Updated every Monday, 更新日:8月1日
ジャーナリスト 西森マリー先生
日本ではほとんど知られていないもう一つのアメリカから情報発信するジャーナリスト、西森マリーさん。背景を知れば、英語もなっとく。マリーさんから、もう一つのアメリカとアメリカ英語の背景を学ぼう!
アメリカン・カルチャーを知る英語講座 69
映画に出てくる翻訳不可能なジョーク2〜『シャーク・テイル』
Shark Tale
今週は、映画『シャーク・テイル(原題:Shark Tale )』に出てくるジョークを見てみましょう。
『シャーク・テイル』は、子供向けの作品なのに小学生に通じない大人向けのジョークもたくさん出てくる、という典型的なドリームワークスのアニメです。
まず、台詞以外のダジャレを見てみましょう。
オスカーが住んでいる海底の街にあるお店の名前がいちいち凝ってるんですよね。
最初に目につくのはMARTHA STURGEON'S flowers というお花屋さん。 sturgeon は「チョウザメ」のことなんですけど、アメリカ人はこの看板を見て、インテリア・デコレーションや料理などの大御所マーサ・スチュアートのパロディだと分かるんですよね。
彼女は、インサイダー取引で有罪になり、この映画がリリースされた時はちょうど投獄されたばかりだったので、どん欲なチョウザメのイメージがあまりにぴったりで笑えるんですよね。
Prawn Shop We Sell Quality Stolen Goods (プローン・ショップ 良質の盗品を販売) という看板も小学生向けのギャグではないですよね。
pawn shop (質屋) とprawn (エビ) をかけた言葉遊びは、翻訳不可能ですよね。
ハリウッドの観光名所「ウォーク・オブ・フェイム」のパロディも笑えます。
Russel Crowe の代わりにMussel Crowe (mussel はムラサキイガイ)、Jessica
Simpson の代わりにJessica Shrimpson (simp をshrimp 小エビに変えたもの)、Rod
Stewart の代わりにCod Stewart (cod は鱈)など、翻訳不可能なダジャレがいっぱい!
次に、通常のイディオムを魚らしい表現に言い換えた台詞をいくつかご紹介しましょう。まず、ドン・リノがサイクスに言う一言、
It's a fish-eat-fish world. You either take or you get taken.
これは a dog-eat-dog world (食うか食われるかの熾烈な社会) をもじったもの。
大きな魚が小さな魚を食べる、という魚の世界を言い表すには、まさにa fish-eat-fish world というパロディ表現がぴったりですよね。
サイクスがオスカーに言う、
You're in trouble up to your gills.
という台詞は、be in trouble up to one's neck (トラブルに首までどっぷり浸かっている) というイディオムのneck をgills (えら) に言い換えたもの。こういう細かいギャグを外国語に訳すのは至難の業でしょうねぇ。
タツノオトシゴのレースのシーンは、タツノオトシゴの英語が、sea horse (海の馬) だと知っていると、horse
race (競馬) と sea horse race の言葉遊びに笑えますよね。
Sharkslayer(鮫殺し屋) として有名になったオスカーのパーティーで、サイクスが言う、
Oscar, raise the reef, raise the reef, buddy.
は、raise the roof (パーティを盛り上げる、大騒ぎする) のroof をreef (礁) に言い換えたもの。
(Sharkslayer は中世の騎士道物語によく出てくるdragon
slayer/dragonslayer (ドラゴン殺し屋、ドラゴンを殺してお姫様を救い出した英雄) のパロディです)
レニーの一言、High fin, low fin. は、High
five, low five. (手をたたき合って交わす挨拶) のfive (5本の指) をfin (ヒレ) に変えたもの。いちいち芸が細かいですよね。
オスカーの親友アンジーを誘拐したドン・リノの部下、ルカがオスカーに脅迫電話をかけるシーンにも笑える台詞が登場します。
Now there's gonna be a sit-down in one hour. Be there,
if you don't wanna see her sleepin' with the fishes. The dead ones.
「一時間後に集会があるから、来いよ。来ないと、彼女が魚たちと眠ることになる。死んだ魚たちとだ」
sleep with the fishes はマフィア御用達の一言で、you'll
be sleeping with the fishes は「おまえを殺してやる」という意味で使われます。 マフィアが人を殺すときは、証拠を残さないようにするために死体の足をコンクリートにつけて、それを重しにして海に沈めるので、死体は「魚と一緒に眠る」わけです。
でも、アンジーはそもそも魚なので、このマフィア用語だけでは意味が明瞭ではないため、ルカはわざわざ「死んだ魚と一緒に(眠ることになる)」という一言を付け加えているんですよね。
魚関連以外のジョークも一つご紹介しておきましょう。 レニーとフェイクの闘いをしている最中、レニーの口の中から姿を現したオスカーがこう言っています。
Are you not entertained?
「楽しんでないのか?(俺たちはあんたら観衆を十分楽しませてやってるから文句ないだろう?)」
You can't handle the truth.
「おまえは真実に耐えられない」
You had me at hello.
「ハローと言われた時点で既にあなたを許しちゃったわ」
これは、それぞれ映画『グラディエイター』でマキシマスが言う台詞、『ア・フュー・グッド・メン』でジャック・ニコルソンが言う名言、『ザ・エージェント』でレネー・ゼルウィガー(アンジーの声)がトム・クルーズに言う台詞なんですよね。
シュレック同様、『シャーク・テイル』のキャラクターたちの英語も、役柄設定に大きく貢献しています。
オスカー(声:ウィル・スミス)は典型的なエボニクス( * 脚注1) なので、ヒップでクールな感じがしますが、アンジーはクセのないアメリカ英語で庶民的な感じがします。
レニー(ジャック・ブラック)はごく一般的なアメリカ英語を話していますが、ドン・リノ(ロバート・デ・ニーロ)などの鮫たちやサイクス(マーティン・スコセッシ)は典型的なイタリア訛りのアクセントでマフィア用語がよく出てくるので、いかにもゴッド・ファーザーの鮫バージョンっていう感じがするんですよね。
ちなみに、TV リポーターのKatie Current
(current は「最新の」「潮流、海流」)の声を担当しているのは、NBC の朝のワイドショーの司会者Katie
Couric 。 オスカーがSharkslayer だというニュースを伝えるときに、
You heard it here first.
「最初に報道したのはここ(この番組)です」
と言っていますが、これは90年代以降、視聴率競争でトップを独走しているNBC の報道番組のキャスターたちがよく使う一言です。
ダジャレや言葉遊びがふんだんに含まれた『シャーク・テイル』、『シュレック2』同様、是非ともオリジナルの言語でもう一度お楽しみになってください!
脚注
* 1.エボニクス(Ebonics )
ebony (黒檀)とphonics (音声学)から成る造語で、アフリカン・アメリカンのスラング表現のこと。
関連サイト
ボキャブラリー
prawn :エビ、クルマエビ、テナガエビ
sea horse :タツノオトシゴ
fin :ヒレ