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アメリカン・カルチャーを知る英語講座

Updated every Monday, 更新日:9月5日

ジャーナリスト 西森マリー先生

西森先生
西森先生のプロフィール
日本ではほとんど知られていないもう一つのアメリカから情報発信するジャーナリスト、西森マリーさん。背景を知れば、英語もなっとく。マリーさんから、もう一つのアメリカとアメリカ英語の背景を学ぼう!


アメリカン・カルチャーを知る英語講座 73

映画『紳士協定』でみる近代アメリカのユダヤ人差別2
Gentleman's Agreement Part 2
 

先週から映画『紳士協定』(原題:Gentleman's Agreement)を素材に、近代アメリカにおけるユダヤ人差別がどれほど陰湿なものだったかに関してご紹介しています。



今回は、ユダヤ人差別に関する記事を書くためにユダヤ人になりすました記者フィル・グリーンが様々な差別を肌で感じるシーンを見てみましょう。

まず、病気の母親の主治医との会話から。

ユダヤ人の医者エイブラハムズに診せたい、と言うフィルと、主治医(非ユダヤ人)のやりとりを見てみましょう。

Doctor: Good man, completely reliable. Not given to overcharging and stringing visits out the way some do.
Phil: Do you mean the way some doctors do or do you mean the way some Jewish doctors do?
Doctor: I suppose you're right. I suppose some of us do it, too, not just the chosen people.
ドクター: (エイブラハムズ医師は)いい人で、完全に信頼できます。他の連中みたいに診察料をふっかけたり(高い往診料を取るためにわざわざ)往診時間を引き延ばしたりしない人です。
フィル: 他の連中、というのは他の医者、という意味ですか、それとも他のユダヤ人の医者、という意味ですか?
ドクター: そう言われると、確かに選民(ユダヤ人)だけじゃなくて、我々(クリスチャンの医者)の中にもそういうことをする人がいますよね。

この後、フィルはドクターに自分がユダヤ人だと告白すると、ドクターは、A good man's a good man. I don't believe in prejudice.「いい人というのは(人種に関わらず)いい人です。私は偏見なんか持っていませんよ」と弁解します。

ユダヤ人は強欲、というステレオタイプは以前ご紹介した『ヴェニスの商人』を見ても分かるとおり、中世からずっと定着していたイメージで、近代のアメリカはもとより、今でも根強く残っているんですよね。

the chosen peopleとは、ユダヤ教の選民意識を小馬鹿にした言い方です。


次に、フィルが同僚のアンとナイトクラブに行くシーンを見てみましょう。

クラブで出会ったアンの友だちバートに、フィルは自分が退役軍人であること、そしてユダヤ人であること、そしてユダヤ人差別に関する記事を書いていることを伝えます。

Bert: When I was stationed at Guam our C.O. talked to us about it. Quite a liberal that fellow. You were in public relations, weren't you?
Phil: What makes you say that?
Bert: I don't know. You jsut seem like a ... clever sort of a guy.
バート: グアムに駐屯していたとき司令官から話を聞いたことがある。すごくリベラルな人間だった。君はPR部にいたんだろう?
フィル: なぜそう思うんだい?
バート: なぜかなぁ。君はなんていうかぁ…利口なヤツって感じだからさ。

これも、ユダヤ人=口はウマイが体力はない、という典型的なユダヤ人のステレオタイプから来る偏見です。

確かに初期のハリウッドは東欧からアメリカに移住したユダヤ人が牛耳っていたので、今でもメディアやPR関連にユダヤ人の比率が多いことは事実*脚注1)ですが、ユダヤ人は体力がない、というのは日本人は小さいから体力がない、と言うようなもの。

『ヴェニスの商人』のコラムで説明しましたが、中世ヨーロッパではユダヤ人は土地を持つことを許されず、農業(力仕事)に従事できなかったために、高利貸しになるしか生きる道がなかったのです。で、彼らは中流以上の人間たち(馬術やフェンシングで鍛えている)からも、農民からも「肉体的に劣っている人種」だと思われて、その偏見が長い間定着していたのです。


さて、ここでJewishの定義を再確認しておきましょう。
Jewishとは「ユダヤ教を信じる人」のことなので、実は人種を特定する言葉ではないのです。(ハリウッド黄金時代の黒人エンターテイナー、サミー・デイヴィスJr.はユダヤ教に改宗した後「ユダヤ人」になりました)

それにも関わらず、多くの人々がJewishを人種として差別することが多いのはなぜか…。

パーティーでフィルに紹介されたユダヤ人の科学者リーバーマン教授は、この質問にこう答えています。

Because the world still makes it an advantage not to be one.
「それはいまだにこの世の中ではユダヤ人でないことがプラスになるからですよ」

どんなに貧乏な白人キリスト教徒も、どれほど差別を受けている黒人も、ユダヤ人を蔑視することで「自分たちよりもまだ下の人間がいる」という優越感を味わえる、ということなんですよね。

この後、フィルはフルーム・インというホテルがrestricted(制限されている=ユダヤ人を泊めない)と聞き、確かめに行きます。

フロント係に空き室があることを確認した後、フィルは支配人に「ユダヤ人を泊めないのですか?」と質問。支配人とフィルの会話を見てみましょう。

Manager: In answer to your question, may I inquire, are you...That is, uh, do you follow the Hebrew religion yourself? Or is it that you just want to make sure?
Phil: I've asked a simple question. I'd like to have a simple answer
Manager: Well, we do have a very high-class clientele, and well, naturally.
Phil: Then you do restrict your guests to Gentiles.
Manager: Well, I wouldn't say that Mr. Green. In any even, there seems to be some mistake because we don't have a free room in the entire hotel.
支配人: ご質問へ答える前に尋ねされていただきますが、あなたは…つまり、そのぉ、あなたはヘブライの宗教に従っていらっしゃるのですか? それとも単に(このホテルが白人キリスト教徒のみのものだと)確認なさりたいだけのですか?
フィル: 私は単純な質問をしたのだから、単純な返事をしてほしい。
支配人: 私どもの顧客は上流の方々のみですから、もちろんそうです。
フィル: つまり客は非ユダヤ人のみ、ということですね。
支配人: そういう言葉は使っておりません。ま、とにかく手違いがあったようです。当ホテルは満室でございます。

支配人はこう言ってベルを鳴らし、フィルを追い払います。
「ユダヤ人を泊めない」とは絶対に言わないこの支配人の対応から、ユダヤ人差別が黒人差別とは違う陰湿なものであることがよく分かりますよね。

来週は、フィルを愛するリベラルな婚約者キャシーと、ユダヤ人の友人デイヴの台詞を見てみましょう。

脚注
*1.
アメリカの大手映画会社MGMの創始者、ルイス・メイヤー、サミュエル・ゴールドウィン、マーカス・ロウ、20世紀フォックスの創始者ウィリアム・フォックス、ワーナー・ブラザーズの創始者ワーナー4兄弟など、黄金時代のハリウッドの要人は8割以上がユダヤ人だったと言われています。

関連サイト

DVD『Gentleman's Agreement』

  DVD『Gentleman's Agreement』
 

ボキャブラリー
reliable:信頼できる、頼りがいのある
chosen people:神の選民
prejudice:偏見
Hebrew:ヘブライ人
gentile:(ユダヤ人にとっての)キリスト教徒、非ユダヤ人の

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