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I LOVE 英国フットボール

I LOVE 英国フットボール

I LOVE 英国フットボール
島田佳代子

【著者からのことば】
幸運にも本書を執筆するにあたって、元選手やクラブ関係者など多くの方にに協力して頂きました。彼らの協力もあり、通常日本では知られていないエピソードなどもふんだんに盛り込むことができました。ベッカムやルーニーといった人気英国人選手の活躍に加えて、稲本選手、それに最近の中田選手、中村選手といった日本人選手移籍によってますます日本でも注目を集めはじめた英国フットボール。母国イングランドでは単なるスポーツではなく、文化とも言えます。フットボールにはあまり興味がない、あまり知らないという方にも英国という国を知るひとつのツールとしてぜひ読んで頂けたらと思います。

2005年11月25日、本書にも登場頂いた英国史上最高と呼ばれる伝説的な選手、ジョージ・ベスト氏が永眠されました。あとがきにも彼が一日も早く回復しますようメッセージを書いたのですが、残念ながら叶いませんでした。心よりご冥福をお祈り致します。


なぜ英国代表はオリンピックに参加しないのか?


イギリスの正式名称は「United Kingdom of Great Britain and Northern Island (グレートブリテンおよび北アイルランド連合王国)」で、その名の通り単一国家ではありません。現在ではイギリス内でそれぞれの地域に行くのにパスポートは必要ありませんが、各々の地域には独自の紙幣が流通し、独自の文化が根付いています。スコットランドには、1999年、独立を念頭にいれた独自の議会まで誕生しました。


さて、日本五輪代表も出場したアテネオリンピックですが、イングランド代表の姿がなかったことに気付かれた方はいらっしゃるでしょうか? 彼らは決して予選落ちしたわけではありません。イングランドには参加資格がないのです。というよりも「参加資格を放棄している」と表現したほうが正しいでしょうか。

ワールドカップやヨーロッパ選手権といったフットボールの大会でこそ、イングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドの4チームが各々「代表」として認められていますが、国際オリンピック委員会では「イギリスはひとつの国家」として捉えられているため、先の4チームが別々にオリンピック予選に参加することは許されていないのです。参加するためには「イギリス合同代表チーム」として出場しなければなりません。

たしかにラグビーには「イングランド代表」と4地域合同の「イギリス代表」が存在します。しかしフットボールではアマチュアレベルでこそ存在しますが、プロレベルでの「イギリス代表」はありません。各4協会の実力は過去の歴史をひも解けば明らかで、合同チームが結成されればさぞかし魅力的なチームになることは間違いありません。あまり事情を知らない国外の人間からすると「なんてもったいないことをしているんだ」と思われるでしょう。

しかし、現在に至るまでの歴史のなかでイングランドによる各地域の侵略行為や独立をめぐる紛争といった複雑な背景が絡み合い、お互いがかたくなに手を結ぶことを拒否しているのです。そして現在にいたるまで「合同チーム」が結成される気配はほとんどありませんでした。


ところが、2005年7月6日に2012年のオリンピック開催地がロンドンに決定すると、合同チーム結成の可能性についての話題が紙面をにぎわせはじめました。FAは、「なんとか出場できるように考えたい」と発表。本国開催のオリンピックに出場したいようです。FIFAのブラッター会長も「フットボールは世界的に人気の高いスポーツで、ロンドンでのオリンピック開催でフットボールも大成功することを願っている。いまが解決策を考えるときだ」と初のイギリス代表チーム結成の可能性を示唆しました。

しかし、数日後にスコットランドサッカー協会(以下SFA)が、チーム結成に賛同する意志がないことを表明。もちろんSFAはオリンピックがロンドンで開催されることは喜ばしいことだし、グラスゴーのハンプデン・パークが開催地のひとつに選ばれたことを光栄に思っているそうです。でも、地元のアンケートでは9割を超すサポーターが合同チームの結成に反対しました。結成となればイングランド代表選手が中心となり、イングランドが主権を握るのは明らかです。また、オリンピックだけと結成しても、その後FIFAなどから圧力がかかり、4協会廃止に追い込まれてしまう可能性を一番恐れているようです。

以前、元スコットランド代表のパディ・クレランド氏と話をした際にも「イングランドはあくまでもライバルで、手をつないで一緒にチームを結成することなんて絶対にできない」と猛反対でした。確かにイギリスに暮らし、各地方(国)出身の友人を持つとその複雑な感情がよくわかります。本当に、それぞれが別の国なのです。たとえば、スコットランド人の父とイングランド人の母を持つ人は、自分のことをハーフだと言いますからね(実際は英語ではHalfではなく、Mixedを使います)。事情を知らない日本人からしたら「同じ国じゃないの?」と思いますが、ウェールズ人やスコットランド人に「イングリッシュでしょ?」なんて言ったら、本気で怒られます。気をつけましょう。


なぜ英国代表はオリンピックに参加しないのか?皮肉にも、2006年にドイツで行われるワールドカップの予選は、イングランド、北アイルランドとウェールズといういわば身内同士ともいえる3チームが抽選の結果、同じグループに振り分けられました。北アイルランド以外は独自の国歌も持っているので、試合前の国歌斉唱時にはそれぞれが異なる歌を歌っています。イングランド対北アイルランドという国際試合で同じ国歌が流れるのも、異様な感じです。

リオ・ファーディナンドは「それぞれが別のグループに振り分けられ、予選を突破して本大会に出場できるのが一番だろうが、今回はいわば身内同士の戦いになってしまった。複雑な思いのサポーターも多いだろうが仕方ない。俺たちはあくまでも試合でベストを尽くし、予選突破を目指すだけ」と話していました。



はたして2012年のオリンピック限定という形であれ、『夢のイギリス代表』は実現するのでしょうか? オーバーエイジ枠を使えば、たとえばウェイン・ルーニー、クレイグ・ベラミー、ダレン・フレッチャーが同じチームでプレーするわけですから、世界中のサッカーファンーとしては見てみたいチームではないでしょうか?

 

島田佳代子『I LOVE 英国フットボール』より

著者プロフィール
島田 佳代子(しまだ かよこ)
1978年6月5日生まれ
ポジション・サポーター
164cm/50kg前後
中学生の頃よりマンチェスター・シティとイングランドのフットボールに目覚め、何度かの観戦旅行を経て、99年秋より英国在住。
知らず知らずのうちに培われていた人脈を活かし、サッカー専門誌を中心に多数寄稿中。

島田佳代子さんのサイト
http://www.kayorita.com

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