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パブは愉しい


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【著者からのことば】
こんにちは。坂之上洋子です。今回『犬も歩けば英語にあたる』という英語が勉強できる本を出版しました。国際人になるための常識が英語と共に身につく本、かたく言えばそんな感じですが、電車の中でも読みやすいエッセイ風にまとめてあります。読者の皆さんからは「こんな本今までなかった」「泣けた」「笑った」「元気が出てくる1冊」とうれしい声を寄せていただいています。
●アメリカでの就職体験記
●ゲイの友人のもつ悩み
●色々なことに挑戦する友人たちのエピソード
●愛する人を失う悲しみ
●英語の間違いでの失敗
●貨幣価値のギャップ
などなど。英語を使って仕事をしたい、恋をしたい、アメリカで暮らしたい…そんな人にぴったりです。実は英語の苦手な人にこそ読んでもらいたいです。

犬も歩けば英語にあたる
坂之上洋子

違うものを受け入れる
 
私にはゲイの友人が多くいます。日本人はゲイというと、オカマ(女装した人たち)を想像するみたいですね。
残念ながら、私にはああいう、いわゆるDrag queenといわれる友人はいません。彼らの外見は見事に男。それも筋肉もあって、どちらかというとカッコいい人が多いのです。職業も、店のオーナー、建築家、会社の役員など。つまり彼らは、いたって普通に生活しているわけです。

私はもともと、デザイン関係の仕事をしていました。ゲイの友人が自然に増えたのは、そんな自由な環境にいたからかもしれません。でも、だからといって、私に完全にゲイ差別がなかったかといえば、嘘になります。

私は、正真正銘のストレート(Straightとは、ゲイでない人たちの名称)。異性を好きになった経験しかないので、やっぱり、「なんで、女じゃいけないのよ」と思う気持ちがあったのです。彼らは男らしくてカッコいいうえに、女性の気持ちがよく分かるので、独身のガールフレンドを紹介したくなるのです。

あるとき、こんなことがありました。ゲイの友人のひとりであるレンに、私がずっと疑問だったことを思い切って聞いたのです。

Can you quit being gay?
ゲイであることをやめられる?
 
彼は一瞬とまどい、困った顔をしました。それから、レンはその部屋の窓から見える景色を目を細めて眺めながら、ぽつりぽつりと話しはじめました。
 
I was brought up in the Texas countriside. I was discriminated againt a lot. Once even, some guys surrounded me and beat me almost to death.
僕はね、テキサスの田舎で育ったから、ゲイであることで差別されたり、袋だたきにあって、死にそうになったこともある。
 
My parents are very religious. They don't want to accept me. They don't want anything to do with me.
僕の親は信心深くてね、どうしても受け入れてもらえず、縁を切られたんだ。
 
I asked myself over and over, Why I should be gay, if I'm discriminated against and despised for it.
どうして、こんなに差別され、軽蔑されるのに、ゲイでいなくちゃいけないんだって、何度も自問したよ。
 
レンはいつも明るくて、冗談ばかり言っている人です。このとき、彼の痛みをはじめて垣間見た私は、ただ呆然と立ちすくんでしまいました。
それから彼は、「僕は小学生のときから、自分は何かしら人と違うんだって分かっていた」とも言いました。
 
I'd be the first one who'd be straight, if I could.
もしストレートに変われるなら、僕が一番に変わるよ。
 
深いグリーンの瞳が苦しそうに歪んだので、私はいっそう苦しくなりました。それから、レンはふと我に返り、照れたように微笑みました。
 
Thank you for listening.
聞いてくれてありがとう。
 
私は、こんなことを聞いてしまった自分が恥ずかしくなり、うなだれてしまいました。気の利いた言葉をかけてあげようと思いながら、何も思い浮かびません。レンはタバコを取り出し、私は床に視線を落としたまま、時間が過ぎていきました。

きっと、このときから私は少しずつ、自分と違う人たちをそのままの状態でacceptする(受け入れる)ことを習った気がするのです。

坂之上洋子『犬も歩けば英語にあたる』より
Page3:パーティーで聞いてはいけないこと

著者プロフィール
坂之上 洋子(さかのうえ ようこ)
イリノイ州ハーリントン大学を卒業後、デザイナーとして全米で最も有名な賞であるASIDエクセレント賞を受賞する。ほか数多くの受賞経験。米国企業Haverson, Gettysにて実績を積み、98年米国Eコマ−スのコンサルティング会社の副社長に。その後独立し、広告ウェブサイト制作会社ブルービーグル(ニューヨーク本社、北京支社、東京支社)を設立。代表取締役社長。
日本・アメリカ・中国と、自らの海外体験をもとに、朝日新聞のメルマガでリアルな異文化エッセイを執筆。それが読者のあいだで大人気になる。

坂之上洋子さんのサイト
http://www.sakanoue.com

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