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 ミステリーは女探偵の時代!

'90年代を象徴するヴィクとケイ、二大キャラクター

取材・文/佐々木真理

image   '70年代になってプロとしての自覚や仕事に対する責任の取り方を身につけた女探偵たち。だが、独自のスタイルで自立するというレベルにはまだ、ほど遠かった。強烈な自立心を持つヴィクからしなやかに自立するケイまでの系譜をたどると、女性探偵のキャラクターはここでひとつの到達点に達したかのようだ。

   

女性探偵の登場は、女性が自立していく時代と深く関係する。'80年代のサラ・パレツキーのシカゴの探偵V・I・ウォーショースキー(略してヴィク)は強烈な自立を全面的に押し出す。そして'90年代に入り、検屍官ケイ・スカーペッタが登場。キャリアを持った女性がそのキャリアを事件解決に活かす。彼女の自然な自立スタイルが多くの女性読者を魅了した。

「もはや、かつてアガサ・クリスティーが描いたミス・マープルのようなのんびりとした独身の老婦人のキャラクターは無理。今の時代は自立する女性こそ、等身大のキャラクターなんです」と『女性探偵たちの履歴書(プロフィール)』の著者・大津波悦子さん。魅力的なキャラクターこそ、今後の女性探偵ものの要と指摘する。

「シカゴ出身で、弁護士から探偵に転身し、空手の達人で男性もうなる美人のヴィクは、自分の主人は自分という信条を持っています。スーパーウーマンの登場ですが、孤独だが自由な生活を女性が享受してもいいのだという意味で、シングル女性に与えた勇気は計り知れないものがありますね」。

ヴィクはスーパーウーマンだが案外お人好し。友人や隣人から頼まれると嫌と言えずに、いつのまにか事件の渦中に入ってしまうという人間味のあるキャラクターも憎めない。

また検屍官ケイ・スカーペッタシリーズの魅力を、大津波さんは「キャラクターもさることながら、ストーリーとしての面白みは格別。エンターティナー小説としての役割も大きい」と小説そのものを評価する。

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警告検屍官シリーズ最高作と言われる第10作目。連続殺人の謎を追ってケイはヨーロッパへ ・・・。講談社文庫
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バースデイ・ブルー 40歳を迎える女探偵V・Iが人生の決断を迫られるシリーズ話題作。早川書房刊
'80年代から'90年代にかけて活躍した探偵ヴィクと検屍官ケイ。この両シリーズは今後どんな展開を見せるのだろう。

「ヴィク・シリーズは『バースデ・ブルー』がひとつのターニングポイントでした。これでシリーズが終了と思わせましたが、実はここで一皮剥けたんです。ヴィクも今を生きる女性たちも突っ張ってばかりいられないのですね」

最新作ではヴィクは新しい恋人にめぐり合う。彼はヴィクとの関係をバランスを保ちながら持続させるという、精神的に自立した大人の男性だ。「自立している女性が理想とする男性そのものですね」。

一方、ケイ・スカーペッタは最愛の恋人のベントンをシリーズ後半で失う。悲しみを背負った彼女に新たな恋人の出現があるかどうか、気になるところだ。「自立した女性とその恋の行方、今後の二つのシリーズはまさに今の女性たちに共通 するテーマでもあるんです」


image 大津波悦子:プロフィール

1954年横浜生まれ。早稲田大学在学中にワセダミステリクラブに所属する。卒業後は出版社に勤務しながら書評やミステリ評論を続けている。ミステリクラブの先輩で翻訳家の柿沼瑛子氏とともに『女性探偵たちの履歴書(プロフィール)』(同文書院・絶版)、『本は男よりおもしろい』『本は男より役に立つ』(社会思想社)を出版。


 関連リンク
*今週のインタビュー*
今週のインタビューでは、ヴィクの全シリーズを手掛ける人気のミステリー翻訳家、山本やよいさんが登場。彼女が語るヴィクの魅力、ベストセラー作家・サラ・パレツキーの素顔から、ミステリー翻訳家としてデビューするまでの道のりなど、興味深い話題がたくさん!

サラ・パレツキー オフィシャルサイト(英語)
最新作"Hard Time" が遂に出版され、ニューヨークタイムスのベストセラーを邁進中のサラ・パレツキー。バイオやニュースのほか、ウォーショースキーについての知識を試すクイズもあり、自分のマニア度をチェックできる。

パトリシア・コーンウェル オフィシャルサイト(英語)
コーンウェルの本国のオフィシャルサイト。本年11月出版予定の最新作"The Last Precinct" のためにパトリシアが精力的に行っているさまざまな取材の足跡をたどるページや、"In The News"のコーナーでは、BBC Radio などの彼女のこれまでのインタビューが音声ファイルで聴くことができる。

スカーペッタ・シリーズを手掛ける翻訳家、相原真理子さんのインタビューは、
7月24日から掲載!

ミステリーからドキュメンタリーまで幅広く活躍中の翻訳家、相原真理子さんがインタビューコーナーに登場! シリーズを手掛けるケイ・スカーペッタの魅力から翻訳にまつわるエピソードなど、見逃せない話題がぎっしり。同時期には「ミステリー翻訳家を目指す!」と題して、関連特集も掲載、お見逃しなく!