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アメリカン・カルチャーを知る英語講座

Updated every Monday, 更新日:7月4日

ジャーナリスト 西森マリー先生

西森先生
西森先生のプロフィール
日本ではほとんど知られていないもう一つのアメリカから情報発信するジャーナリスト、西森マリーさん。背景を知れば、英語もなっとく。マリーさんから、もう一つのアメリカとアメリカ英語の背景を学ぼう!


アメリカン・カルチャーを知る英語講座 65

洋画をネイティブ感覚で鑑賞するために必要なキリスト教の知識9〜『ドグマ』その1
Dogma: Part 1
 

今週から数週間、ベン・アフレック、マット・デイモン主演の映画『ドグマ(原題:Dogma)*脚注1)』を鑑賞するために必要な、キリスト教の基礎知識に関する話題をお届けしましょう。


『ドグマ』は、神に追放された2人の堕天使ロキ(マット・デイモン)とバートルビー(ベン・アフレック)が天国への帰還をもくろむというあらすじで、アメリカでは公開当時、カトリックや原理主義者たちから激しく非難された映画です。

今週は、ロキとバートルビーの台詞を理解するために役立つ聖書のエピソードをご紹介しましょう。

まず、創世記に出てくるソドムとゴモラから。
ソドムとゴモラは邪悪に満ちた町で、神はこの2つの町を滅ぼそうと決心しますが、その前にソドムに住む善良な人間ロトと彼の家族だけは助けることにし、ロトのもとに天使を二人派遣します。

天使のうちの一人が、ロトにこう言います。

Escape for thy life; look not behind thee, neither stay thou in all the plain; escape to the mountain, lest thou be consumed.
「逃げて、自分の命を救いなさい。後ろを振り返って見てはいけません。低地で立ち止まってはいけません。山に逃げなさい。さもないとあなたは滅ぼされます」

Then the LORD rained upon Sodom and upon Gomorrah brimstone and fire from the LORD out of heaven; And he overthrew those cities, and all the plain, and all the inhabitants of the cities, and that which grew upon the ground. But his wife looked back from behind him, and she became a pillar of salt.
「主は硫黄と火を主の居る所、つまり天からソドムとゴモラに降り注ぎ、これらの町と全ての低地と、これらの町の全ての住人とその地に生えているものを滅ぼした。しかし、ロトに続いていた彼の妻は振り返ったため塩の柱になった」


次に、モーゼがイスラエルの民をエジプトから救出するくだりを見てみましょう。
ファラオがモーゼの言葉を聞き入れないので、神はまずアーロン(モーゼの兄弟)の杖を蛇に変えて、エジプト人に神の威力を見せつけ、さらにモーゼにこう告げます。

Say unto Aaron, Take thy rod, and stretch out thine hand upon the waters of Egypt, upon their streams, upon their rivers, and upon their ponds, and upon all their pools of water, that they may become blood.
「アーロンに言いなさい。『杖を取って、エジプトの水という水、小川、水路、池、そしてあらゆる水溜の上に手を伸ばし水を血に変えよ』と」

すると、エジプト中の水が血に変わって、魚は死に、エジプト人はナイルの水が飲めなくなりますが、それでもファラオがイスラエルの民を解放を拒みます。

そのため、神はエジプトにカエル、ブヨ、アブの大群を送り、エジプト中の家畜を疫病で死なせ、人と動物に膿の出る腫れ物を負わせ、ひょうを降らせ、イナゴの大群を送り込み、エジプト中を暗闇で多い、エジプト人の初子(first born)を皆殺しにします。

この一連の災害は、「エジプトの災い(the Plagues of Egypt)」、または「エジプトの10の災い(the Ten Plagues of Egypt)」と呼ばれています。

これらの災いの後、イスラエルの民はやっとエジプトから逃げ出しますが、モーゼが山の上で神の声を聞いている間に十戒の最初の2つの掟*脚注2)

Thou shalt have no other gods before me.
「汝、私(話者は神)以外の神を崇めるなかれ」



Thou shalt not make unto thee any graven image.
「汝、刻んだ像を造るなかれ」(偶像崇拝の禁止)

