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翻訳家柴田元幸が取材した究極のインタビュー集

翻訳家・柴田元幸が敬愛する現代作家たちを訪ね、「声」を訊き、そして、その声を翻訳したインタビュー集。ポール・オースター、リチャード・パワーズ、カズオ・イシグロ、村上春樹ほか全9人を訪れた。村上春樹へのインタビュー以外はすべて2枚組CDに収録されており、柴田元幸みずからが編集・翻訳。文学ファンのみならず、翻訳家や小説家を志望する方々にオススメの1冊だ。

『ナイン・インタビューズ 柴田元幸と9人の作家たち』柴田元幸編・訳(アルク/2,625円)


Interview Eight:Paul Auster(ポール・オースター)

September 11th [CD-B28]


Shibata: Well, there's, you know, inevitable subject, the September 11th.

Auster:
Yes.

Shibata:
It's such a, you know, vast subject that we couldn't possibly discuss all aspects.

Auster:
No.

Shibata:
So please feel free to discuss whatever aspect you feel like talking about.

Auster:
Okay. Well, I'll do my best. It was a horrifying event for everybody here in New York. And, you know, I wrote a couple of little things about it.

Shibata:
Yes.

Auster:
The day that it was happening, my good friend Michael Naumann, who used to be my German publisher, who is now the editor of Die Zeit which is a weekly German paper, a very good paper, he called me from Germany and said, "You have to write something today, now. You know, we're making a special issue of the paper." And I didn't want to do it at all, but he was so persuasive that I actually went downstairs to my room and spent an hour or so just writing down the things that were happening. And so I did publish that little piece.

Shibata:
Yes. I've already translated it.

Auster:
Yes. You - oh, it's in Japanese, huh?

Shibata:
Yes. Yes.

Auster:
And there was another little thing that I wrote about a month later. The New York Times magazine called up a number of writers and they said, you know, "Please write about something you love about New York." And I again, I wrote a very small piece about the subway. And so that's the only writing I did.

I must say that I was devastated, and I was in a state of shock and grief for a very long time. Personally, it felt like I was part of some very big family tragedy. It was, you know, way beyond the level of politics, and wars, and Bush, and bin Laden. It was a very immediate, local event in which 3,000 people who live in this town that I live in were killed in one day, and it was very personal, very hard to, to deal with.

And it happened, you know, right after I had finished my novel so I was already feeling a bit lost and exhausted, and then this happened. So for a little while, for about two weeks after, I didn't know what to do. I simply didn't know how I was going to get through my days. I couldn't work. I couldn't think.

And so for that period, I accepted interviews, I did a lot of interviews with different people from the press from all over the world. TV and newspapers and radio, and just to keep myself busy. Just to fill up the time.

And then something very interesting happened. The book of the stories came out, the National Story Project book.

Shibata:
Yes.


オースターにとっての9・11

柴田 そして、やはり、避けて通れない話題として、9月11日……

オースター うん。

柴田 とにかく大きい問題だから、すべての面を話すのはとても無理です。

オースター そうだね。

柴田 だから、ご自由に、どういう点でもけっこうですから。

オースター うん。やってみるよ。ニューヨークに住む人間みんなにとって、本当に恐ろしい事件だった。それについて、僕が2度ばかり書いたことは知ってるよね。

柴田 ええ。

オースター あの日、以前僕の本をドイツで出版していたミヒャエル・ナウマンから電話がかかってきた。ミヒャエルは今、ドイツの非常に良質な週刊紙『ディー・ツァイト』の編集をやっているんだが、君、このことを今日、いま書かなくちゃいけないよ、とミヒャエルが言うんだ。特別号を出すから、というんだね。僕は全然そんな気になれなかったけど、彼はすごく説得が上手で、結局僕は、書斎に降りていって、一時間かそこら使って、たったいま起きていることを書いた。で、あの短い文章を発表したわけだ。

柴田 ええ、あれはもう翻訳しました。

オースター そうか、もう日本語になってるんだね?

柴田 ええ。

オースター それから1ヵ月後、もう一つちょっとした文章を書いた。『ニューヨークタイムズ・マガジン』が何人かの作家に電話して、「ニューヨークで好きなものについて書いてください」と依頼したんだ。というわけでまた、今度は地下鉄についてのすごく短い文章を書いた。あのころ書いたものといえば、それだけだよ。

あの事件に僕は打ちのめされて、ずいぶん長いあいだ呆然として、悲しみに暮れていた。個人的には、巨大な家庭内悲劇にかかわっている気分だった。それは政治だとか、戦争だとか、ブッシュ、ビンラディンとかいった話を超えたところにある気持ちだった。これはすごく直接的な、この街での出来事だったんだ。僕が住んでいるこの街に住んでいた3000人の人が、1日で死んだんだ。すごくパーソナルな、つらい体験だった。

あのとき僕は『幻影の書』を書いた直後で、ただでさえどこか途方に暮れたような、疲れたような状態だった。それから、それからあの事件があって……しばらくは、その後2週間くらいは、どうしていいかわからなかったよ。どうやって毎日を生きていったらいいのか、見当もつかなかった。仕事も手につかない。考えることもできなかった。

だからその期間、とにかくインタビューを引き受けた。世界中のメディアを相手に、すごくたくさんインタビューを受けたよ。テレビ、新聞、ラジオ……とにかく何かしているため、時間を埋めるためにね。
そのうちに、実に興味深いことが起きた。実話の本が、ナショナル・ストーリー・プロジェクトの本が出版されて……

柴田 ええ。

『ナイン・インタビューズ 柴田元幸と9人の作家たち』(アルク)より

Page2:我々アメリカ人は何を信じているのか?


編者・訳者プロフィール
柴田元幸(しばたもとゆき)
東京大学文学部 英語英米文学教授。1954年東京生まれ。著書に『アメリカ文学のレッスン』(講談社現代新書)、『愛の見切り発車』(新潮文庫)、『生半可版 英米小説演習』(研究社)、村上春樹との共著に『翻訳夜話』『翻訳夜話2 サリンジャー戦記』などがある。主な訳書に『幽霊たち』『ムーン・パレス』『リヴァイアサン』(以上ポール・オースター著/新潮文庫)『舞踏会へ向かう三人の農夫』(リチャード・パワーズ著/みすず書房)、『シカゴ育ち』(スチュアート・ダイベック著/マガジンハウス)、主な編訳書に『夜の姉妹団』(朝日文庫)、『僕の恋、僕の傘』(角川書店)などがある。

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