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アメリカン・カルチャーを知る英語講座

Updated every Monday, 更新日:5月2日

ジャーナリスト 西森マリー先生

西森先生
西森先生のプロフィール
日本ではほとんど知られていないもう一つのアメリカから情報発信するジャーナリスト、西森マリーさん。背景を知れば、英語もなっとく。マリーさんから、もう一つのアメリカとアメリカ英語の背景を学ぼう!


アメリカン・カルチャーを知る英語講座 56

洋画をネイティブ感覚で鑑賞するために必要な社会背景5〜スカル・アンド・ボーンズ
Skull and Bones
 

数ヶ月にわたって、映画の台詞やプロット(あらすじ)をネイティブ感覚で鑑賞するために必要な、社会背景の基礎知識に関するコラムをお届けしています。



今週は、数ある大学の社交クラブ、フラターニティの中でも、一番知名度が高いスカル・アンド・ボーンズ(Skull and Bones)に関する話題をお届けしましょう。

イエール大学のフラターニティである、スカル・アンド・ボーンズは、1832年にアヘン売買で巨万の富を築いたラッセル一族のウィリアム・ラッセルと、後に司法長官になったアルフォンソ・タフト(27代大統領ウィリアム・ハワード・タフトの祖父)が設立した組織です。

毎年15〜16人の学生(政財界の大物の子弟や有望な学生など)が入会を許され、週に数回イエールの敷地内にあるTombと呼ばれる窓のない建物で集会を開き、様々な行動を共にし、在学中に築かれた強い絆は卒業後も一生弱まることはない、と言われています。

ただ、Tombの内部にはメンバーしか入れないし、メンバーは「組織のことは外に漏らさない」、と誓約しなければならないため、スカル・アンド・ボーンズの実態はいまだに秘密のベールに包まれたままなのです。

一つはっきり言えることは、メンバー(Bonesmen, Knights of Eulogia, Boodle Boysなどと呼ばれています)に政財界の大物が多いこと。

今の大統領のジョージ・W・ブッシュ、彼の父親と祖父ジョージ・ブッシュ、プレスコット・ブッシュ、民主党のジョン・ケリー上院議員が「Bonesmen」であることは、去年の大統領選のときに大きな話題になりましたよね。

その他にも、国際的な輸送会社FedExの創設者フレデリック・スミス、ブッシュ政権下で証券取引所委員会会長を務めたウィリアム・ドナルドソン、モーガン・スタンリー投資銀行の設立者ハロルド・スタンリー、雑誌TIMEの創刊者ヘンリー・ルース、雑誌Fortune 500のクリエイター、ラッセル・ダベンポート、最高裁判事を務めたポッター・スチュアート、ブッシュの父親が創設したザパタ石油会社の社長を務めたリチャード・ガウ、連邦準備銀行ニューヨーク支店の最初の支店長ピエール・ジェイ、巨大な食品・肥料会社アーチャー・ダニエルズ・ミッドランドの創設者ジョン・トーマス・ダニエルズなど、Bonesmenの多くがアメリカの中枢で要職を占めているのです。

ベストセラーになった『Secrets of the Tomb: Skull and Bones, the Ivy League, and the Hidden Paths of Power(邦題:スカル&ボーンズ―秘密クラブは権力への通路)』の著者アレクサンドラ・ロビンズ(彼女もイエールの卒業生ですがスカル・アンド・ボーンズのメンバーではありません)は、

The only agenda of Skull and Bones is to get its members into positions of power and then to have those members hire others to positions of prominence,
「スカル・アンド・ボーンズの課題はただ一つ。メンバーを権力を有する地位に送り込み、重要なポストに就いたメンバーに他のメンバーを雇わせて要職に就けさせることです」

と言っています。
上記のメンバーたちの肩書きを見ると、ロビンズ氏のこの言葉に深く頷いてしまいますよね。

彼女の本には、「入会の儀式として全裸になり棺桶に横たわり、性体験を含め自分が今までしてきた秘密にしておきたいことを全てメンバーたちに明かさなくてはいけない」と書いてあり、社会心理学者たちは「彼らの結束が堅いのは暗い秘密を分かち合った者同士のみが持ち得る連帯感のせいだろう」と分析しています。

