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美しい人は、話す言葉も美しい。

「ローマの休日」「ティファニーで朝食を」など、オードリー・ヘプバーンが出演した映画全27作品の中の名せりふと、インタビューでの発言、友人に語った言葉などを収録。役柄に応じた英語の話し方を熱心に学んだオードリーの英語は、上流階級の言葉でもなく、英語でも米語でもない、どのカテゴリーにもあてはまらないスタイルだった。だからこそ、彼女の話す英語は世界中で受け入れられたという。そんなオードリーの上品で個性的な英語が学べ、出演作の裏話や彼女の人柄が垣間見られる一冊だ。

『オードリーのように英語を話したい!』原島一男著(The Japan Times/1,500円)


ティファニーで朝食を
Breakfast at Tiffany's


The way I see it, I haven't got the right to give him one. We don't belong to each other.
わたしには、このネコに名前をつける権利はないの。おたがいに、どっちのものでもないの。

Moon River, wider than a mile
I'm crossin' you in style some day
1マイルより広いムーン・リヴァ−、
いつか、かっこよく渡ってみよう。



製作年 1961年
監督 ブレイク・エドワーズ
原案 トルーマン・カポーティ
脚本 ジョージ・アクセルロッド
DVD パラマウント ホーム エンタテインメント 3,980円(税抜き)

ハリウッド・デビューから9本目の作品で、オードリーは初めて清純さを売りものにしない映画に出演します。マリリン・モンローをイメージしていた原作者トルーマン・カポーティは不満でしたが、結果は大成功、オードリーの代表作のひとつになりました。


オードリーはあの役に向いていない

オードリーは、迷った末に、ホリー・ゴライトリーの役を引き受けました。パラマウント社との契約で、あと3本の映画に出演しなければならなかったという事情のほかに、1960年代に入って、世の中の道徳観が変わりつつあり、イメージを変えなければ新鮮味を出せないと考えたのです。

原作者のトルーマン・カポーティは、マリリン・モンローを思い描きながら、この小説を書きました。オードリーは初めから選択肢に含まれていませんでした。「マリリンなら本当に文句がなかった」と彼は言っています。「オードリーは、あの役には向いていない」と。

といっても、20世紀フォックスに属していたモンローを借り出すことは不可能でした。それで、パラマウントはオードリーに出演を促しました。ブレイク・エドワーズ監督は、ホリーの役がオードリーのイメージに合わないとしても自分のやり方で撮るので、心配はいらない、と彼女を説得しました。ホリーは原作では娼婦ですが、脚本家のアクセルロッドは、女優の卵に設定を変えました。エドワーズ監督は、ヒロインであるホリーの願望が果てしない空想の中で広がっていく様を、斬新なショットを積み上げることで表し、インパクトのあるタイトル・シーンを作りました。


「お互いにどっちのものでもないの」

ホリーの内面生活が紹介されたタイトル・シーンの後、ホリーは自宅のアパートヘ帰ります。ブザーの音で玄関を開けると、トランクを手にしたポール・バージャク(ジョージ・ペパード)が目の前に。ポールは、生活のために有閑マダムの恋の相手をする作家志望の青年で、ホリ一と同じアパートに引っ越してきたのです。

ホリーは、人前では楽しげに振る舞っていても、心のどこかでは寂しさと戦っている非常に繊細な神経の持ち主です。彼女はポールに自分のネコを指しながら、こう言います。


Poor slob without a name! The way I see it, I haven't got the right to give him one. We don't belong to each other. We just took up by the river one day. I don't even want to own anything until I find a place where me and things go together. I'm not sure where that is, but I know what it is like. It's like Tiffany's.
「名無しのおバカさん。わたしには、このネコに名前をつける権利はないの。お互いにどっちのものでもないの。ある日、川のそばで会っただけなのよ。わたしは、わたしの持ち物と一緒にいられる場所が見つかるまでは、何も持ちたくない。そこは、どこだかわからないわ。でも、どんなところかは想像できるわ。ティファニーみたいなところよ」



ホリーは、ネコの自由に自分の自由を見ています。オードリーの生き方や発言を見ると、人生に大切なもののひとつは、自由と自立だと考えていたことがうかがえます。このせりふにも共感した部分があったのではないでしょうか。


オードリーのトレードマークとなった「ムーン・リヴァー」

『ティファニーで朝食を』のベストシーンは、何といっても、オードリーが「ムーン・リヴァー」を歌うシーンです。アパートの非常階段に座って、ギターをつまびきながら歌います。

「ムーン・リヴァー」は、ホリー・ゴライトリーがまだテキサスにいたときから抱いてきた「夢」がテーマになっています。原作には「眠りたくないし、死にたくもない、ただ旅して行きたいだけ、大空の牧場を通って」という一節があるだけですが、作詞家ジョニー・マーサーは、この延長線上にマーク・トウェインの小説ハックルベリー・フィンを加えて、情緒を盛り上げました。

作曲家ヘンリー・マンシーニはこう語っています。
「この曲は私が手掛けた中で最も難しい曲でした。ヒロインが非常階段でどのように歌うのかわからなかったのです。ポップな歌なのかブルース調がいいのか、イメージを固めるのにまる1か月もかかりました。あるとき、ふと、あのメロディが浮かんだ。そして、彼女はあの歌を、心を込めて歌った。彼女は自分が何をしているのか、歌詞がどういうものかをわかっていたのです」

マンシーニはこの曲でアカデミー賞とグラミー賞の両方を受け、その表彰式の司会を務めたアンディ・ウィリアムズがレコーディングして、世界中で知らない人がいないほどのヒット曲となりました。

ところが驚くべきことに、この「ムーン・リヴァー」が編集段階で危うく捨てられてしまうところだった、とアメリカの伝記作家バリー・パリスは述べています。
「…(パラマウント社の)社長は葉巻をくわえて部屋のなかを歩きまわりながら、最初にこう言った。『ひとつ注文だが、あの歌はカットできるな』と。すると、オードリーがさっと立ち上がって言った。『わたしが生きているうちはダメです』(Audrey Hepburn by BP, p.172)」
「ムーン・リヴァー」はオードリーのトレードマークになりました。映画のテーマ曲が主演女優と結びついた例はそれほど多くはありません。彼女が亡くなったとき、ティファニーは世界中の店に「私たちのハックルベリー・フレンド」という看板を出しました。

 映画の評価   ★ ★ ★ ★ ★

『オードリーのように英語を話したい!』(The Japan Times)より

Page3:「日本人に見えるんじゃないかしら」
(日本のオードリー人気を知って語った言葉)


著者プロフィール
原島一男(はらしまかずお)
慶応義塾大学経済学部卒業。米国ボストン大学大学院コミュニケーション学科へ留学後、1959年にNHK国際局へ入局。1991年までの32年間、英語ニュース記者、英語番組チーフ・プロデューサーなどを務める。その後、山一電機株式会社で取締役・経営企画部長を務める。 現在はフリーランス・ジャーナリスト。日本記者クラブ会員。日本ペンクラブ会員。映画英語教育学会会員。 著書に『映画の英語ー心にのこる名場面・名せりふ』(ジャパンタイムズ)、『店員さんの英会話』(ジオス)、『味わいシネマガイド』(学習研究社)などがある。また、NHK語学教育番組のテキストに、映画の英語にかんするエッセイを7年以上にわたり執筆している。 趣味は、ドライブ、海外旅行、オーディオ。 ホームページのアドレスは、http://home.catv.ne.jp/kk/icooky/

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