|
アメリカのミステリー作家、サラ・パレツキーのV・I・ウォーショースキー(略してヴィク)シリーズ最新刊 は『HARD
TIME』(早川書房から9月ごろ刊行予定)。ヴィク・シリーズは1982年の第一作『サマータイム・ブルース』以来、今回で10作目を迎える。
処女作当時、30歳を過ぎていたヴィクは、ここでは43歳。体力の衰えを感じているが、しかし彼女の頑張りと社会に対する怒りは健在である。
最新作の内容は次の通り。『サマータイム・ブルース』にも登場の信頼できる友人で新聞記者のマリ・ライアスンの新聞社が、大新聞社のグローバル・エンターテインメントに吸収・合併され、マリはテレビのニュースキャスターに抜擢される。ふとしたことからヴィクはグローバル・エンターティンメントの社長に睨まれ、罠にはまって刑務所にぶち込まれてしまう。
事の発端は若いフィリピン女性の遺体がモルグから忽然と姿を消したこと。その事件の汚名を着せられた刑務所行きのヴィクを待ちかまえていたのは、所内の過酷なセクハラだった・・・。新作でもまたまた女性読者、しかも働く女性を虜にする内容が展開する。
腐敗した刑務所を舞台にしながら、腐りきったアメリカ社会に対するパレツキーのすさまじい批判が、まるで弾丸のように作品世界に反映されるのだ。例えばクリントンを彷彿させるような大統領に対する辛辣な批判もある。まさにヴィクの強気は変わらない。
「今までと変わったところは、ヴィクに素敵な恋人が出現したことですね」と翻訳者の山本やよいさんは、心からヴィクの新しい恋人を歓迎する。彼はヴィクよりも少し年上のノンフィクション作家で、戦場を駆け抜けて渾身のルポルタージュを書き上げた。心の痛みのわかる大人の男性で、ヴィクとは適度に距離を置きながら、彼女をつねに見守っている。
これまでのヴィクの恋人といえば『サマータイム・ブルース』に出てきたラルフ・デヴローに代表されるように、ヴィクの全てを認めてくれるとは言い難い男性たちだ。ヴィクの魅力に惹かれているものの、男性優位の社会構造をどこかで引きずっているような男たちとは違って、最新作ではヴィクを女性として、そして
一人の人間として愛する男性が出現したのだ。
「やっと大人の男性が登場です」とほっと一息をつく山本さんの様子は、翻訳者というより長年の友人のうれしいニュースを聞いた時のようだ。
|
|

ヴィク・シリーズの翻訳家、山本やよいさん。彼女のインタビューはこちらからどうぞ。
|
関連リンク
今週のインタビュー
今週のインタビューでは、ヴィクの全シリーズを手掛ける人気のミステリー翻訳家、山本やよいさんが登場。彼女が語るヴィクの魅力、ベストセラー作家・サラ・パレツキーの素顔から、ミステリー翻訳家としてデビューするまでの道のりなど、興味深い話題がたくさん!
サラ・パレツキー オフィシャルサイト(英語)
最新作"Hard Time" が遂に出版され、ニューヨークタイムスのベストセラーを邁進中のサラ・パレツキー。バイオやニュースのほか、ウォーショースキーについての知識を試すクイズもあり、自分のマニア度をチェックできる。
|
|