スカル・アンド・ボーンズをモチーフにした映画『ザ・スカルズ/髑髏(どくろ)の誓い(原題:The Skulls)』は、大学の秘密結社に属するエリートたちが殺人事件をもみ消そうとするお話。

公開されたのは2000年ですが、2004年の大統領選で両候補ともBonesmenだったので、この映画が再び脚光を浴び、ブッシュ政権の政治スタイルが、『ザ・スカルズ』に描かれている秘密主義やエリートの優越思想に酷似していることがよく指摘されていました。

映画の中で、メンバーの長老的な存在であるマンドレイク氏が、機密を漏らそうとした新メンバー、ルーク・マクナマラ(家柄はよくないが頭がよい学生)に関して、

It is time to remove Mr. McNamara. He is no longer loyal.
「マクナマラ氏を除名すべき時が来た。彼はもう(この組織に対して)忠実ではないから」

と言っていますが、何よりも組織と仲間への忠誠心を大切にする、というのもBonesmenの特徴の一つ。

ブッシュ政権も実績よりも忠誠を重んじ、政策を決めるまでのプロセスなどを秘密にしておくのが好きなことで知られていますよね。

また、映画では卒業生のレヴィット上院議員が、

Our rules supercede those of the outside world.
「我々のルールは外界の規則に優先する」

と言っていますが、これもブッシュ政権の自己チューなメンタリティを代弁している一言ですよね。

ちなみに、ブッシュ大統領の祖父プレスコット・ブッシュは仲間のBonesmenと一緒にアパッチ族の英雄ジェロニモの頭蓋骨を盗んでTombへの贈り物として捧げた、と言われています。

2003年10月24日にイエール大学の学生新聞Yale Heraldに、「アパッチの族長アンダーソンがジョージ・ブッシュ(現大統領の父親、プレスコット・ブッシュの息子)に会い、ブッシュは彼に頭蓋骨を渡そうとしたが、サイズがあまりに小さく子供の頭蓋骨としか思えなかったので受け取ることを拒否した」と書いてあります。

その後、この事件はうやむやになっているのですが、インディアン・カントリー・トゥデイというネイティブ・アメリカンの新聞の編集長ジム・アダムズ氏は、こう言っています。

Remains of ancestors have been exploited and desecrated for centuries in the name of anthropology or simply for idle curiosity. But even by these standards, it's bizarre and embarrassing that a supposedly elite group would use the remains of any human being for its own entertainment.
「(ネイティブ・アメリカンの)先祖の遺骨は何世紀にも渡って人類学のためという大義名分、あるいは単に興味本位で冒涜されてきましたが、それにしてもエリートであるはずの団体が人間の遺骸を娯楽のために使うとは、奇怪で恥ずべき行為ですね」

みなさんの中にイエール大学に留学なさる方がいらっしゃったら(このごろは女性も入れるそうです)、是非とも実力を最大限に発揮してスカル・アンド・ボーンズにリクルートされるようがんばってください! とりあえずメンバーになって、数年後に暴露本を書けば大ベストセラーになること間違いないですよ!

関連サイト
・スカル・アンド・ボーンズに関する記事
 http://www.cbsnews.com/
 http://www.freep.com/
 http://archive.salon.com/
 http://www.indiancountry.com/content.cfm?id=1086105944
 http://www.indiancountry.com/content.cfm?id=1065807370

・『スカル&ボーンズ―秘密クラブは権力への通路』の著者ロビンズ氏のサイト
 http://skullandcrossbones.org/articles/skullandbones.htm

・Yale Heraldの記事
 http://www.yaleherald.com/article.php?Article=2523

・スカル・アンド・ボーンズに関する本・DVD

  洋書『Secrets of the Tomb: Skull and Bones, the Ivy League, and the Hidden Paths of Power』   日本語訳『スカル&ボーンズ―秘密クラブは権力への通路』
     
  洋書『America's Secret Establishment: An Introduction to the Order of Skull & Bones』   DVD『ザ・スカルズ/髑髏の誓い』
 

ボキャブラリー
kull:頭蓋骨、頭
Tomb:墓穴、墓石
eulogia:祝福
anthropology:人類学
bizarre:奇妙な、奇怪な

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