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美しい人は、話す言葉も美しい。

「ローマの休日」「ティファニーで朝食を」など、オードリー・ヘプバーンが出演した映画全27作品の中の名せりふと、インタビューでの発言、友人に語った言葉などを収録。役柄に応じた英語の話し方を熱心に学んだオードリーの英語は、上流階級の言葉でもなく、英語でも米語でもない、どのカテゴリーにもあてはまらないスタイルだった。だからこそ、彼女の話す英語は世界中で受け入れられたという。そんなオードリーの上品で個性的な英語が学べ、出演作の裏話や彼女の人柄が垣間見られる一冊だ。

『オードリーのように英語を話したい!』原島一男著(The Japan Times/1,500円)


ローマの休日
Roman Holiday


Can I have a silk nightgown with rosebuds on it?
バラのつばみの柄のシルクのナイトガウンありますか?

I'd like to do just whatever I like - the whole day long.
わたし、ただ1日中、やりたいことを何でもやってみたいの。

No...please...nothing.
お願いだから、何もおっしゃらないで

I will cherish my visit here in memory, as long as l live.
わたしはここを訪れたことを一生の思い出として懐かしみます。


製作年 1953年
監督 ウィリアム・ワイラー
原案 ダルトン・トランボ
脚本 ジョン・ダイトン 
    イアン・マクラレン・ハンター
DVD  製作50周年記念デジタル・ニューマスター版2枚組
    パラマウント ホーム エンタテインメント 3,980円(税抜き)
     ※2003年12月17日発売 2004年2月末までの期間限定生産

オードリーのために『ローマの休日』があるのか、それとも『ローマの休日』のためにオードリーがあるのか! 彼女がハリウッド初出演でアカデミー賞に輝いた記念碑的な作品。この作品があったからこそ、ミス・オードリー・ヘプバーンが生まれたのです。


「バラ」は王家の象徴

ヨーロッパ某国の王位継承者アン王女(オードリー)は、親善訪問の最後の都市ローマで、1日の日程を終えベッドに入りますが、なかなか眠れません。そこで、お付きの人たちの目を盗んで、そっと大使館を抜け出します。彼女が真夜中の街角で出会ったのは、アメリ力の記者ジョー・ブラッドレー(グレゴリー・ペック)です。ジョーは、身なりの良い、きちんとした言葉づかいのアンを放っておくわけにいかず、タクシーで自分のアパートヘ連れていきます。


I'm terribly sorry to mention it, but the dizziness is getting worse.... Can I sleep here? Can I have a silk nightgown with rosebuds on it?
「こんなことを言って大変失礼なのですが、めまいがひどくなってきました。ここで眠ってもよろしいでしょうか? 
バラのつぼみの柄のシルクのナイトガウンありますか?


これは、アンがジョーの部屋に入った途端に言う言葉。I'm terribly sorry to mention it, ...とていねいで控え目な表現ながら、口調は王女らしさに満ちた命令調です。
「バラのつぼみの柄のナイトガウン」は彼女がいつも寝るときの装いなのでしょう。バラはアンの王家の象徴です。食事会などへ出席するときも、彼女は「白のレースのドレスで小さなピンクのバラを持って」(You will carry a bouquet of very small pink roses.)などと教えられていました。また、側近が王女の寝室にミルクとクラッカーを載せて持ってくる盆には、バラの一輪挿しが添えられているのに気づかれたでしょうか。

翌朝、ジョーは彼女が王女であることに気づきます。「これはスクープのチャンス」とジョーは考えます。写真があればもっといい、と彼は親友のカメラマン、アービング・ラドビッチ(エディ・アルバート)を呼び寄せて、そっとアンの後を追うことにします。


「何でもやってみたいの」─自由を求めるアン王女

ジョーの部屋を後にした王女は、衝動的に入った美容室で長い髪を切ってしまいます。自由の喜びを満喫しつつ、スペイン広場でアイスクリームをなめている彼女のところへジョーが偶然を装って声をかけます。「もう帰らなければ」と言う彼女に、せっかくだから「ゆっくりすれば」とジョー。アンは興奮し

てこう言います。


I'd like to do just whatever I like - the whole day long. I'd like to sit in a sidewalk cafe and look in shop windows, walk in the rain! Have fun and maybe some excitement. It doesn't seem much to you, does it?
わたし、ただ、1日中やりたいことを何でもやってみたいの鋪道のカフェに座ったり、ショーウインドーを見たり、雨の中を歩いたり。いろいろ楽しんだり、何かどきどきすることをしたいわ。あなたにとっては、どうっていうことではないでしょうけど」


この言葉は彼女の夢だったのです。雨の中を歩くなどという庶民にとって当たり前のことに憧れる王女の様子に、ジョーはジョーでスクープへの夢を膨らませます。

ところで、衣装デザインを担当したイーディス・ヘッドは、アン王女が街中を探索するシーンには、王女らしからぬカジュアルな服装を採用しました。だれもが気軽にまねのできるファッションを使って、オードリーと映画を見る人たちとの心理的距離を縮めることを狙ったのです。


「何もおっしゃらないで」─二人が気持ちを確かめ合った瞬間

ジョーと一緒に「真実の口」や「祈りの壁」など名所旧跡を回ったり、スクーターに乗ったり、サンタンジェロ城の下のはしけ船でダンスに興じたアン。そんな楽しみを与えてくれたジョーに対する感謝の気持ちが膨らみます。アンの純粋な様子を見て、ジョーはスクープのために行動している自分が恥ずかしくなり、自責の念にかられます。そんなこともあり、二人はいつしかお互いに相手への想いを募らせていきます。

ジョーは「アーニャ、きみに話したいことがある」(Anya, there's something I want to tell you...)と、自分の心のうちを告白しようとします。アンは、


No...please...nothing.
お願いだから、何もおっしゃらないで



とジョーの言葉を聞こうとしません。祖国への責務から逃れるわけにはいかない。一そのことを、わかりすぎるほどわかっていたからこそ、彼女はこう言うしかなかったのです。相手の気持ちを知りながら、それにこたえたいという気持ちがありながら、相手の言葉を遮った、そんな瞬間でした。

 映画の評価   ★ ★ ★ ★ ★

『オードリーのように英語を話したい!』(The Japan Times)より

Page2:ティファニーで朝食を


著者プロフィール
原島一男(はらしまかずお)
慶応義塾大学経済学部卒業。米国ボストン大学大学院コミュニケーション学科へ留学後、1959年にNHK国際局へ入局。1991年までの32年間、英語ニュース記者、英語番組チーフ・プロデューサーなどを務める。その後、山一電機株式会社で取締役・経営企画部長を務める。 現在はフリーランス・ジャーナリスト。日本記者クラブ会員。日本ペンクラブ会員。映画英語教育学会会員。 著書に『映画の英語ー心にのこる名場面・名せりふ』(ジャパンタイムズ)、『店員さんの英会話』(ジオス)、『味わいシネマガイド』(学習研究社)などがある。また、NHK語学教育番組のテキストに、映画の英語にかんするエッセイを7年以上にわたり執筆している。 趣味は、ドライブ、海外旅行、オーディオ。 ホームページのアドレスは、http://home.catv.ne.jp/kk/icooky/

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