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アメリカン・カルチャーを知る英語講座

Updated every Monday, 更新日:5月9日

ジャーナリスト 西森マリー先生

西森先生
西森先生のプロフィール
日本ではほとんど知られていないもう一つのアメリカから情報発信するジャーナリスト、西森マリーさん。背景を知れば、英語もなっとく。マリーさんから、もう一つのアメリカとアメリカ英語の背景を学ぼう!


アメリカン・カルチャーを知る英語講座 57

洋画をネイティブ感覚で鑑賞するために必要なキリスト教の知識1〜『悪霊喰』
The Order
 

今週からキリスト教関連の映画と、その背景に関してお届けします。



一回目は、ヒース・レジャー主演の『悪霊喰(原題:The Order)』。

タイトルだけですと、一見B級ホラーかと思いますが、この作品は、以前ご紹介した『エクソシスト(原題:The Exorcist)』と同じように、キリスト教文化に触れられる内容です。

ただ、この作品のプロットは、キリスト教、カトリックに関する根本的な知識がないとわかりにくい部分が多いんですよね。

まず、映画の冒頭で主役の神父(priest)であるアレックス(ヒース・レジャー)が語っているモノローグを見てみましょう。

Every life is a riddle. The answer to mine is a knowledge born of darkness.
「どんな人生も謎である。私の謎に対する答えは闇から生まれた知識だ」

次に、悪者が死ぬ前にアレックスの同僚トーマスに言った一言を見てみましょう。

Your church will be lost, priest. The dark pope rises.
「神父さん、あんたの教会は滅びて、闇の法王が出現するんだ」

両方とも、単に和訳しただけも「闇」=「悪」というニュアンスは伝わると思いますが、キリスト教徒にとってdark, darknessとは、神に背き神に戦いを挑むサタン(Satan:悪魔)の象徴なんですよね。

ですから、キリスト教徒たちはこの二つの台詞から「アレックスが悪魔の手先になってしまった」、「カトリック教会が悪魔の手先になる日が近い」という意味を読み取ることができるのです。

ちなみに、キリスト教では悪魔はSatan以外にLucifer, Beelzebubなどとも呼ばれ、the Prince of Darknessというニックネームも持っています。

この映画では自殺したとされる神父が教会の墓地に埋めてもらえない、というシーンが出てきますが、これはカトリックが自殺を「大罪(a cardinal sin)」と考えているから。

この映画のもう一人の主役は、カトリック教会から見捨てられた人々の罪を吸収してくれるthe Sin Eater(罪食い人)。

カトリックの教えを信じている人たちは、死ぬ前に神父さんから罪の許し(absolution)を与えてもらわないと天国に行けないと信じていますが、自殺を図った人々を含めカトリックの教義に背いた人々は、死に瀕しても神父が罪の許しを与えてくれません。

そのため、「彼らは、the Sin Eaterに罪を吸収してもらい裏口から天国に入る、という手段を取っている」というのがこの映画のプロットなのです。

自殺をしても天国に行けるし、罪を犯しても精進すれば天国に行ける、という日本的な考え方だと、わかりにくいプロット・ラインですよね。

キリスト教徒の多くは、ジーザスを受け入れた者しか天国に行けない、と信じていて、カトリック教徒が神父から罪の許しを得ないと天国に行けない、と信じているからこそ、このプロットが成り立っているわけです。


神と悪魔の位置関係、さらに罪の許しの重要性を明示している聖書の記述を見てみましょう。

キリスト教の布教に最も深く貢献した使徒パウロの前に、はりつけになって死んだはずのジーザスが姿を現しこう言っています。

I have appeared unto thee for this purpose, to make thee a minister and a witness both of these things which thou hast seen, and of those things in the which I will appear unto thee;
「私があなたの前に現れたのは、あなたが見たこと、これから私があなたに示そうとすること両方の奉仕者、および証人にあなたを任命するためです。

Delivering thee from the people, and from the Gentiles, unto whom now I send thee,To open their eyes, and to turn them from darkness to light, and from the power of Satan unto God,
私は、この民(ユダヤの民)と異邦人(両方ともキリスト教を迫害している)から、あなたを救い出し彼らのところにあなたを遣わせます。それは彼らの目を開いて闇から光に、サタンの支配から神のもとへ彼らを戻すためです。

that they may receive forgiveness of sins, and inheritance among them which are sanctified by faith that is in me.
そして、彼らが罪の許しを得て、私を信じることによって清められた者たちと共に神の国を受け継げるようにするためです」


the Sin Eater
が殺人を犯した大金持ちの死の床に呼ばれ、罪吸収の儀式を行うときに、こう言っています。

Christ on the cross he gave forgiveness to a thief being crucified alongside him. The church would not have allowed it. But Christ did.
「十字架にかけられたキリストは、隣ではりつけになっている泥棒に許しを与えた。教会(カトリック教会)はそういう行為は許さなかっただろうが、キリストは許しを与えた」

これは、カトリック教会に対する痛烈な批判ですよね。ジーザスは、姦淫(大罪とみなされています)の罪で石打ちの刑に処せられようとしている女性を救っていますが、カトリック教会は、自らが作り上げたドクトリン(教義)に捕らわれて「博愛」というキリスト教の根本的な教えから遠ざかってしまった、と言ってるわけです。

最後に、アレックスに思いを寄せる女性マーラに関して語る、トーマスの台詞を見てみましょう。

Oh, women. Can't live with'em. CAN'T LIVE WITH 'EM!.

これは、英語圏でよく言われる決まり文句、

Women. Can't live with 'em. Can't live without 'em.
「女ってのは、いるとやっかいだけど、いないと困る存在だ」

をもじったもので、「女性っていうのは、一緒に住むことはできないし、我々は女性と一緒には住めないのだ!」という意味。

カトリックの神父は「独身主義・禁欲(celibacy)」を貫かなくてはいけない、ということを知っていると、この台詞の意味がよ〜く分かりますよね。

来週は、ショーン・コネリーが英国アカデミー賞主演男優賞を受賞した映画『薔薇の名前』の文化背景を見てみましょう。

関連サイト
映画『悪霊喰(原題:The Order)』のオフィシャルサイト(予告編が見られる)
 
  DVD『悪霊喰(原題:The Order)』  
   
 

ボキャブラリー
exorcist:悪魔払いの祈祷師
priest:聖職者、神父、牧師
pope:法王、教皇
cardinal:主要な(Cardinalで枢機卿)
sin:罪
absolution:罪の許し、赦免
forgiveness:許し、寛容
celibacy:(宗教的理由による)独身

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