She is pretty, pretty... と言うから、よほど「きれい」なのかと思ったら、最後は ugly で落ちがつく、有名なギャグがあります。「彼女のことはきれいに忘れろ」と言う時、この「きれいに」は動詞を強調する副詞として機能します。どうやら、pretty(きれいな)が強調の副詞「とても、非常に」の意味を帯びたのは宿命だったようです。そう言えば、口語の
nice and dry(十分乾いて)とか nice and healthy(とても健康そうな)のnice andはveryの意味です。不思議な成句ですが、「良い」が「良く」に転成したと思えば多少は納得できるでしょう。
「良く」は常に「十分に」に変わる体質を持っています。日本語でも、「よく寝た」と「十分寝た」は同意です。したがって、nice
と同意の good に「良い」と「十分な」があってもおかしくないし、副詞 well に「上手に」と「十分に」があるのもうなずけます。He
speaks English well. を「彼は英語が上手だ」と訳すか、「彼の英語は申し分ない」と訳すかの違いに過ぎません。
今でこそ「良い、立派な、親切な」など良いことずくめの nice ですが、当初は目もあてられない意味を引きずっていました。語源辞典によると、‘彼’は
foolish(愚かな)から人生をスタートしています。信じられないことです。 He is nice. が「彼は愚かだ」だったなんて。少し成長して、新たな意味を帯びました。simple(単純な)です。あまり代わり映えがしません。唯一の取り柄は1つのことに打ち込む姿勢でした。彼はワインにはまりました。一意専心、ワインに注ぐその熱意はとうとう彼をソムリエにまで押し上げました。この頃です。彼に「(好みが)うるさい、気難しい」の意味が加わったのは。その代わり、彼が推薦するワインは間違いなく人々の舌を満足させました。あまりにもおいしかったので、人々は彼を見ると「おいしい」を連想してしまいました。彼が出世の糸口をつかんだのはこの時です。意味も
delicious に変わり、あとは順風満帆、出世街道を邁進しました。
nice が good と肩を並べるほど著名になったちょうどその頃、それまで「良い、立派な」とか「親切な」を独りじめしていた
pretty はその意味を nice に譲り、自身は「きれいな」に姿を変え独自の道を歩むことにしました。そう言えば、最近、「おいしい」も
nice や good の意味で使われるようになっています。