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アイルランドやスコットランドなど、ケルト系にはいつも何かを作っている働き者のアーティストが多い。ユアンもその1人で、出世作となった'94年の『シャロウグレイブ』から今日に至るまで『枕草子』『エマ』『ブラス!』『悪魔のくちづけ』『ナイト・ウォッチ』『普通じゃない』『ベルベット・ゴールドマイン』『リトル・ヴォイス』『スター・ウォーズ エピソード1』など、実に多くの作品に主演・助演している。あどけないルックスと入魂の演技で、どんなに情けない役(『トレインスポッティング』)でも、あるいはどんなに映画自体の流れが悪くとも(『氷の接吻』)、彼は常に観客の共感を得、最後まで画面に見入らせる。まさに映画製作者が欲しがる役者である。
'71年、スコットランドの中流家庭に生まれ、パースの劇団やギルドホール音楽演劇学校で修業を積んだ彼は'92年、TVドラマでデビュー。とんとん拍子に役にめぐまれるが、プロダクション・デザイナー、イヴ・マヴラキスに一目ぼれして早くに結婚。女児も生まれてよき家庭人となり、スキャンダルやゴシップとは無関係に仕事に集中している。
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『チューブ・テイルズ』「ボーン」
(8月公開、アミューズビデオ) |
7月に公開される『マネー・トレーダー 銀行崩壊』は'95年2月、世界に衝撃を与えたベアリングズ銀行破綻の元凶トレーダー、ニック・リーソンの獄中手記を映画化したもの。労働者階級出身の28歳の若者が、銀行のずさんな管理体制を背景に、いかに巨額の損失を出し、230年の歴史をもつ名門銀行を崩壊させていったかが、ニックの妻との愛情を絡めて描かれる。リーソンにはおよそ似ていないユアンがキャスティングされたのは、またしてもスタッフの、ユアンへの期待によるものだった。「観客に人生は破滅と隣り合わせだ、と感じてほしくてユアンを起用した。主人公に強い共感を抱いてもらえると思う」(ジェームズ・ディアデン監督)。ユアン自身も「今までやってきた中でいちばんやりがいのある役。とんでもないピンチをくぐり抜け、巨額の損を出しながらそのまま突っ走るしかなかった男」と大乗り気で演じ、ともすると小難しい分野の話に熱い血を通わせている。
'95年には友人のジュード・ロウや『トレインスポッティング』で共演したジョニー・リー・ミラーらと製作会社「ナチュラル・ナイロンズ」を創立。昨年はジュードと『チューブ・テイルズ』で仲良く監督デビューをしている。ロンドンの情報誌『タイムアウト』の公募に寄せられた3000通の地下鉄物語の中からユアンが選んだのは、うだつのあがらないオーケストラ奏者が、写真で見た美女に恋をするというファンタジー。伯父で俳優のニコラス・テナントを主人公に「スタッフの支えで何とか撮り終えることができた」というが、撮影中は「何もしてないのに時間ばかりが過ぎて、焦った」とか。正直な人である。
噂によると、あれほど出演を楽しみにしていた『スター・ウォーズ』の撮影は今一つ楽しめなかったのだそうだ。共演したリアム・ニーソン(アイルランド人)は「俳優をやめたくなった」とまで言っているから、およそ演劇畑出身の二人にとっては不似合いな撮影であったことは想像に難くない。次回作はアイルランドの文豪、ジェイムズ・ジョイスを演じる『ノラ』。様々なジャンルを体験しつくして、そろそろ自分という俳優の生かし方が見えてきた頃かもしれない。
おすすめVIDEO
◆『枕草子』
(怪しい日本語をはじめ、エセ日本的で意図的に作り込まれた映像世界の中で、1人だけリアルだったユアン。オールヌードも披露しての熱演)
◆『リトル・ヴォイス』
(これと『ベルベット・ゴールドマイン』の彼の役はあまりに対照的。内気な青年を誠実に演じている)
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