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なんや、これ? アメリカと日本
なんや、これ? アメリカと日本

ようやく実現した在留邦人の在外投票になぜ著者は参加できなかったのか。また、「民主主義国アメリカ」でなぜある科学者が濡れ衣のスパイ容疑をかけられたのか。生き馬の目を抜くアメリカの人事事情から、パソコンに四苦八苦する作家の日常まで。渡米してから40年、日米の狭間でイライラ、ヒヤヒヤする著者による最新エッセイ集。

なんや、これ? アメリカと日本
米谷ふみ子(著)

米国アニメの深層

毎年アカデミー賞選考用に夫にビデオが送られてくるが、その中に『トイ・ストーリー2』という、こちらでとても評判のアニメがあった。三歳から五歳くらいの子ども向けであるのでいつもなら観ないのだが、孫ができたため、これを捨てるか取っておくかという判断のために、夫と二人で観たのである。

それで驚いた。こんな小さい子ども用のアニメにまで、いつもアメリカが大統領から大企業の偉いさんまでが合唱している「貿易の敵は日本だ」という概念を間接的にインプットしてあるからだ。

話は、ヤードセール(庭でするガレージセールのようなもの)で、日本の小西という人がオーナーの玩具博物館に売ろうと考えているブローカー(これも日本人のステレオタイプ的にカメラこそ持っていないが、メガネを掛けたアジア人の男)に買われたウッディというカウボーイの人形が、果たして日本に売られるや否やという中味。

子どもにとったらとてもスリルがあって、面白い話であるが、知らぬ間に日本の博物館が悪者として子どもの頭に印象づけられるようになる。ウッディをヤードセールに出した持ち主に属していた玩具の人形たちが、阻止するのにいろいろな冒険をして、そのブローカーから取り返す話である。飛行機の名前はFar East Airlineで、最後の最後でウッディとセットになったほかの人形も行くのをようやく阻止でき、拍手喝采となる。結末の人形たちの言葉が「僕たちは博物館のようなところに納まるよりも、子どもに遊んでもらうのが使命だ」と言われている。

最初からとても戦闘的な雰囲気で、玩具の兵隊や宇宙飛行士が出てくる。そのうえこれから行くぞといさんでいる人形たちが観ているテレビが終わりになったとき、大きな星条旗が出たのも偶然ではない。ナショナリズムを鼓舞している。一体敵はだれだということになる。

観終わってから、私たち二人は同時に後味が悪いと言った。こんなもの孫に観せられない。何か子どもの敵のようにさえ感じた。アメリカ人ばかりのグループで一人日本人の子どもが観なければならない時、その子どもの心境を考えろと言いたい。グローバリゼーションと大きな声で言っているアメリカ、その輸出の目玉である映画製作者の態度がこんな偏狭で天真爛漫な子どもの頭に偏見を叩き込んでいる。もっての外である。あの博物館はサンタフェにある立派な玩具博物館でもよい。子ども向けのアニメに国籍なんて要らない。

そのアニメが日本で公開されて、文部省選定となり、新聞広告では日本のアニメのグル(指導者)たちが技術をべた褒めに褒めている。この人たちはなんとおめでたい人たちなのだと、感心した。内容がどうであるかなんて考えないのだろうか。技術が良ければ良い? 精巧な爆弾が自分に落とされても感心するのだろうか?

日本の「映像新聞」のインタビューに、監督のジョン・ラセターが「玩具博物館を日本に設定したのは遠いところへ行ってしまうというイメージが欲しかったから…。日本で上映する時はドイツの博物館に変えるべきかな。どう思う?」と、言っている。このように彼が気にしていることや、フランスとかオーストリアと言わずに旧敵のドイツに変えると言っているのも、彼らの元々の意図を露呈してる。その質問に対してインタビュアーが「そうしなくてもいいでしょう」と笑っているのもおかしな話である。「ジャップ」と言われて笑う日本人のようだ。

日本人はどこまでおめでたくできているのか、と驚きの一語に尽きる。

と同時に、アメリカの製作者たちのグローバリゼーションを唱えているわりに他国の人々への心遣いがない無神経さにも驚く。子どもを巻き添えにしないで欲しい。

岩波書店『なんや、これ? アメリカと日本』より

Page3:アカデミー賞と少数民族

著者プロフィール
米谷ふみ子(こめたに ふみこ)
1930年、大阪生まれ。作家・画家。大阪女子大学国文科卒業。二科会に三年連続入選し、関西女流美術賞受賞。1960年、米国からフェローシップを受け、渡米。作家ジョシュ・グリーンフェルドと結婚し、二児の母となる。現在、ロスアンジェルス郊外在住。 1985年、『遠来の客』で文学界新人賞、『過越しの祭』で新潮新人賞、第94回芥川賞受賞。1998年、『ファミリー・ビジネス』で女流文学賞受賞。 他の小説に『プロフェッサー・ディア』『0線に向かって』、エッセイ集に『ちょっと聴いてください アメリカよ日本よ』『老いるには覚悟がいる』『けったいなアメリカ人』などがある。

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