
足下は1000メートルの断崖絶壁
|
1000メートルの崖の上に柵がない!?
日本でも最も知られたアメリカの国立公園のひとつにグランドキャニオン国立公園がある。標高差1000メートル以上の断崖が、東西長さ約450kmも続いている壮大な渓谷。圧倒的なスケールに訪れる誰もが言葉を失ってしまうほど。特に朝夕の太陽が傾いてから、光と影が作り出す景色は神々しささえ感じる美しさだ。
さて、この広大な公園のうち、一般の人々が訪れることができるのは、そのうちのごくごくわずかな部分だが、ここでは崖のふちに沿ってトレイルが造られているところが何カ所かある。このトレイルを歩いていると、何百メートルの断崖絶壁の上に柵が設置されていないところがあることに気がつく。もちろんトレイルを歩いている限りは安全だが、日本人の感覚だと、「事故が起こったら誰が責任をとるんだ」という風に考えがち。このような場所には、すべて前述の標識がある。つまりトレイルをはずれたら、その先は自分の責任で行動してくれ、ということだ。過去にはキャニオンをバックに記念写
真を撮ろうとした日本人観光客が、カメラマンにもうちょっと下がってといわれ、そのまま崖から転落してしまったという事故が起こっている。
|

いつ崩れるか分からないスリリングなバランスロック
|
責任の所在を明らかにするのがアメリカの基本
「あるがままの自然を保全する」という理由で、国立公園内では、自然に手を加えるのは最小限に留めている。例えば、昨日紹介したアーチーズ国立公園には、バランスロックと呼ばれる岩がある。巨大な岩石がかろうじてバランスを保ったまま台座の岩に載っかっているというもの。いつ崩れてもおかしくないものだから日本なら当然立ち入り禁止になっているはずだが、ここにはすぐ近くまで行けるトレイルが造られている。ここにも、“at
your own risk"という標識がある。危なそうなところは立ち入り禁止にして、未然に事故を防ごうとするのが日本のやり方とすれば、アメリカの場合は、危険の存在をはっきりと示した上で、あとの行動は各自に委ねている。
"at your own risk"は一見すると、「何が起きても知らないよ」というような無責任な態度にも見えるが、“risk(危険性)”をコントロールするのは、常に自分であるということを認識しているアメリカ人にとっては当たり前のこと。国立公園は、安全の管理を人任せにしがちな日本人にとって、アメリカ人の国民性を感じる場所でもあるのだ。
|
●Language Box●
| ・ |
断崖絶壁:precipitous cliff |
| ・ |
立ち入り禁止(看板に書かれた文字):Unauthorized Entry
Forbidden |
| ・ |
危険! (看板に書かれた文字):Danger! |
| ・ |
標高:height above sea level
- height:「高さ」を表す一般的な言葉
- altitude:地表・海上から計測したかなりの高さ
- elevation:地上における海抜 |
| ・ |
渓谷
- valley:斜面の切り立っていない谷
- ravineまたはgorge:両岸が絶壁の深い渓谷
- canyon【米】:渓谷のうち特に大規模なもの |
|
|
|
明日は国立公園の役割を考えます。
|
| |
|