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アメリカン・カルチャーを知る英語講座

Updated every Monday, 更新日:4月11日

ジャーナリスト 西森マリー先生

西森先生
西森先生のプロフィール
日本ではほとんど知られていないもう一つのアメリカから情報発信するジャーナリスト、西森マリーさん。背景を知れば、英語もなっとく。マリーさんから、もう一つのアメリカとアメリカ英語の背景を学ぼう!


アメリカン・カルチャーを知る英語講座 53
洋画をネイティブ感覚で鑑賞するために必要な社会背景2〜レガシー・プログラム
Legacy Program
 

先週から、映画の台詞やプロット(あらすじ)をネイティブ感覚で鑑賞するために必要な、社会背景の基礎知識に関するコラムをお届けしています。



今週は、アメリカのプレップスクール(大学進学を目指す小中高生のために高度な教育を与える寄宿学校)や多くの大学が実施している「レガシー・プログラム(legacy program)」の話題をお届けしましょう。

レガシー・プログラムは卒業生の子供(学校によっては多額の寄付をしてくれる人や、政治家などの有力者の子孫や親類縁者も含まれます)を成績の良し悪しに関わらず優先的に入学させる制度です。

日本で言えば「裏口入学」ですが、アメリカではこれが制度化されて堂々と行われているのです。

元々は19世紀にハーバードやプリンストン、イエールなどのアイビー・リーグ(*脚注1)の大学が、ユダヤ人学生が増えることを阻止して卒業生(つまりWASP (*脚注2))の子孫を入学しやすくするために設けた制度ですが、今ではほとんどのプレップスクールと公私を問わず多くの大学が寄付金確保のためにレガシー・プログラムを実施しています。

先週ご紹介した映画『青春の輝き(原題:School Ties)』では、富豪の子息チャーリー(マット・デーモン)がカンニングがバレた後にデイビッド(ブレンダン・フレイザー)に、

You know something? I'm still gonna get in to Harvard. And in 10 years nobody's gonna remember any of this. But you'll still be a goddamn Jew.
「言っとくけど、僕はそれでもハーバードに行けるんだ。で、10年後にはこの事件はすっかり忘れさられてるけど、10年経ってもおまえはユダヤ人のままだ」

と言うんですよね。
この台詞、レガシー・プログラムの生い立ちを知ってると胸にズキンと来ますでしょう?


2003年1月15日付けのウォール・ストリート・ジャーナルの記事を見てみましょう。

Sons and daughters of graduates make up 10% to 15% of students at most Ivy League schools and enjoy sharply higher rates of acceptance. Harvard accepts 40% of legacy applicants, compared with an 11% overall acceptance rate. Princeton took 35% of alumni children who applied last year, and 11% of overall applicants. The University of Pennsylvania accepts 41% of legacy applicants, compared with 21% overall.
At Notre Dame, about 23% of all students are children of graduates.

「アイビー・リーグのほとんどで卒業者の息子や娘たちが占める割合は10%〜15%で、彼らの合格率は他の受験者よりはるかに高い。ハーバードの合格率は11%だが、レガシー・プログラムの受験者の合格率は40%だ。2002年のプリンストンの合格率は11%だったが、卒業者の子供の受験者の合格率は35%だった。ペンシルバニア大学の合格率は21%だが、レガシー・プログラムの受験者の合格率は41%だ。ノートル・ダムーの学生の23%は卒業者の子供だ」

1999年1月、ニュー・ヨーク・タイムズ・マガジンに、

three years ago Harvard turned down a remarkable 165 applicants with a 1,600 -- perfect scores -- on the S.A.T.'s.
「3年前、ハーバードではSAT(アメリカの大学進学希望者を対象とした全国共通試験)で満点の1600点を取った受験者165人が不合格になった」

