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【著者からのことば】
翻訳は地味な仕事だ。縁の下を這いずりまわり、ない力を振り絞っているのが翻訳者だ。だが、その役割は決して小さくはない。外国のすぐれた文化、知識、情報を日本人が日本語で吸収できるようにするのが翻訳の役割である。それによって、明日の日本文化を支える基盤を築く一助になるのが翻訳である。
このような重要な役割を担っている点を考えれば、翻訳とは何か、翻訳とはどういう職業かについての真剣な議論がほとんどないのは残念なことだ。翻訳が気楽な副業、気楽な内職になるかのような話ばかりが目につく。翻訳という仕事を軽く見る傾向が、翻訳の学習者や翻訳教育関係者、翻訳書の読者、そして一部の編集者や翻訳者にまであるのは心痛むことだ。
本書が、一生をかけた職業として翻訳に真剣に取り組んでいる人たち、これから取り組もうとしている人たち、編集者や発注者として翻訳に関与している人たち、読者の立場で翻訳に興味をもつ人たちが翻訳について深く考える際に、わずかでもヒントになればと願っている。
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