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'90年に発表されたパトリシア・コーンウェル('56年生まれ)の『検屍官』は、発売とともにベストセラーを記録する。コーンウェルは犯罪記事の記者時代にミステリー小説を書こうとしてバージニア州検屍局長マルセラ・フィエッロ博士に取材したが作品は完成せず、代わりに同検屍局コンピュータ・プログラマーの職を得る。その経験を活かして書き上げた『検屍官』のケイ・スカーペッタはフィエッロ博士がモデルと言われている。
しかしどうしても文庫本の腰巻きのコーンウェルの写真とケイの像がだぶってしまう。そう感じる読者は少なくないことだろう。「初めて読んだのは『検屍官』ではなくて2作目の『証拠死体』だったんです。私は働いた経験がないのですが、感性的にぴたっときたんです。これは面
白い、とね」。
そう語るのはもちろん、コーンウェル・シリーズの翻訳家・相原真理子さんだ。これまでノンフィクションの翻訳が多く、ミステリーのジャンルには馴染みが薄い相原さんだったが、ケイの行動の描写から、彼女の心の奥まで手に取るようにわかると言う。まさに翻訳者が作家と共鳴する幸福な組み合わせだ。
「ケイという女性は仕事の面では非常に優秀ですが、マリーノ刑事や恋人のウェズリーを相手にわがままを言ったり、甘えたり、ケンカをすると理不尽なことを平気で言ったり。そんな女性的な部分に親近感を覚えますね。完全にスーパーウーマンというキャラクターではないところが、人気の秘密ではないかしら」。
確かにケイは優秀な女性である。しかしそれが嫌味に感じられるどころか、働く女性に親近感を抱かせる理由は、セクハラとまでいかなくても男性社会の圧力を感じ、それを一生懸命はねのけようとしている姿にあるのでは、と相原さんは指摘する。
「その一方で、休日は料理とガーデニングなどの趣味を堪能している。これはアメリカだけでなく、日本の働く女性の姿でもあるから、ヒロインに自分たちを重ね合わせられるのよね」。
ケイの女らしさは、たとえば被害者宅で現場検証をしている最中に、植物が枯れそうになっているのを見つけると、さりげなく水を注いであげるところなどに現れる。死者に置いてきぼりにされた植物に対するケイの細やかな気配りは、女性だけでなく男性をもとりこにしているという。
「きぜんとしながらもどこか守ってあげたいと感じさせる女性だと言う男性ファンは多いですね」。
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パトリシア・コーンウェルのデビュー第一作『検屍官』。最新技術を駆使して操作に加わる女性検屍官ケイ・スカーペッタの誕生。講談社文庫
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相原真理子:プロフィール
東京都生まれ。慶應義塾大学文学部英文科卒。『FBI心理分析官』レスラー&シャットマン(早川書房)、『ターシャ・テューダーの世界』ターシャ・テューダー(文芸春秋)、パトリシア・コーンウェルの検屍官全シリーズのほかに警察小説『スズメバチの巣』など。
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関連リンク
パトリシア・コーンウェル オフィシャルサイト(英語)
コーンウェルの本国のオフィシャルサイト。本年11月出版予定の最新作"The Last Precinct" のためにパトリシアが精力的に行っているさまざまな取材の足跡をたどるページや、"In
The News"のコーナーでは、BBC Radio などの彼女のこれまでのインタビューを音声ファイルで聴くことができる。
講談社BOOK倶楽部
オンラインでパトリシア・コーンウェルの著作が購入できる講談社BOOK倶楽部。ケイ・スカ−ぺッタのシリーズのほか話題を呼んだ警察小説も揃っている。
*スカーペッタ・シリーズを手掛ける翻訳家、相原真理子さんのインタビューは、7月24日から掲載!* ミステリーからドキュメンタリーまで幅広く活躍中の翻訳家、相原真理子さんがインタビューコーナーに登場! シリーズを手掛けるケイ・スカーペッタの魅力から翻訳にまつわるエピソードなど、見逃せない話題がぎっしり。同時期には「ミステリー翻訳家を目指す!」と題して、関連特集も掲載、お見逃しなく!
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