Updated every Monday, 更新日:7月25日
ジャーナリスト 西森マリー先生
日本ではほとんど知られていないもう一つのアメリカから情報発信するジャーナリスト、西森マリーさん。背景を知れば、英語もなっとく。マリーさんから、もう一つのアメリカとアメリカ英語の背景を学ぼう!
アメリカン・カルチャーを知る英語講座 68
映画に出てくる翻訳不可能なジョーク1〜『シュレック2』
Shrek2
今週と来週は子供の映画に出てくる翻訳不可能なジョークに関するお話を。
まず、今回は、『シュレック2(原題:Shrek 2 )』を見てみましょう。
『シュレック2』には、おとぎ話やマザー・グース( * 脚注1) のパロディがたくさん出てきます。
でも、長靴を履いた猫やピノキオみたいな日本の子供たちもよく知っているもの以外のお話は、パロディのシーンを見てもおもしろさがなかなか伝わらないんですよね。たとえば、「Three
Blind Mice 」。
これはマザー・グースの唄の中でとても有名なもので、いくつかバージョンがありますが、一番有名なのはこちらです。
Three blind mice,
Three blind mice
See how they run,
See how they run!
They all ran after
The farmer's wife
She cut off their tails
With a carving knife
Did you ever see
Such a sight in your life
As three blind mice?
(mice:mouseの複数形)
英語圏の人たちは誰もがこの唄を知っているので、シュレックのお友だちのthree blind mice が駆け回る姿を見ただけで思わず笑ってしまうんですよね。次に、同じくマザー・グースの唄の中で非常に有名な「Muffin
Man 」を見てみましょう。
Oh do you know the muffin man,
The muffin man, the muffin man?
Oh do you know the muffin man,
That lives on Drury Lane?
Yes I know the muffin man,
The muffin man, the muffin man.
Yes I know the muffin man,
That lives on Drury Lane.
(muffin man:マフィン売り、Drury Lane:ロンドンにある通りの名前)
これも、英語圏の人なら誰でも知っている唄。ですから、シュレックに、
Do you still know the Muffin Man?
「まだマフィン・マンと知り合いかい?」
と聞かれて、ジンジャーブレッド・マンが、
Yes, he's down on the Drury Lane.
と答えたとたん、英語圏の人はまたまた思わず笑ってしまうのです。
ちなみに、ジンジャーブレッド・マンは、オーブンから逃げ出して、農夫や様々な動物たちの追跡を交わしたものの、最後に悪賢い狐に食べられてしまう、という童話のキャラクターで、「早く走れる人」や「追っ手を交わしても最後には騙されてしまう人」などの代名詞として使われます。
『シュレック2』には、大人向けのジョークもたくさん出てくるので、いくつかご紹介しておきましょう。
まず、魔法の薬を飲んでwhite bronco (白い野生に近い馬)に変身したドンキー(声はエディ・マーフィー)が逃げるシーンは、O.J. シンプソン(妻殺しの容疑で逮捕され無罪になった元フットボール・スター/映画俳優)がフォード社のwhite
Bronco (白いブロンコ、ブロンコは車の名前)に乗ってスロー・スピードで逃走した(全国ネットで生中継されました)ことのパロディ。
結婚式の中継は、アカデミー賞授賞式直前にスターたちが会場に到着する様子を生中継する番組のパロディで、結婚式の中継をしているキャラクターはジョーン・リバース(この十数年間スター到着中継番組の司会を勤めているコメディアン)のパロディで、声は彼女が担当していて、顔も彼女にそっくりです。
長靴を履いた猫に襲われたときにドンキーが言う台詞、
Give him the Bob Barker treatment!
「ボブ・バーカーの措置をしてやろう!」
のボブ・バーカーは「The Price is Right 」という主婦向けのお値段当てクイズ番組の司会者。動物への人道的扱いを主張して、優勝者に毛皮を与えるミス・コンの司会を断ったことでも有名ですが、普段はペットの犬や猫へspay
& neuter (卵巣摘出・去勢手術)をすることを勧める、などの動物と人間の共存をめざす活動をしているので、この一言は「去勢してやれ!」という意味なんですよね。
また、シュレック(声:マイク・マイヤーズ)はスコットランド英語(非常にいい意味で田舎臭くて温かい感じがします)、フィオナ(キャメロン・ディアス)はアメリカ英語(庶民的な感じがします)、ドンキーはエボニクス( * 脚注2) (ヒップで下町っぽい)、長靴を履いた猫(アントニオ・バンデラス)がラテン訛りの英語(情熱的な雰囲気を醸し出しています)であるのに対し、フィオナの両親(ジュリー・アンドリュース、ジョン・クリース)と妖精のゴッド・マザー(ジェニファー・ソーンダース)、チャーミング王子(ルパート・エヴェレット)が上品なイギリス英語(格調高く、冷たい感じがします)を話していて、それぞれの英語がキャラクターの性格を表すのに欠かせない小道具となっています。
つまり、この映画は訛り一つをとってみても、英語で見るとおもしろさが倍増する、ということなのです!
脚注
* 1.マザー・グース(Mother Goose )
イギリスやアメリカで伝承されてきた童謡のこと。「キラキラ星」「メリーさんの羊」などもマザー・グースの唄。
* 2.エボニクス(Ebonics )
ebony (黒檀)とphonics (音声学)から成る造語で、アフリカン・アメリカンのスラング表現のこと。
関連サイト
ボキャブラリー
mice :mouse (ねずみ)の複数形
spay :卵巣を除去する
neuter :去勢する