と記されている通り、いかに成績がよくても、家柄などのプラス・アルファがないと有名大学には入れない、ということなのです。

ちなみに、ブッシュ氏がレガシー・プログラムの恩恵を受けてイエール大学やハーバード・ビジネス・スクールに入れたことは有名な話で、彼のSATの点数は1206点(2005年のイエールの中間値は1380〜1580点)でした(コネチカット州選出の上院議員だったブッシュ氏のおじいさんも、テキサスの石油で大もうけし、上院議員に立候補していた父親もイエール大学の卒業生です)。

こうした背景を知っていると、ケビン・クライン主演映画『卒業の朝(原題:The Emperor's Club)』がアメリカで「レガシー・プログラムの醜悪な側面を浮き彫りにした作品」として評価された理由がよく分かるでしょう。

この映画の主人公セジュウィック(エミール・ハーシュ)は向学心ゼロ、性格も悪く、リーダーとしての資質に欠ける人物です。

それでも、父親が富豪の上院議員なので名門プレップスクールに入り、カンニングをしたことがバレてもイエール大学に入学し、親の跡を継いで上院議員に立候補します。

アメリカでこの映画が公開された2002年の暮れは、ちょうどアファーマティブアクション(Affirmative Action (*脚注3))の撤廃を目指しているブッシュ政権の、黒人冷遇政策に改めてスポットライトが当たった時期でした。

そのため、ブッシュ氏とセジュウィックの類似点もチャットルームなどでよく話題になっていました。

特に、歴代ローマ皇帝の名前を列挙できなかったセジュウィックが、白雪姫に出てくる7人のこびとの名前やビートルズのメンバーの名前を言って笑いを取ってごまかそうとしたときに先生が言った台詞は、ブッシュ批判者たちによく引用されたので、最後にご紹介しておきましょう。

Aristophanes once wrote, roughly translated; "Youth ages, immaturity is outgrown, ignorance can be educated, and drunkenness sobered, but STUPID lasts forever."
「アリストファネスはかつてこう書いてる。大意を訳すと、こうなる。『年を重ねれば若さはなくなり、成長すれば未熟さは消え、無知は教育で補われ、酔いはさますことができるが、バカは永遠に治らない』」

日本でも一流私立大学には裕福な家庭の子女が多い、と聞いています。
でも、国公立大学に入るには試験の点のみがモノを言う、という日本はアメリカよりも遙かに教育の機会均等が行き届いた国だと言えるでしょう。

脚注
*1.アイビー・リーグ(Ivy League
アメリカ東部にある名門私立大学の総称。具体的には、ハーバード、イエール、ペンシルバニア、コロンビア、プリンストン、ブラウン、ダートマス、コーネルの8大学を指す。

*2.WASPWhite Anglo-Saxon Protestant
アングロサクソン系(白人)のプロテスタントのこと。アメリカの政治や経済における主要な地位を占めていると言われる。

*3.アファーマティブアクション(Affirmative action
差別を受けてきた黒人などの少数民族や、女性の社会的地位向上のために、教育や雇用に関する優遇措置をとること。これが白人に対する「逆差別」ではないかと問題になっている。積極的優遇措置、積極的差別解消政策、少数派民族優遇措置などとも呼ばれる。affirmativeとは、「積極的な、肯定的な」という意味。

関連サイト
・レガシー・プログラムに関する記事
 http://www.cnn.com/
 http://online.wsj.com/
 http://www.rockridgeinstitute.org/
 http://www.tonyschwartz.com/

  DVD『青春の輝き(原題:School Ties)』   DVD『卒業の朝(原題:The Emperor's Club)』

アメリカの大学のTopランキング2005

イエール大学のSAT中間値について

<アファーマティブアクションについて>
日経ビジネス 時事キーワード

アメリカの大学入試におけるアファーマティブアクションについて

ミシガン大学におけるアファーマティブアクションが違憲がどうかの裁判について

ボキャブラリー
legacy:遺産、名残、先祖伝来のもの、後遺症
goddamn:いまいましい
applicant:応募者、出願者
alumnialumnus(男性)、alumna(女性)の複数形 alumnus/alumna:卒業生、同窓生

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