に逆らってしまいます。

And when the people saw that Moses delayed to come down out of the mount, the people gathered themselves together unto Aaron, and said unto him, Up, make us gods, which shall go before us; for as for this Moses, the man that brought us up out of the land of Egypt, we wot not what is become of him.
「(イスラエルの)民はモーゼが山からなかなか下りてこなかったので、アーロンのもとに集まり彼に言った:私たちを導いてくれる神を私たちのために造ってください。私たちをエジプトからエジプトの国から導き出してくれたモーゼがどうなったのか分からないのですから」(wotはknowを意味する文語)

And Aaron said unto them, Break off the golden earrings, which are in the ears of your wives, of your sons, and of your daughters, and bring them unto me. And all the people brake off the golden earrings which were in their ears, and brought them unto Aaron.
「アーロンは彼らに言った:あなたがたの妻、息子、娘たちの金の耳飾りをはずして私のところに持ってきなさい。民は皆金の耳飾りをはずしてアーロンのもとへ持って来た」

And he received them at their hand, and fashioned it with a graving tool, after he had made it a molten calf: and they said, These be thy gods, O Israel, which brought thee up out of the land of Egypt.
「アーロンがこれらを彼らの手から受け取り、工具で鋳型を造り、子牛の形に作り上げると、彼らは言った:イスラエルよ、これはあなたをエジプトの国から導き出したあなたの神である」

神の掟を守らなかったイスラエルの民を見て、神は激怒して民に災いを与えます。


これらの記述をふまえて、映画『ドグマ』の台詞を見てみましょう。
まず、神を怒らせて地上に追放された天使ロキとバートルビーの会話です。

彼らは天国に帰ろうとしているのですが、その前に一仕事したいと思っているロキが、資本主義の悪いところを全て備えている大企業のパンフレットをバートルビーに見せるシーンです。

Loki: There's just one thing I think we've gotta do before we leave. This is gonna help us get back on his good side.
Bartleby: What?
Loki: Here. I've been dreaming about this for five years. Read that.
Bartleby: "Mooby the Golden Calf. Creating an empire out of simplicity"
Loki: I wanna hit 'em.
ロキ: (地上から)出て行く前にやっておいたほうがいいことがある。これをやればきっと彼(神)にまた気に入ってもらえるよ。
バートルビー: 何だよ。
ロキ: これだよ。5年間もずっとやりたいと思ってた。読んで。
バートルビー: 「黄金の子牛、ムービー。シンプルなことから帝国を建造」
ロキ: こいつらをやっつけたい。
Moobyは牛の鳴き声 moo にかけたものです)

その後、バートルビーに a killing spree(人殺しにふけること)は神を喜ばせることではない、と言われたロキはこう答えます。

I'm talking about Divine Justice here. I'm talking about raining down fire and brimstone, punishing the wicked. He's all about that. I know he'd want this done.
「神の正義を行おうって言ってるんだよ。炎と硫黄を降り注ぎ、邪悪な者どもを罰してやろうって言ってるのさ。彼(神)の大好きなことだ。神は絶対彼らに罰を下してやりたいと思ってるよ」

二人が、「Mooby the Golden Calf」の重役が会議を開いている席に押しかけるシーンでは、金色の子牛の像が出てきます。

黄金の子牛像が邪悪のシンボル、炎と硫黄を降り注ぐことが神の怒りの象徴であることを知っていると、これらのシーンや台詞の背景にあるコノテイション(言外の意味)をハッキリと読み取ることができますよね。

来週は、ロキとバートルビー以外の登場人物の台詞の背景にある聖書のエピソードをご紹介しましょう。

脚注
*1.ドグマ:教義
宗教の教えを体系化したもの。

*2.十戒
エジプトで奴隷となっていたイスラエルの民を救い出したモーゼが、神から授かった十箇条の掟のこと。詳しい内容については過去のコラム「キリスト教の神の国:アメリカ」を参照のこと。

関連サイト
DVD『ドグマ(原題:Dogma)』

  DVD『ドグマ(原題:Dogma)』
 

ボキャブラリー
Lord :神、主人、支配者
plague:疫病、災い
graven image :偶像、彫像
spree:(欲望などに)ふけること
brimstone:硫黄、地獄の業火

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