストランもあるでしょう。

キャシーは、ユダヤ人差別の現実を「ひどいこと」と忌み嫌ってはいる良心的な人間です。でも、長い物には巻かれろ、という主義で、自分ではそれに抵抗しようとしないんですよね。


次に、そんなキャシーの根本的な考え方が露呈されている台詞を見てみましょう。

近所の子供たちから「dirty Jew(不潔なユダヤ人)stinking kike(臭いユダ公)」と呼ばれて、泣きながら家に帰ってきたフィルの小学生の子供トミー(死んだ奥さんとの間に生まれた子供)に、フィルが取材のためにユダヤ人と偽っていることを知っているキャシーはこう言います。

Oh, darling, it's not true. it's not true. You're no more Jewish than I am. It's just a horrible mistake.
「あぁ、坊や、それはウソよ。あなたは私と同じでユダヤ人なんかじゃないわ。それは大きな間違いなのよ」

この一言を聞いてフィルは激怒して、キャシーにこう言います。

You've only assured him he's the most wonderful of all creatures, a white Christian American. You instantly gave him that lovely taste of superiority, the poison that millions of parents drop into the minds of children.
「君は僕の息子に、白人キリスト教徒のアメリカ人が最もすばらしい人種だということを請け合っただけ。君は即座に彼に優越感の甘い味を与えたんだ。何百万人もの親たちが子供に与える毒を」

こう言われたキャシーは「あなたは私がユダヤ人差別主義者だと思っているのね!」と逆ギレしたため、フィルはこう言い返します。

No, it's just that I've come to see lots of nice people who aren't, people who despise it and deplore it and protest their own innocence help it along and wonder why it grows.
「そうは思ってない。ただ、反ユダヤではないいい人たち、ユダヤ人差別を嫌い、嘆いて、自分たちはそんなことをしないと主張する人たちが、実際には差別に荷担しながら、なぜ差別が続くのか不思議に思っている、っていう現状が見えてきたんだよ。

People who'd never beat up a Jew or yell kike at a child. People who think that anti-Semitism is something away off in some dark crackpot place with low-class morons. That's the biggest discovery I've made about this whole business, Darling. The good people, the nice people.
ユダヤ人を殴ったり、ユダ公と叫んだりしない人たち、ユダヤ人差別は下層階級の愚者たちの暗い異常な別世界で起きることだと思っている人たちのことさ。記事を書き始めて以来、それが一番大きな発見だ。善良な人々、いい人たちが差別に荷担してるんだよ」

心の中では差別はいけないと思っている善良な人々が、黙ったままで行動を起こさないことを非難したフィルの台詞は、今聞いても胸にズシンと響きますよね。

最後に、フィルとデイヴのやりとりを見てみましょう。

Phil: Tommy got called a dirty Jew and a kike by some kids down the street. Came home pretty shaken up.
Dave: Now you know it all. That's the place they really get at you, your kids. Now you even know that. Well, you can quit being Jewish now. There's nothing else. My own kids got it without the names, Phil. Just setting their hearts on a summer camp their bunch were going to and being kept out. It wrecked them for a while.
Dave: The only other thing that makes you want to murder is... There was a boy in our outfit Abe Schlussman. Good soldier. Good engineer. One night we got bombed and he caught it. I was ten yeards off. Somebody said "Give me a hand with this sheeny" Those were the last words he ever heard.
フィル: トミーが近所で不潔なユダヤ人、ユダ公と呼ばれて、ひどく動揺して帰ってきた。
デイヴ: これで君も(ユダヤ人であることの苦労が)全て分かっただろう。子供、それが一番辛いところだ。君はその痛みも知ったわけだ。もうユダヤ人のふりをするのを辞める潮時だな。これ以上の差別に遭遇することはないから。僕の子供たちは罵倒語無しで差別を味わった。友だちが行くことになってたサマー・キャンプに行くのを楽しみにしてたんだが、入れてもらえなかった。その後しばらくの間うちひしがれていたよ。
デイヴ: それ以外で本当にアタマに来るのは…僕たちの部隊にエイブ・シュラスマンというヤツがいた。立派な兵士で、いいエンジニアだった。ある夜、爆撃されて、彼が僕の10フィート先のところで爆弾に当たったとき、誰かが『この小汚いユダ公を助けてやれ』って叫んだだよ。それが彼が聞いた最後の言葉だった。

第二次世界大戦で自由のため、そしてナチスの手からユダヤ人を救うために死んだユダヤ人が死ぬ前に聞いた一言が差別用語だった、というこの台詞も、ユダヤ人差別の根深さを物語っていますよね。

『紳士協定』の台詞にはユダヤ人差別用語以外はスラングは皆無で、登場人物はみなとても聞き取りやすい英語を話しているので、リスニングの教材としても役立ちますから、是非ともDVDをごらんになってください。


関連サイト

DVD『Gentleman's Agreement』

  DVD『Gentleman's Agreement』
 

ボキャブラリー
detestable:憎悪すべき
ostracize:追放する、排除する、村八分にする
superiority:上位、優越
deplore:残念に思う、嘆く
anti-Semitism:反ユダヤ主義、ユダヤ人差別
crackpot:狂人、変人
moron:ばか者、愚か者

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