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 ニュージーランド 自然の中に夢を追う

 飛べない森の王様の哀しいダンス

 

"It would be nice to travel if you knew where you were going and where you would live at the end or do we ever know, do we ever live where we live, we're always in other places, lost, like sheep."
Janet Frame
(ジャネット・フレーム。ニュージーランドの女性作家、詩人。繊細すぎる感性のために精神病院に長い間入れられた波瀾の生涯は、ジェーン・カンピオンにより『エンジェル・アット・マイ・テーブル』という映画になった)

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カカポ基金代表
ナチュラルヒストリーニュージーランド社
アソシエート・プロデューサー 内田 泉


 
シダが生い茂る原生の森

昨日「10羽以上も山の上に集まってきて」と書いたが、実際には、これを見た人は誰もいない。古い昔の文献の中でしか、お目にかかれない光景なのだ。ニュージーランドで本格的にカカポの保護がはじまったのが、1970年代のこと。このころは、カカポが本当にまだ生き残っているのかどうかも分からず、最後の砦であるフィヨルドランド地方の険しい山の中からやっと10数羽の鳥が発見されたとき、その全てはオスだった。つまり、この山の中のオスたちは、毎年、夏の繁殖期が来ると、もう山にいなくなってしまっているメスを呼んで、一晩中「ブーン、ブーン」と鳴いていたのだ。

なぜ、そんなに数が減ってしまったのか。これは人間のせいだ。
ポリネシアから船にのって人間がはじめてニュージーランドにやってきたのが、1000年以上前のこと。目の前には豊かな森が広がり、耳を覆いたくなるような鳥のコーラスが聞こえていた。定住をはじめた彼らは、中でも巨大な鳥モアを狙い、モアを燻り出すために広い範囲の森に火をつけた。大きくて美味しく、美しい羽を持つカカポも格好の獲物だった。おまけにこの鳥、夏になると鳴いて居場所を教えてくれるのだから。

その後、200年ほど前から、ヨーロッパから白人がやってくるようになる。ヨーロッパ人は一層の激しさで森を焼き払って牧場にし、さらにネコやイタチ、ネズミ、オコジョなどの肉食動物を連れてきた。住みかを失い、見たこともない天敵が現れたこの土地に、のんびりした太古のリズムで生きていたカカポが生き残るのは、不可能に近いことだった。

 カカポのヒナ

現在、ニュージーランド環境省はネコやネズミのいない離れ小島に保護区を作り、鳥たちをそこに放して管理している。しかし、現在生き残っているカカポの総数は、たった62羽にすぎない。
6000万年の歴史の中で進化した鳥が、過去たった1000年の変化によって窮地に追いやられている。カカポは地球上の環境問題のほんの一例だが、あまりに多くのことを象徴していて、心が痛む。そして、カカポの保護が成功すれば、それが他の土地――特に日本のような島国――でも大きな参考になるだろうと、私はニュージーランド環境省のカカポプロジェクトに期待をかけているのだ。


カカポ基金
内田さんは日本からニュージーランド環境省のカカポプロジェクトを応援する非営利団体『カカポ基金』を主催しています。年会費3000円、会員の方には年3回会報が届きます。また、ポストカード5枚1000円も販売中。会員でなくても購入できます。 振込先は:カカポ基金 00190-4-148529 エイゴタウンで見た、と一言お添えください。
詳しいお問い合わせは:PXI12631@nifty.ne.jp

内田泉さんプロフィール
慶応義塾大学文学部哲学科卒。FMラジオ番組ディレクター、編集ライターを経て、1991年からフリ−ランスでライター、翻訳、音声取材編集などさまざまな分野の仕事に携わる。1993年ニュージーランドヘ渡り自然環境をテーマにしたTV番組制作に従事。自分で嬉しいと思うこと:世界中に沢山友達がいること。自分で悲しいと思うこと:世界中に散らばっている友達と、いつも一緒にはいれないこと。

『カカポ 月のこども』
うちだいずみ作・さじちあき画(ハート出版刊 1,500円)
月はずっと見ていた―――。 美しいイラストで、次第に生存を脅かされていくカカポのおはなしを描いた絵本。

 明日は、ニュージーランド生活の始まり